無人決済システムを採用した、ファミマ!!サピアタワー/S店がオープンした。
撮影:平澤寿康
ファミリーマートと、無人決済システムを手がけるTOUCH TO GO(以下、TTG)は3月31日、共同で開発した「ファミマ!!サピアタワー/S店」をオープンした。
両社はオープンに先駆けて報道関係者向けに店舗を公開。どんな新規性のある店舗なのか、実際に訪ねて体験してみた。
会員登録やアプリがなくても入店できる
比較的小規模な店舗だが、約700種類の商品を揃えており、通常店舗とほとんど変わらない買い物が可能。
撮影:平澤寿康
実際の買い物の流れは、TTGが運営するJR山手線・高輪ゲートウェイ駅内の無人AI決済店舗とほぼ同じだ。
店舗に入ると、商品陳列棚手前にゲートが用意されており、その前に立つとゲートが開いて店内に進める。そしてその時点から、天井に設置されたカメラ付きセンサーが人物の追跡を開始する。
入店ゲートを通過して入店。この時点でシステムによる人物の捕捉が開始される。
撮影:平澤寿康
店内に陳列されている商品を手にする。すぐにエコバッグなどに入れても問題ない。
撮影:平澤寿康
ゲート通過後は、購入したい商品を棚から自由に手に取ればいい。商品を取ると、システムは人物と商品を紐づける。1度手に取った商品を棚に戻した場合には、その紐付けが外される。
これら購買動作や手にした商品の特定、人物との紐付けや解除は、天井に設置された48個のカメラ付きセンサーと陳列棚の重量センサーによってリアルタイムで行っている。そのため、手に取った商品はその場でエコバッグなどに入れてもまったく問題ない。
天井には48台のカメラ付きセンサーを設置し、人の動きや手にした商品を捕捉。
撮影:平澤寿康
陳列棚には重量センサーなどが設置されており、こちらでも手にした商品を捕捉する。
撮影:平澤寿康
退店前の決済では“現金”にも対応
購入したい商品を手にしたら、出口付近に用意されている決済エリアへと進む。決済エリアにはディスプレイと決済端末が用意されており、その前に立つと、手にした商品がディスプレイに一覧表示される。
ここで手にした商品と表示される商品の一覧が違う場合は、バーコードリーダーで商品のバーコードを読み取るなどの修正が必要だが、今回試した限りでは手にした商品と画面の一覧が異なることはなかった。
決済エリアに進むと、ディスプレイに手にした商品が一覧表示されるので、間違いがないか確認する。
撮影:平澤寿康
酒類を購入する場合には、ディスプレイ上部のカメラを利用してバックヤードのスタッフが遠隔で年齢確認を行う。
撮影:平澤寿康
対応する決済手段は、交通系電子マネー、クレジットカード、現金で、画面に表示される決済手段ボタンから利用したいものを選択する。
その後、交通系電子マネーとクレジットカードはディスプレイ前の決済端末を利用、現金の場合は手前の紙幣および硬貨の投入口から投入する。
決済が終了したら、ディスプレイの退店ボタンを押して退店する。何も商品を手にしていない場合には、決済を行わずとも退店ボタンが表示され、退店可能だ。
撮影:平澤寿康
なお、高輪ゲートウェイ駅の無人AI決済店舗では、認識率は約95%とのことで、かなりの高確率で購入商品の食い違いを回避できると考えてよさそうだ。
サピアタワー/S店では酒類の購入も可能となっているが、酒類の購入時には決済エリアで年齢確認が行われる。年齢確認は、バックヤードに控えているスタッフが、決済エリアのカメラを利用して目視で確認している。
入店して商品を手に取り、決済して退店するまでの一連の流れは、通常のコンビニエンスストアに比べてもとてもスムーズだ。
無人決済でオペレーション負荷、人件費を削減
無人決済システムを採用したサピアタワー/S店の意義を説明する、ファミリーマート 代表取締役社長の細見研介氏。
撮影:平澤寿康
3月30日に開かれた記者会見には、ファミリーマートの細見研介社長が登壇。
新店舗の意義について、「コロナ禍で急激にニーズが高まっている、お客様と店舗スタッフが非接触であるためのもの。また、人手不足問題に対応するための有効な手段でもあり、さらには店舗運営コストやオペレーション負荷を軽減し、加盟店を支援することにもつながる」と説明。
無人決済システムを採用することで、客とスタッフの接触をなくし、快適でスピーディな買い物を実現するとともに、人手不足の解消や店舗運営コストの削減にもつなげる。
撮影:平澤寿康
具体的に言うと、通常の店舗ではレジと品物陳列を行うために常時2名以上のスタッフが必要だが、今回のような省人化店舗の場合は、陳列も兼ねたバックヤードに待機するスタッフ1名で済む。
そのため、ファミリーマート執行役員 ライン・法人室長の狩野智宏氏は「運営コストの中で大きな割合を占める人件費の節約につながる」としている。
TTG社長の阿久津智紀氏。
撮影:平澤寿康
システム開発を担当したTTG社長の阿久津智紀氏は、2017年より実証実験を行ってきた無人決済システムの実用化運用を、ファミリーマートとともに実現したことについて「我々の夢がひとつ実現に近付いた」と述べた。
また、サピアタワー/S店に導入した無人決済システムについて、阿久津氏は「(従来と比べて)ソフトウェアの改善やセンサーの強化を実現するとともに、センサーやゲートなど導入コストを大幅に削減し、導入期間も半分ほどに短縮できた」と説明。
その上で今後は、「さらなるシステムコストの低減と、早期に導入できる仕組みを確立し、日本全国で使えるようにミッションを果たしていきたい」と意気込みを語った。
ファミリーマートとTTGは2月26日に資本業務提携を結んでおり、サピアタワー/S店での状況も見つつ「今後の出展計画を練りたい」(狩野氏)方針。すでに第2弾の出店について場所などの検討を進めているようだ。
(文、撮影・平澤寿康)