ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事。相次ぐセクハラ告発と高齢者施設でのコロナ死亡者の過少申告問題で追い詰められているように見えるが……。
AP
セクハラ告発などで四面楚歌のクオモ・ニューヨーク州知事が、アメリカでも最大級の実績を誇る危機管理広報の専門家をチームに引き入れようとしている。Insiderの独自取材で明らかになった。
クオモ州知事は現在、刑事弁護士としてリタ・グラヴィンを雇っている。法律事務所スワード・アンド・キッセルを2月末で退所して独立し、現在は自身の事務所を設立してクオモ州知事のプレス発表を一手に引き受ける人物だ。
クオモ州知事については3月29日、望まないキスをされたとしてセクハラ被害を訴える新たな告発者があらわれ、著名弁護士のグロリア・オールレッド氏とともに記者会見を開いた。
グラヴィン氏はこの動きに対し、クオモ州知事が市民を慰めるために頬にキスしたり、ハグしたりする写真がほかに多数あるとして、性的な意図はなかったと反論している。
候補にあがる「3人の専門家」
広報分野の関係者に取材したところによると、クオモ州知事はここ数週間、危機管理の専門家をチームに招こうと探しており、一番最近では先週後半(3月25日前後)にも照会しているという。
実績のある危機管理専門のPRファーム少なくとも1社が、州知事チームへの参加を調整していることが取材を通じて明らかになったが、実際に契約まで進んだかどうかはまだ不明だ。
ニューヨークの政治関係者とのパイプを持つ別の人物によれば、クオモ州知事はコミュニケーションサービス会社サンシャイン・サックスの代表で危機管理広報に詳しいケン・サンシャイン氏と親しい間柄にある。同社はイギリス王室のハリー王子・メーガン妃と契約していることでも知られる。
Insiderはクオモ州知事へのアドバイス業務について取材を申し込んだが、コメントは拒否された。
戦略的コミュニケーションやレピュテーション・マネジメントの専門家として著名なスティーブン・ルーベンシュタイン氏の名前も候補にあがっているが、同氏がトップを務めるPR会社ルーベンシュタインは政治家の代理業務は行っていない。
また、スキャンダルなどで苦しい立場に追いやられた経営者がしばしば頼る先だが、ブラッド・ピットらセレブのコミュニケーション・コンサルタントとして活躍し、2020年の米大統領選挙ではヒラリー・クリントン陣営を支えたマシュー・ヒルツィクも候補にあがる。
誰がチームに入るとしても、きわめて厳しい仕事になることは間違いない。クオモ州知事は冒頭の会見を行った女性を含めて10人(3月31日時点)の女性からセクハラ告発を受けている上、ニューヨーク州が高齢者施設でのコロナ志望者数を過少申告していた問題で、米連邦捜査局(FBI)が捜査に着手している。
危機管理広報の専門家は状況を次のように分析する。
「広報の専門家にできることはそう多くない。クオモ氏は知事就任前、ニューヨーク州の検事総長だった時代からマスコミと非常に難しい関係にあった。(検事総長として)数々の疑惑を手がけただけでなく、メディアとの関係が根本的に冷え切っていた。
それに、クオモ氏は自身のPRを他人に頼らないことで知られる。チームに加わったところで、実りある仕事ができるとはとても思えない」
積み重なる悪い知らせ、相次ぐ告発にもかかわらず、クオモ州知事の支持率は持ちこたえている。
調査会社モーニングコンサルトが3月25日に公表したレポートによると、ニューヨーク州の有権者の53%がクオモ氏を支持、不支持は43%にとどまった(調査は3月15〜24日に実施)。
なお、クオモ氏の広報担当を通じてグラヴィン氏にコメントを求めたが、公開までに返答はなかった。
[原文:NY Gov. Cuomo is hunting for crisis PR help as he battles negative press]
(翻訳・編集:川村力)