有名人がテキーラ市場に進出するのはいくつかの理由がある。
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- ケンダル・ジェンナーは最近、テキーラ・ビジネスに携わる数多くのアメリカの有名人の1人になった。
- しかし、なぜテキーラはセレブを惹きつけるのか。専門家によると、いくつかの理由がある。
- 彼らは、儲かるビジネスであることと「クールなイメージ」の組み合わせだと指摘している。
カーダシアン・ファミリーのメンバーが論争に巻き込まれるのは珍しいことではないが、ケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)が新しいテキーラ会社「818」を設立すると発表したとき、彼女が予想していた以上に怒りを買ってしまった。
2021年2月にジェンナーがこの発表をするとすぐに、インスタグラム(Instagram)やツイッター(Twitter)では、文化の盗用ではないかという批判の声があふれた。ジェンナーの新事業に対するこのような否定的な認識は、ネット上での一般的な意見だったが、一部のソーシャルメディアユーザーは、この反発に困惑していた。
リアリティ番組のスターでありモデルでもあるジェンナーは、テキーラの会社を所有した初めての非メキシコ系有名人ではない。それにもかかわらず、他の有名人よりもはるかに厳しい批判を受けている、これはダブルスタンダードだと、彼女を擁護する人々は指摘した。
社会学とジェンダー研究の准教授であり、『¡Tequila!: Distilling the Spirit of Mexico』"の著者であるマリー・サリタ・ゲイタン(Marie Sarita Gaytán)は、この問題の根源には、メキシコ人やメキシコ系アメリカ人が、自分たちの商品や文化がアメリカでは自分たち自身よりも価値があると考えていることがあるのではないかとInsiderに語っている。
しかし彼女は、ジェンナーが反発に直面し、他の男性の有名人がそうではないことも指摘した。ゲイタンは、「政治、ビジネス、そして今回の場合は文化や起業など、女性が 『突出する』ことは、神経を逆なでするのだろう」と述べている。
以前にも報じたように、ジェンナーのテキーラ事業が、彼女がメキシコ人ではないから盗用と言われるのか、なぜ彼女が他の有名人のテキーラオーナーに比べて激しく批判されているのかなど、明確な答えのない疑問が残る。
Insiderは数人のテキーラ専門家に話を聞き、818の発売がもたらした別の問題を探った。
有名人にとってテキーラビジネスの魅力とは、いったい何なのだろうか。
ジェンナーは、テキーラブランドを立ち上げた最初のセレブではない
ジョージ・クルーニー(George Clooney)とランディ・ガーバー(Rande Gerber)は、これまでで最も有名で最も成功したテキーラベンチャーを設立した。2人は2017年に自分たちのブランドCasamigosをDiageoに10億ドルで売却した。
マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)は4人の仲間と2019年にCincoroを作った。ドウェイン“ザ・ロック”ジョンソン(Dwayne "The Rock" Johnson)は、2020年にTeremanaを立ち上げた。ニック・ジョナス(Nick Jonas)のVilla Oneは2019年に発売を開始。リタ・オラ(Rita Ora)、ラッパーのE-40、アダム・レヴィン(Adam Levine)とサミー・ヘイガー(Sammy Hagar)、AC/DC、ジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)も、何らかの形でメキシコのスピリットに愛着を持っている。
コメディアンのケビン・ハート(Kevin Hart)は、ジェンナーがテキーラ発売を発表した同じ週に、自分のテキーラブランドを立ち上げることを予告したほどだ。
有名人が設立しているアルコール飲料のベンチャーはテキーラだけではない。ケイト・ハドソン(Kate Hudson)はグルテンフリーのウォッカを、ライアン・レイノルズ(Ryan Reynolds)とスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)はジンを所有し、その他にもワインのブランドを所有するセレブもいる。
それでも、テキーラが業界に参入しようとしている有名人の間で特に人気があることは明らかだ。
セレブがテキーラに惹かれる理由はいくつかある。
テキーラはビジネスを始めるチャンス
フォーブスによると、テキーラ市場は2020年に46%も跳ね上がったという。
スピリッツ・イノベーション・パートナーズのオーナーで、INSÓLITOのCEOであるピート・ケリー(Pete Kelly)によると、スピリッツの世界にクリエーターとビジネスパーソンの両方のアイデンティティーを持つセレブが興味を持つのは自然なことだという。また、ゲイタンは、これをブランドに根ざしたビジネスベンチャーと捉えている。
「セレブリティーは投資をして、数年かけてブランドを構築し、その後、売却したいと考えている」とゲイタンはInsiderに語った。
「テキーラはスピリッツのカテゴリーでまだ成長しており、その成長を牽引しているのはアガベ100%の高級テキーラだ」と彼女は付け加えた。最高級品への需要が継続的に伸びていることは、この分野でビジネスをしようとする著名人にとって好ましいことだという。
トラステッド・スピリッツの共同設立者であるキーナン・タウンズ(Keenan Towns)もこれに同意している。
「セレブリティはこのカテゴリーをトレンディーで有益な投資先だと考えている」と彼はInsiderにメールでコメントした。
「2000年初頭にAvionやCabo Waboといったブランドが買収されたことで、このカテゴリーの人気は高まった」とタウンズは言う。
「そして最近では、史上最大の売り上げを記録したと思われる(ジョージ・クルーニーの)Casamigosの後に、ザ・ロック(The Rock)のTeremanaが登場した。これは年間40万ケースを出荷し、売り上げは20億ドルに達する可能性がある」
ゲイタンは、イメージが大きな要素になっていると言う。
「テキーラは、いろいろな理由で幅広い層の人たちにアピールする。サミー・ヘイガーのファンは、ケンダル・ジェンナーのファン層とは違う。しかし、彼らのイメージ(またはライフスタイル)はともに、楽しさやパーティーだ」
ゲイタンはまた、この酒を使い勝手のよい酒と呼んでいる。
「高級テキーラは、注いで飲むだけ。ウォッカのようにカクテルにする必要はない」
有名人のテキーラブームはこれらの要素が絡み合った結果
有名人のテキーラブームの理由を1つに絞るのは難しい。専門家はこれらの要素がすべて関係していると考えている。
インスタ映えすることや、ボトルを持っている人が楽しい時間を過ごしていることを示すことは、テキーラとそれに関連した有名人によいイメージを追加することになる。
「有名人の中には、そういったディテールを重要だと考える人もいるのだろう」とゲイタンは言う。
「私が間違っているのかもしれないが」
[原文:Hollywood's tequila wars: Why it feels like every celebrity has their own bottle]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)