ミレニアル世代は、あなたが思うほど遅れているわけではない。
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- ミレニアル世代は上の世代に遅れを取っているとよく言われるが、ある心理学者はそうではないと言う。
- ミレニアル世代は、学校に長く通い、結婚を先延ばしにするという新たな社会規範を確立したのだ。
- だからといって、彼ら自身が遅れを取っていると感じているわけではない。
アメリカではミレニアル世代(おおよそ1981年から1995年に生まれた世代)の経済的負担が重いという話はよく知られているが、それは間違っている。
40歳になる前に2度の不況を経験し、世代内の高年齢層は雇用市場が低迷、低年齢層は解雇や給与カットに見舞われ、10年に及ぶアフォーダビリティ危機など、ミレニアル世代が受けた経済的苦難をすべて足し合わせ、彼らが「遅れを取っている」とか「劣っている」と結論づけるのは、まったく正確ではない。だが、筆者を含め、多くのジャーナリストはそのように論じてきた。
しかし結局のところ、ある傾向が長く続くと、それは一時的なものではなく、ニューノーマル(新しい常態)になる。
青年期から大人になるまでの期間を表す「新たな成人期(emerging adulthood)」という言葉を作った心理学者のジェフリー・アーネット(Jeffrey Arnett)は、ミレニアル世代が年を重ねるにつれ、大人になるという意味が再定義されているとInsiderに語った。
アーネットはミレニアル世代について「彼らは劣っているわけではない」と言う。
「これがニューノーマルであり、1960年代の物差しで彼らを測ってはいけないのだ」
ミレニアル世代はこの「物差し」によって、住宅購入や結婚などの主要なライフイベントを経験するのが前世代に比べて遅くなっているということでしばしば打ちのめされてきた。アメリカ連邦準備理事会(FRB)のデータによると、ミレニアル世代が保有する資産は、ベビーブーマー(1946年から1964年に生まれた世代)が同じ年齢だった時の4分の1でしかない。
アーネットは、1990年代初頭から「新たな成人期」を研究しており、その頃からミレニアル世代は教育期間が長く、就職も遅かったことから「遅れている」と言われていたという。「その規範は変化し、今も変わり続けている」と彼は言う。
「今では、少なくとも20代前半まで教育や訓練を受け、30歳前後になるまで結婚や子育てをしないというのは、普通のことだ」
それは永続的な変化
エマニュエル大学の心理学准教授、クレア・メータ(Clare Mehta)も、社会が期待することは時代とともに変わるということに賛同する。彼女は「新たな成人期」の次に来る30歳から45歳までの「確立された成人(established adults)」について研究している。
これまでの世代は、20代半ばから後半までに、パートナーを見つけて結婚し、家を買い、子育てをし、安定した仕事を続けることを期待されていたと、メータは言う。一方、ミレニアル世代は「選択肢が多く、前の世代が期待されていたほど早く落ち着く必要がない」とInsiderに語った。
それが、今でもまだ自分のやりたいことを見つけようとするミレニアル世代が増えている理由だ、と彼女は付け加えた。これは男女平等への取り組みの成果でもある。
「今の女性はパートナーを見つけて落ち着く前にキャリアを積みたいと考えている。そして誰しも、まずは経済的な安定を求めている」とメータは言う。
「これは過去にはなかったことだ」
さらに、50年前の女性は仕事でキャリアを築くチャンスが与えられていなかったが、今の女性はそれを実現して達成感を感じられるようになったことから、結婚や子育ての時期が遅くなったとメータは付け加えた。
彼女は、この変化は永続的なものになると考えている。特に、体外受精(IVF)が普及し、受け入れられ、出産をさらに先送りできるようになったことも、それを後押ししているという。
「以前の状態に戻ることは考えられない。むしろこの傾向はさらに強まると思う」
それでもミレニアル世代は遅れを感じている
社会規範が変化しているとはいえ、ミレニアル世代がすべて順調だと感じているわけではない。アーネットが指摘するように、ミレニアル世代が遅れを感じるのは、そのように言われ続けているからであり、大学を卒業することやパートナーを見つけることなど、物事は計画通りに進むとはかぎらないからだ。
例えば、ミレニアル世代の多くは、親と同じ年齢で住宅を購入できなかったため、遅れを取っていると感じてきた。だが、COVID-19のパンデミックで金利が下がり、郊外の不動産が入手しやすくなった今、ついにハードルをクリアして、初めて家を持つミレニアル世代もいる。
その一方、パンデミックの影響で苦しい状況にあるミレニアル世代は、幸運な同世代の人々がようやく「大人」の感覚を手に入れたのを見て、さらなる遅れを感じているようだ。ニューノーマルは、同世代の中で「大人であること」の格差を生じさせている面もある。
「目標や計画を立てていても、人生にはいろいろなことが起こる」とアーネットは言う。「多くの人は、自分が望んだように物事が進まないことで、遅れを取っているように感じる。パンデミックが起きている今、その感覚はさらに大きくなっている」
しかし、パンデミックであろうとなかろうと、20代の若者が自分のアイデンティティーや将来について悩むのは、普通のことだと彼は言う。「順調な時でも、若者は自分が他人に遅れを取っている、十分に進歩していないと感じるものだ」と、アーネットは以前にもInsiderに語っている。
[原文:Millennials aren't behind, they're just creating a new normal]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)