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どん底から這い上がったりそなの脱・銀行DNA。“冬の時代”に賭ける5つの切り札

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りそなホールディングスの南昌宏社長がBusiness Insider Japanの取材に応じた。りそなが歩んできた脱・銀行の歴史とは。

撮影:今村拓馬(左)、岡田清孝(右)

地方の人口減少や長引く超低金利政策に加え、新型コロナの打撃を受けた融資先の経営悪化と、苦境が続く銀行業界。追い討ちをかけるように、AmazonやLINEなど巨大IT企業がフィンテックへの投資を進め、金融業での存在感を増している。

そんな中にあって、法人客50万社個人客1600万人を抱え、メガバンク3行に次ぐ規模の都市銀行がりそなグループ。過去の経営難から這い上がり、メガバンクとも地方銀行とも異なる、独自の「脱・銀行」改革を重ねてきたりそなは、銀行激動の時代にどう立ち向かうのか。

りそなホールディングス(HD)社長の南昌宏氏へのインタビューから、その歴史を紐解くとともに、りそなを読み解く5つのキーワードを抽出した。

時代を駆け抜けた「脱・銀行」の人

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2003年、東日本旅客鉄道(JR東日本)副社長を務めた細谷英二氏がトップに就任した。「銀行の常識は世界の非常識」を掲げ、改革を次々打ち出した。

Ruters /Toru Hanai


全国に支店網をもつメガバンクの三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行に次ぐ規模のりそなは、首都圏と関西圏を拠点とする銀行だ。

大和銀行、協和銀行、埼玉銀行を源流として合併を繰り返し、現在のかたちは2000年代初めに誕生。経営状態の悪化から、累計3兆円に及ぶ公的資金注入を受け、実質国有化された経緯がある(2015年に完済)。資産総額は60兆5124億円、純利益1524億円(いずれも2020年3月)。

りそなを知るには、まず激動の2000年代初頭は避けて通れない。

合併前身の創業をたどれば戦前にさかのぼり、100年の歴史を持つりそなだが、元々は下位銀行の寄せ集めと目されてきた。

バブル崩壊後の不良債権処理に耐えきれないまま経営難に陥り、巨額の公的資金注入により実質国有化された。

時代の荒波に揉まれるさなかの2003年。時の政権から要請を受け、東日本旅客鉄道(JR東日本)副社長、細谷英二氏がトップに就任する。国鉄の分社化・民営化に尽力した人物だ。

銀行業をサービス業に作り変えるという「細谷改革」の強烈な洗礼を受け、りそなはここから独自の道を歩むことになる。

金融は全くの未経験、事業会社出身の細谷氏は「銀行の常識は世間の非常識」を掲げたことで知られる。

取引先とのなれ合いの象徴ともいえる持ち合い株の売却を断行、午後3時閉店が「常識」の銀行界で5時閉店への切り替えや、休日対応の拡大による「サービス業」化を徹底した。

並行して、銀行独特の役職名「頭取」を改め「社長」に、「行員」を「社員」に変える意識改革を着々と進めた。

また、公的資金注入に伴うリストラの一方で、同一労働同一賃金を掲げた人事制度を実現し、女性の積極的登用を行った。女性管理職比率は2020年時点で、すでに政府目標の30%を達成している

細谷氏は会長職在職中の2012年11月、67歳で急逝。その3年後、りそなは悲願だった公的資金の完済を果たした。

向かうのはDXではなくCX

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2020年4月に社長に就任した南昌宏氏。「DXが叫ばれているが、最終的にはCX」と明言する。

撮影:岡田清孝

「従来の銀行の発想では限界がきている。DXが叫ばれていますが、最終的にはCX(コーポレートトランスフォーメーション)。会社の構造そのものを変えていくことだと思っています」

「脱・銀行」を掲げる現社長の南氏もまた、細谷改革の洗礼を受け、そのDNAを受け継ぐ経営者の一人だ。細谷氏が会長に就任した2003年当時、経営の中枢を担う企画室次長として、その改革を目の当たりにした。

南氏は近年、スマホアプリに代表される、ネットとリアルの販売チャンネルを融合する「オムニチャネル」戦略担当の執行役員を務めてきた。南氏がけん引してきたDX事業分野では、従来の銀行業務にとどまっていては先はないという危機感が滲み出る

危機感に裏打ちされた「りそなの現在地とこれから」を物語る5つのキーワードを見ていこう。

1.デジタル✖️データは1丁目1番地

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りそなが早くから力を入れてきた「りそなグループアプリ」。

りそな銀行のホームページを編集部キャプチャ

「これまでの銀行業は完全に営業店中心だった。しかしフェイストゥフェイスでお会いできる範囲は顧客全体の10%ぐらいしかいません。残りのお客様とどうやって双方向でコミュニケーションをしていくか。そこで必要になったのがオムニチャネルです」(南氏)

りそなはリテール(個人客や中小企業向けのサービス)に特化してきた歴史を持つ。しかし、顧客の実態を調べてみると、個人顧客の実に9割はATMとネットバンキングで取り引きをしていることが明らかになった

「スマホがあなたの銀行に」を掲げたりそなグループアプリ(口座開設や振り込みができるスマートフォン向けのアプリ)は、デジタルアートで世界的な人気を誇るベンチャー、チームラボと協業。

同アプリは2021年1月時点で330万ダウンロードに達し、2023年までに500万ダウンロードを掲げている。頭ひとつ抜けている楽天銀行には及ばないものの、着実にスマホユーザーを増やし続けている。

さらに、DX人材の育成や知見の交流を目的に、日本IBMと共同会社を設立するなど「リテール特化型銀行」としてデジタル・データファーストに舵を切っている

2.リアル店舗はあえて残す

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メガバンクは、大幅な支店数の削減を進めているのに対し、りそなは店舗重視が目立つ。その意図とは。

撮影:今村拓馬

では、リアルの店舗はどうなるのか。

「『店舗は減らしたほうがいいのではないか?』という極論を言う人もいるが、リアルチャネルの重要性はこれからも変わるわけではない。ネットによってリアル店舗の価値を特別なものにしていきたい」(南氏)

三菱UFJ銀行は店舗数を2023年度末までに、2017年度末時点で515あった店舗数を40%減らす方針を発表。メガバンク3行は、いずれも全国に張り巡らせた店舗の削減を進めている。

一方のりそなは、グループ全体で有人店舗数が約830拠点(2021年3月末時点)あり、全国に店舗をもつメガバンク3行を上回る。店舗重視の姿勢は明確だ

ただし、従来通りの店舗運営をイメージすると話はだいぶ違う。従来店舗で行われてきたバックヤードでの確認や打ち込み作業など、膨大な事務処理は抜本的になくしていく。

「店頭にアプリの入ったタブレットを導入し、お客様に説明しながら、アプリを操作してもらう。将来的にタブレットが進化すれば、そのまま営業店になる。『社員一人ひとりが営業店』を目指すのが新しい我々の流れだと思っています」

3.リストラはしない、再教育がカギ

3万2000人のグループ社員を抱え、うち約2万人が支店などのバックヤードで事務を担当している。

DXが進めば今後、事務担当の社員の業務は減る。業務がなくなった社員はどうなるのか?

中期経営計画でりそなは、チャネル改革、店頭デジタル化を通じた生産性向上により総人員が3100人(全体の9%)減少すると試算。一方、自然減する職員を除き、1700人の社員は再配置されるという。

リストラではなく、完全に再教育の方針です。事務の仕事から、お客様の接点になって新しいソリューションを提供したり、新規ビジネスの担い手になったりしてもらう。本来持つ力をより発揮しやすい領域に展開していきます」

「DXを企画するのも、実際に展開していくのも、恩恵を受けるのも実は「人財」。DXはどこまで行っても人財基点、そしてお客様基点で考えるべき話なんです」

人なくしてむしろ、DXのビジネスモデルは成立しないと言い切る。

4.地銀再生の要というポジション

菅首相

菅首相は「地銀再編」について言及し、話題となった。

Rodrigo Reyes Marin/Pool via REUTERS

菅首相が「地銀が多すぎる」と発言し、本格的に幕を開けた地銀の再編成。りそなは再編の要(かなめ)として、注目を集めている。

りそなHDでは2020年6月、めぶきフィナンシャルグループ(傘下に常陽銀行、足利銀行)とデジタル分野における戦略的業務提携を締結。2021年2月には地銀大手の横浜銀行とも資産運用で業務提携が報じられるなど、勢いを見せている。

ただ、資本提携にまで一気に歩を進めているわけではない。具体的な提携のあり方は現在のところ、アプリなどソフトウェアの機能を共有する「API連携」が中心だ。

「一般的に言われる地域金融機関の再編という話は、どうしても資本提携やシステム統合ありき。この2つで語られることが多い。我々はリテールの世界で生きてきた銀行であり、地域金融機関が抱える悩みもよく分かっている。(いきなりの資本提携よりも)まずは共創のプラットフォームを作りたいと思っています」

南氏は再編のリーダーシップに一定の自信を見せる。

資本提携の検討については「ゼロではない。ケースバイケースだ」としつつ、よりライトな提携のほうが現実性が高いとの考えだ。

「テクノロジーが進化し、簡素にすばやい提携が可能になった。我々の強みは、50年以上、年金の運用をやってきた分散投資にあります。提携を通じて、他の金融機関が抱えるお客様に、我々の金融商品を提供することができれば(新たな顧客網への商品提供という)ウィンウィンの関係が築ける

5.アマゾンになく、りそなにあるもの

地銀の顧客を狙う強力なライバルも登場している。

膨大な顧客基盤を持つアマゾンは、アメリカでは2011年に中小企業向け融資など金融業に参入。月間アクティブユーザー数が8600万を超えたLINEも、みずほ銀行と共同でスマホ銀行「LINE Bank」を2022年に設立すると発表し、金融分野における存在感を増してきている。

これに対し南氏は「リアルでのソリューションが大きな武器になる」と話す。

中期経営計画では、実績を積んできた信託事業と不動産事業で優位性を保ちながら、デジタル訴求を目指すと掲げた。

「デジタルの場では、これまでぼんやりしていた顧客の実像データが集まる。歴史的に培ってきた強みをデータで補完する。強みの深掘りと、デジタルでの挑戦、この二兎(にと)を追います

「顧客体験をいかに向上させていくか、そこではフェイストゥフェイスのやり取りが、非常に重要なポイントになる。かつ、ここは差別化しにくい領域。人が持っている知見、人が提供しているソリューションは、とても模倣しにくい、まさにりそなの強みだ

既存のリアル店舗とデジタル・データの相互乗り入れこそが、老舗×データの武器だと自負している。

経営難からの再生、続く次世代へのバトン

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ガラス張りになっている役員室の前に立つ南氏。

撮影:岡田清孝

今、GAFAに象徴されるグローバル巨大資本が国境を超えて顧客を呑み込む一方、日本国内では少子高齢化が進み、銀行はこれまでにない冬の時代を迎えている。

しかし、下位銀行同士の合併、バブル崩壊後の不良債権処理による経営危機、累計3兆円の公的資金注入と実質国有化。高度成長とバブル経済、その崩壊という激動の20世紀をくぐり抜けてきた経験が、りそなにはある。

「脱・銀行」は今でこそよく語られる言葉になったが、りそなは2000年代初頭という早い時点でそこに向けて完全に舵を切った。2002年時点で「フィナンシャルグループ」ではなく、「ホールディングス」を掲げたのは、その象徴でもある。

事業会社出身の細谷氏による、どの銀行にも先駆けた「脱・銀行」改革。そのDNAは、改革を目の当たりにしてきた現経営陣から、次世代の社員たちへとバトンが渡され、今なお息づいているのだ

(取材・文、滝川麻衣子、横山耕太郎、取材協力・丹治倫太郎)

初出時、りそなHDとめぶきフィナンシャルグループとの戦略的業務提携を「2020年2月」としていましたが、正しくは「2020年6月」でした。お詫びして訂正します。
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