アシックス、“結果に自信”の上級者向け新シューズ「METASPEED」発表…リサイクル素材でも機能性両立

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上級者向けランニングシューズシリーズ「METASPEED(以下、メタスピード)」。ランナーの走法にあわせて2モデルを用意する。

撮影:編集部

スポーツ用品大手のアシックスが3月30日、新たな上級者向けランニングシューズシリーズ「METASPEED(以下、メタスピード)」を発表した。

コンセプトは、「走行スタイル」に着目したトップアスリート向けのランニングシューズ。同社のモノづくりの根幹にある「パーソナライゼーション」の考えに基づき、アシックス スポーツ工学研究所(ISS)の最新技術・研究結果を盛り込んだプロダクトになっているという。

アシックス 代表取締役COOの廣田康人氏は、「東京オリンピックには、かなり有力な選手も履いて出場してくれるんじゃないかと期待している」と、新シューズの出来栄えには自信を覗かせる。

アシックス パフォーマンスランニングフットウエア統括部 竹村周平氏、アシックス 代表取締役COO 廣田康人氏、アシックススポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部 谷口憲彦氏。

写真左から、アシックス パフォーマンスランニングフットウエア統括部 竹村周平氏、アシックス 代表取締役COO 廣田康人氏、アシックススポーツ工学研究所 フューチャークリエーション部 谷口憲彦氏。

撮影:長岡武司

具体的にどんな技術を盛り込んだシューズなのか、実際の履き心地を確認すべく、同日にアシックス本社で開催された「ASICS INNOVATION SUMMIT 2021」に参加した。

実際に走ってみるとわかる、2種類のシューズの違い

今回発表されたメタスピードシリーズは大きく2種類。歩幅を広くとってタイムを稼ぐ“ストライド型”ランナーに対応した「METASPEED Sky(以下、メタスピードスカイ)」と、両足で地面を蹴る回数を早めてタイムを稼ぐ“ピッチ型”ランナーに対応した「METASPEED Edge(以下、メタスピードエッジ)」だ。

メタスピードスカイとメタスピードエッジ

左がメタスピードスカイで、右がメタスピードエッジ。見た目はほぼ同じで、区別できるようなロゴなどは入っていない。メーカー希望小売価格は、メタスピードスカイとメタスピードエッジ、いずれも2万7500円(税込)。

撮影:長岡武司

ランナーでないと馴染みがないであろう「ストライド」と「ピッチ」とは、人の走る速さを因数分解した際の2大要素だ。

ストライドとピッチ

撮影:編集部

この2種類のランニングスタイルを考慮し、科学的に設計されたシューズが、メタスピードスカイとメタスピードエッジということになる。

実際に履いて試し走行をしてみると、その違いは、素人である筆者でも歴然だった。

試し走行

撮影:編集部

メタスピードエッジ(=ピッチ型)は、ランニングマシンの速度が上がるごとに、どんどんと前に進んでいくのが、はっきりと体感できた。一方でメタスピードスカイ(=ストライド型)は、速度が上がるごとに、極端に言えばピョンピョンと上に飛び跳ねるような感覚が増していく。

普段ランニングとは無縁の筆者でも、こんなに足が動くものかと驚いてしまった。

ただし、シューズの性能に見合った筋力などがなければ、実際のタイムアップにはつながらない。関係者によると、メタスピードシリーズにあったランナーのレベルは、フルマラソンで2時間半を切るような上級者ランナーだという。

「フルマラソンで必要な歩数を、約750歩少なくできる」

シミュレーション

「メタスピード」両製品をフルマラソン換算でシミュレーションした結果。いずれもランナーの負担が軽減し、より少ない歩数でゴールできるという。

撮影:長岡武司

「メタスピードスカイを履いたストライド型ランナーは、フルマラソンをゴールするために必要な歩数が約1.2%、平均すると約350歩ぶん少ない状態でゴールできることがわかりました。同様にメタスピードエッジを履いたピッチ型ランナーは、約2.6%、平均して約750歩ぶん少ない状態でゴールできます。」(竹村氏)

このような走行体験の違いを可能にしているのが、メタスピードシリーズに採用されている以下のキーテクノロジーだという。

まずは、ミッドソールの厚さ。ストライド型ランナー向けのメタスピードスカイの方が、メタスピードエッジよりも厚くなっており、それにより先述の「跳ねる」ような走行体験を実現している。上方向に上がるほどに、一歩あたりに進む長さも長くなる、というわけだ。

また、かかとからつま先までの高さが、メタスピードスカイが5mmなのに対してメタスピードエッジは8mmとなっており、前足部のカーブ角度もメタスピードスカイの方が、よりシャープな形状になっている。

一方で、両シューズに採用されている「素材」については、共通のものが使用されている。

素材説明

撮影:長岡武司

特に、今回新たに登場したのが、ミッドソール全面に採用された「FF BLAST TURBO」(上画像の(1)部分)。アシックスの軽量フォーム材のなかでも、最も優れた反発性を発揮する素材で、優れた衝撃吸収性と、レスポンスの良い蹴り出し感があるとする。

同社ではこれまでも、GEL-NIMBUSシリーズのようなアイテムで、厚めのミッドソールが緩衝材に良いことを把握していたことから、クッション性と軽量性のバランスを追求した結果として、今回のFF BLAST TURBOの開発と採用に至った。

アッパー素材は上級者向けでも「100%リサイクルポリエステル」

もう一つ特記すべきは、機能性重視の上級者向けランニングシューズにもかかわらず、「リサイクル素材」が使われている点だ。

川内優輝選手

会見に登壇したプロランナー・川内優輝選手。メタスピードシリーズの初期プロトタイプを履いて出場した「びわ湖毎日マラソン大会」(2021年2月28日)にて、8年ぶりの自己ベストタイムとなる2時間7分27秒を記録した。

撮影:長岡武司

具体的にはアッパー部分。100%リサイクルポリエステルを使用したメッシュを採用しており、通気性を高めてランニング時の足を快適に保つという機能性も持たせた。

質疑に答えた廣田社長によると、以前はリサイクル素材と機能性の両立が難しかったが、近年の研究開発で遜色ないレベルの機能性を持たせられるようになったと言う。

「安心・安全にスポーツができる環境を守るということは、我々の会社の基本的認識として、とても大切なことだとしています。その中で、素材もできるだけリサイクルでき、また再生可能なものや植物由来で環境負荷の低い素材を使って開発していくことが、非常に大切だと考えています。」(廣田社長)

アシックスは2021年に発売するランニングシューズの9割にリサイクル素材を採用する方針を表明している。その範囲は、機能性にシビアなら上級者向けシューズも例外ではないということだ。

(文・長岡武司

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