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- パーソナルトレーナーによれば、夏が近づいてくると、手っ取り早く結果を出したいという人が急増するという。
- 具体的で現実に即した目標を設けることで、数カ月の期間でもかなりの効果が期待できる。
- 体脂肪を減らす、あるいは筋肉をつけるには、複数の筋肉群を同時に動かす、栄養を意識した食事計画を立てる、リカバリーを重視するといった方法が有効だ。
気がつけば季節は移り、夏はすぐそこだ。もうすぐ、さまざまな人と直接顔を合わせる日がやってくるだろう。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて何カ月も家に籠もっていた人たちも、久しぶりに会う友人や親族、知人に緩んだ体は見せられないと、ジム通いを再開している。
どんな体形でもビーチで水着を着るのを恥じる必要はないが、夏を前にした数カ月間は、減量と筋肉増強のためにエクササイズをする人が大幅に増えるとパーソナルトレーナーたちは口をそろえる。
「新型コロナウイルスの感染が拡大していたあいだ、モチベーションを失ったり、体重が増えたりしていたため、今になって体を引き締めたいという人たちが殺到しています」と語るのは、TSフィットネス(TS Fitness)の創業者で最高経営責任者(CEO)のノーム・タミル(Noam Tamir)だ。
読者の中で、この指摘が自分にも当てはまると思った人には、ぜひ知っておいてもらいたいことがある。それは、適切に計画を立て、現実的な目標を設定し、着実にトレーニング計画を実行すれば、たとえ初心者であっても、短い期間で大きなフィットネスの効果を得るのは十分可能ということだ。
「わずか30日間でも、驚くほどの大変身を遂げた実例がいくつもあります。それを考えると、60日から90日という期間があれば、大きな変化を達成することが可能です」とタミルは言う。以下では、そのために守るべき5つの原則を紹介しよう。
1. 優先順位を明確にする
「夏の到来までに引き締まった体を手に入れる」という目標に向けて、理想の計画をスタートさせる前に、まずは、実際には何を優先するのかを明確にする必要がある。
フィットネスに関して最もやりがちなミスの1つは、具体的な目標への絞り込みの不足だと、パーソナルトレーナーのブライアン・ゴールドバーグ(Bryan Goldberg)は指摘する。
「人々は、何でもいっぺんにやろうとするワナにはまりがちのように思います。すべてのことを一度にはできません」
生理学的に言って、筋肉をつけるのと同時に脂肪を大幅に減らすのはとても難しいと、ゴールドバーグは指摘する。両方を実現しようとすると、どちらも思うような進展が得られず、不満が募ってモチベーションが下がってしまうのだという。
特に、短期間で目に見える結果を出したいなら、はっきりとした成果が得られるまで、ひとつの目標に絞って運動を続けるのが最良の方法だとゴールドバーグはアドバイスする。
具体的な目標が思い浮かばない場合は、筋肉をつけて体にボリュームを出したいのか、体脂肪を減らして筋肉がくっきりと見える体を手に入れたいのか、あるいは、パフォーマンスについての目標達成に集中したいのか、という選択肢で考えると良いだろう。
大半の人にとっては、短期間ではっきり目に見える結果を得たいなら、体脂肪の減少に集中するのが近道だ。これは、筋肉量を増やすよりも短時間で実現しやすいからだ。
2. 目標に合わせた食事の内容も重要
具体的な目標を決めたら、その達成に向けて、食生活にも気をつける必要がある。というのも、適切な栄養摂取なしでは、ジムでの運動で達成できることには限りがあるからだ。
体脂肪を減らすには、カロリー不足の状態が必要になる。つまり、運動などで消費するカロリーが、摂取するカロリーを上回っていなければならない。
これとは対照的に、筋肉をつけるには、カロリーをプラスにする必要が生じる。これは筋肉に、筋肉細胞の修復と成長に必要なエネルギーを供給するためだ。
3. やみくもに強度を高めず、賢いエクササイズを
体脂肪を減らしたい場合でも、筋肉をつけたい場合でも、手っ取り早く結果を得るのに最適な運動法は同じだというのが、複数の専門家の一致した見解だ。
最も効果が出やすいのは、コンパウンド・エクササイズ(多関節運動)と呼ばれる、スクワットやデッドリフト、プレス系のトレーニングだと、タミルは教えてくれた。複数の大きな筋肉群を一度に動かすこれらのトレーニングなら、効率よくカロリーを燃やし、筋肉をつけることができる。
有酸素系(カーディオ)と無酸素系(レジスタンストレーニング)を組み合わせるのも、できるだけ早く結果を出すために有効だ。
もう一点、45分間のセッションを週2回から5回行えば十分な運動になると、ゴールドバーグ氏は述べる。
ただし、運動中は時間を無駄にしないことが大切だ。1つの筋肉しか動かさないトレーニング種目は思い切って省き、体の1つの部位だけを「集中的に鍛える」運動も避けよう。こうした「効率の悪い筋トレ種目」の主な例としては、バイセップ・カール(二の腕を引き締める)、カーフ・レイズ(ふくらはぎを鍛える)、レッグ・エクステンション(ひざから下を持ち上げる)などがある。
4. 睡眠やリカバリーの時間を軽視しない
フィットネスの目標を達成する過程で、人々がやりがちなもうひとつのミスは、体が回復し、変化するために必要な休息をとらないことだ。休息は、絶対に欠かしてはならない時間なのだ。
「休息は非常に重要なのですが、エクササイズのなかでは見過ごされてきました」とゴールドバーグは言う。
筋肉量を増加させるためには睡眠は欠かせない。人の体が、筋肉細胞を修復して再び成長させるのは睡眠中だからだ。また、減量に関しても、睡眠の効用はあまりにも過小評価されている。
「あまり魅力的な話題ではないのですが、体脂肪が減ってくると、以前より多めの休息が必要になる可能性があります」と、ゴールドバーグは指摘する。
「エクササイズにせよ、食事制限にせよ、体に対する働きかけは一種のストレスになるからです」
5. 長期的に続けられるよう、現実的な目標を設定する
大幅なイメージチェンジを達成して、大変身した姿をこの夏に見せつける、というのは魅力的な考えかもしれない。だが、こうした急激な変化は、長期的な目標の達成にとっては、かえって妨げとなる恐れがある。
食事制限やエクササイズ、あるいはその両方で無理をすることで、求めていた結果は得られるかもしれない。しかし、その後は燃え尽きてしまい、厳しいルーティンを続けられなくなる可能性が高い。
「気持ちが萎えてしまうのであれば、見た目の変化に価値はありません」とゴールドバークは警告する。
つまり、この夏までに腹筋が割れなくても、それはそれでかまわないということだ。一口に「健康的な体」と言っても、それぞれの人がどのような見た目になるかについては遺伝などの要素が大きな役割を果たしている。これについては、フィットネスの専門家も同意見だ。
「大切なのは、雑誌のモデルのような見た目を目指すことではありません。自分自身をよりよくすることが目的です」とゴールドバーグは指摘する。
また、大幅な肉体改造には、数年の月日がかかるものだ。小さな変化を積み重ねていけば、数カ月の間に結果が出てくる。さらに、その成果を足がかりにして、夏が終わってからも長い間、運動を続けていけるはずだ。
「ゆっくりと、しかし着実に、というのが最良のアプローチです」とゴールドバーグは述べる。
「始めるのに最高のタイミングは、今なのです」
(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)