都内のニトリの店舗。
撮影:伊藤有
ニトリホールディングス(以下、ニトリ)は3月31日、2020年通期決算を発表した。EC(ネット通販)の売上高が前期比で59%増の705億円になるなど、厳しい経営環境のなかでコロナ対応を進め、巣ごもりのリビング消費をとらえた好決算といえる。
売上高は前期比11.6%増の7169億円、営業利益は同28%増、最終利益はで同29%増となるなど、通期決算をめぐる各数字はいずれも非常に好調だった。
決算説明資料をもとに、前年比の赤線部分は編集部が加工した。
出典:ニトリHD2021年2月期 決算説明資料より
売上高の好調を下支えしたEC売上
ニトリの通期決算で見るべきスライドを1枚だけ挙げるなら、事業領域別の連結売上高を示したこの1枚だ。
赤枠部分は編集部が追加した。
出典:ニトリHD2021年2月期 決算説明資料より
主力事業である実店舗での売り上げは文字通り桁違いに大きいが、そのほかの事業の売り上げがどう推移していたのかが見るべきポイントだ。前年比での成長率をみると、「通販」(EC)売り上げが大きく伸びていることが分かる。
一方、法人&リフォームなど他の事業は、ほぼ横ばいと言っていいレベル。さらに、前年の通期決算と数字を比べると、ECの伸びが売上高の前年比増にどの程度影響があったかが、より明瞭に見えてくる。
売上高の大きさでは、「店舗売上」が圧倒的に大きいが、売上高の増加要因としてみると、ECも急速に存在感をみせていることがわかる。
出典:ニトリHDの決算説明資料をもとに編集部作成
ECと近い領域では、O2O(Online to Offline)を支えるアプリ会員数も増えている。在宅・巣ごもり消費の追い風もあってか、この1年でニトリのアプリ会員数は1.7倍の908万登録にまで増えた。ニトリはさらに1年後には、1.4倍成長にあたる1300万登録にする目標を掲げる。
ホームセンター大手・島忠買収の成果はこれから
なお、ニトリといえば1月にホームセンター大手の島忠を、完全子会社化に向けた公開買い付け(TOB)を実施したことも注目を集めた(島忠は3月24日付けで上場廃止)。
2022年2月期におけるニトリの課題として、島忠との経営統合とそこから生まれるシナジーをどう作り出していくかも大きなポイントになってくる。
また、決算説明資料の中で示された客単価が減少傾向にあることも気になるところだ。コロナによる時短などの影響も含めて、次の1年で上昇に転じるのかはみていく必要がある。
なお、ニトリの2022年2月期の通期連結業績予想は、前年比22%増の売上高8736億円、最終利益は同7%増の986億円と、統合効果を見込んでいる。
(文・伊藤有)