スーパーレアの仮想世界に建つ「マーズハウス」。
SuperRare
- デジタルの家が、トロント在住の人物に50万ドルを超える価格で売却された。
- この家は、購入者のメタバースにアップロードできるだけでなく、物理的な世界で再現することもできる。
- 不動産市場の専門家によると、NFTの不動産はブームになる可能性があるという。
2021年3月、デジタルの家が50万ドル(約5500万円)を超える価格で販売された。
この家は、デジタルアートのマーケットプレイスであるスーパーレア(SuperRare)で、NFT(非代替性トークン)として販売された。トロント在住の購入者は、約51万2712ドル(約5650万円)相当の暗号通貨イーサ(ETH)と引き換えに、「マーズハウス(Mars House)」と名付けられたNFT作品の3Dファイルと音楽が流れるビデオクリップを受け取った。
このファイルは、購入者のメタバースにアップロードしてアバターが住む家として使用できる。メタバースとは「シムシティ」や「マインクラフト」のような仮想世界のことを指し、ユーザーはアバターを介して他のユーザーと交流しながら生活し、家や服などのデジタル資産を購入することができる。NFTのメタバースで特に人気が高いのは、「ディセントラランド(Decentraland)」で、ユーザーが自分の現実を構築できるコミュニティサイトだ。
スーパーレアによると、「マーズハウス」はブロックチェーンをベースとした世界初のデジタルの家だという。アーティストのクリスタ・キム(Krista Kim)が制作し、クリップの音楽をスマッシング・パンプキンズのジェフ・シュローダー(Jeff Schroeder)が担当した。
仮想世界としての火星に建てられたこの家は、ほとんどがガラスでできているようだ。
キムは、パンデミックによるステイホーム中にインスピレーションを得て、このデジタルハウスを作ったという。
「キムは、ステイホーム中に瞑想的なデザインを模索しているうちにNFTにたどり着いた。彼女の願いは、デジタルライフが流入している状況を、ウェルビーイングを促進するチャンスとして役立てることだ」とスーパーレアはプレスリリースで述べている。
「光だけで構成されたマーズハウスの視覚効果は、禅的な癒しの雰囲気を醸し出している」
現在、この家はブロックチェーン上にしか存在していないが、プレスリリースによると、イタリアのガラス家具メーカーに依頼すれば、現実の世界で再現できる。またマイクロLEDディスプレイに映し出すことも可能だ。
「誰もがNFTアートのために、LEDウォールを自宅に設置するといい」と、キムは述べている。
「これは未来であり、マーズハウスはその可能性の美しさを示している」
売却額が50万ドルを超えたマーズハウスは、ここ数カ月で注目を集めた数多くのNFT作品の1つに過ぎない。3月初めには、デジタルアーティストのビープル(Beeple)がNFTアート作品を約7000万ドル(約77億円)で売却した。NFT作品には、3D画像から動画、ミーム、ツイートに至るまで、あらゆるものが含まれる。
3月には、ツイッター(Twitter)のジャック・ドーシー(Jack Dorsey)CEOが、ツイッターで初めて投稿された自身のツイートを、290万ドル(約3億2000万円)で売却した。
リパブリック(Republic)の不動産部門の責任者、ジャニーン・ヨリオ(Janine Yorio)は、NFTの不動産取引は住宅購入の未来の形になるかもしれないと述べている。
「仮想世界での最高の不動産物件は、現実の不動産よりも速いスピードで価値が高まると予測している」とヨリオはコインデスク(CoinDesk)への寄稿で述べ、ここ数カ月でNFTの価値が高まっていることを示唆した。
2月にはあるNFT投資家が、NFTアート作品を購入時の約100倍となる660万ドルで転売することに成功した。CryptoSlamによると、ここ1カ月間でNFTの販売額は10億ドル(約1100億円)を超えているという。
さらに、ディセントラランドのような仮想不動産サイトは、ここ数カ月間、成長を続けている。同サイトが発行する暗号通貨「MANA」は、2億2500万ドル(約250億円)の市場価値があり、ヨリオによるとその価格は過去1年間で321%以上上昇したという。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)