「将来リーダーとして責任ある仕事をしたい」と考えている女子学生は、わずか1割。
一方、「リーダーには男性の方が向いている」「家事や育児は女性がすべき」と考えている男子学生はいずれも3割を超える。日本の若者の深刻なジェンダーバイアスが、国際NGOの最新調査から明らかになった。
リーダー層を目指す女子学生は1割
「男は仕事、女は家庭」というジェンダーバイアスにとらわれている学生たちの実態が明らかになった(写真はイメージです)。
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調査を行ったのは、国際NGOのプラン・インターナショナルだ。
2020年9月から10月にかけて、全国の15〜24歳の男女の学生ら1000人(男子500人、女子500人)(大学生61%、高校生17%、専門学校生9%など)を対象に、インターネットを通じて質問。その内容を「日本における女性のリーダーシップ 2021」にまとめて公表した。
以下にその結果を紹介する(小数点以下は切り捨て)。
「将来リーダーとして責任ある仕事をしたい」と考えている学生は少なく、男子は18%、女子はさらにそのおよそ半分の9%にとどまった。その理由として男女ともに最も多かったのは、「自信がないから」(男子44%、女子50%)。次いで「責任のある仕事をしたくないから」(男子13%、女子15%)だった。
「男は仕事、女は家庭」の価値観は学生時代から
出典:「日本における女性のリーダーシップ2021」プラン・インターナショナル
調査では、学生時代からすでにジェンダーバイアスを身につけている学生、とくに男子学生が少なくないことも分かった。
「女性より男性の方がリーダーに向いていると思う、どちらかといえばそう思う」と回答した割合は、女子20%に対し、男子は34%と、約3分の1の男子学生が「男性のほうがリーダーに向いている」と考えていた。
また、「家事や子育ては女性がしたほうがよいと思うか」という質問について、「そう思う」「どちらかというとそう思う」と答えた割合は、女子25%に対して、男子38%だった。
興味深いことに、家事・育児に対する考え方とリーダー志向の関係について、女子学生には相関性が見られなかった一方、女性が家事・育児をしたほうがよいと思う、どちらかといえばそう思うと回答した男子学生の47%が、将来的にリーダーをしたい、どちらかというとしたいと回答しており、一定の相関性がみられた。
理想の女性リーダーはあの政治家
小池百合子東京都知事。2020年11月19日撮影。
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こうしたジェンダー観は、ジェンダー平等教育(ジェンダー平等に関する法律や国際条約、女性の人権、家事・育児の男女の平等な役割分担について学ぶことなど)とも関連があった。
男女ともに、リーダーには男性のほうが向いていると思わないと回答した、つまりジェンダーバイアスのない学生の6割以上(男子62%、女子73%)が、ジェンダー平等教育を受けた経験があったのだ。
また冒頭で紹介した、将来リーダーとして責任ある仕事をしたいと考えている約9%の女子学生のうち、85%がジェンダー平等教育を受けた経験があると回答している。
ちなみに学生たちが「理想の女性リーダー」としてあげた著名人は、小池百合子東京都知事とドイツのメルケル首相は男女共通。他にも、男子は立憲民主党の蓮舫参院議員、女子は俳優の天海祐希さんなどの名前があがった。
未就学期からジェンダー平等教育を
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本調査結果を受けてプラン・インターナショナルは、
「『男は仕事、女は家庭』というジェンダー規範は15歳未満で芽生える可能性が高い。ジェンダー平等を促進するには、家庭や周囲がジェンダー規範を押しつけないことに加え、小・中学校、あるいは未就学期からジェンダー平等教育の視点を採り入れていく必要がある」
と結論づけている。
一方で、女子はジェンダー平等教育を受けた学生でもリーダーになる意欲は低い。
「女性がリーダーとしてのハードルを高く設定し、リーダーになる自信がある女性が男性よりも少ないことと関係があるかもしれない。ジェンダー平等意識を根付かせるとともに、女性の自己肯定感、自己効力感を高めるための教育が必要だろう」(プラン・インターナショナル)
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(文・竹下郁子)