レノボが発売した薄型軽量モバイルPC「ThinkPad X1 Nano」を使ってみた。
撮影:小林優多郎
正直、ノートPCに大きな驚きを覚えることはそんなにないだろうとたかをくくっていた。
自分が私物として使っている2019年発売の「VAIO SX12」はいまだ現役で、非常に軽く、4G通信にも対応するなど非常に満足している。
そのため、細かな改善などはあったとしても、「いまより劇的に仕事環境が良くなる」なんてことはほとんどないと思っていたわけだ。
しかし、ThinkPad X1 Nano(直販価格19万2280円〜)は、その最新スペックやThinkPadブランド固有の特長を存分に発揮して、筆者の思い込みを打ち砕いてくれた。1カ月程度、実機を試用した体験をもとに、その理由を説明しよう。
なお、詳しいスペックや製品特徴は、発売決定当時の記事を参照していただきたい。
スリープ復帰がセキュアで爆速
ThinkPad X1 Nanoは顔と指紋の2種類の生体認証に対応している。
撮影:小林優多郎
個人的に最も満足度が高かったのは、スリープからの復帰の速さだ。単純なスピードもさることながら、ロック解除までの体験全体が素晴らしい。
細かく解説すると、ThinkPad X1 NanoはWindows 10の「モダンスタンバイ」機能を実装しており、そもそもスリープからの復帰が速い。例えば、天板を閉じた状態から開くと、ほぼ瞬時にロック画面が表示される。
もちろんそこから設定したパスワードやPIN(暗証番号)を入力してもいいが、正面カメラによる顔認証と、タッチパッド右にあるセンサーによる指紋認証に対応しているので、事前に設定しておくことをオススメしたい。
顔認証を設定しておけば間もなく自動的にロック画面が解除される。指紋の登録も顔認証と両立できるので、例えば外出先でマスクをつけて作業をする際は指紋で解除するなど、必要に応じて使い分けられる。
さあ作業を始めようと思って、開けた瞬間ロックも解除されるのは、地味なことだがかなり感動する。
撮影:小林優多郎
また、人感センサーを搭載しており、ThinkPadは目の前に人がいるか、いないか判定できる(大抵のスマートフォンにも似たような機能が備わっている)。
そのため、例えば作業途中に席を外すと画面が自動的にオフになる。戻ってくると自動でオン。顔認証をオンにしておけば、さらにロック解除まで自動的に進めてくれる。そこまではノータッチで済む。
「スリープ解除なんて微々たる特徴じゃないか」と思うかもしれないが、PCを使えば1日に数回は発生するシチュエーションだ。それがストレスフリーになることで得られる満足度は非常に高い。
打ちやすいキーボード+テレワークに便利な機能も
ThinkPad X1 Nanoのキーボード。
撮影:小林優多郎
ThinkPadといえば、シリーズを通してファンの多いキーボードにも触れておく必要があるだろう。
ThinkPad X1 Nanoは約907グラム(最軽量モデルの公称値)、厚さ13.87ミリという軽さ・薄さが特徴的だが、13.3インチの「ThinkPad X13」とほぼ同じサイズのキーボードを搭載している。
ストローク(キーを押し込んだ際の深さ)は浅いほうではあるが、自分は自宅でアップル純正のMagic Keyoboardを常用しているので、それに比べればThinkPad X1 Nanoの方が押したときの感覚は断然しっかりしている。
個人的には、左下隅のキー配列が左から「Fn(ファンクション)キー」「Ctrl(コントロール)キー」の順になっている点と、「PrtSc(プリントスクリーン)キー」が右下に配置される点に違和感があるが、慣れればなんとかなる範囲だ。
ファンクションキーの列には、テレワークにも役立つホットキーが割り当てられている。
撮影:小林優多郎
また、ファンクションキーが並ぶ最上行に付与された機能(ホットキー)にも注目だ。音量のオンオフなどはもちろん、マイクのミュートや機内モードの切り替えが簡単にできるのはうれしい。
なお、OS標準のF1〜12キーとして使うには、前述のFnキーと同時に押すか、左隅の「Esc(エスケープ)/FnLockキー」+FnキーでFnLockにしてから押せばいい。
“USB Type-C端子のみ”は評価が分かれるところ
筆者自宅のディスプレイとThinkPad X1 Nanoの相性は良かった。
撮影:小林優多郎
最後に、“業種によるけど気をつけたいこと”を述べておきたいと思う。それは、インターフェイス(外部入出力端子)についてだ。
ThinkPad X1 Nanoのインターフェイスは、USB Type-C 3.1 Gen2(Thunderbolt 4対応)が2基とイヤホン/マイクジャックのみだ。
そのため、外部ディスプレイやType-C以外のUSBメモリーなど各種周辺機器を接続するには、ドックやアダプターが必要になる。
これを便利/不便のどちらかに評するのは非常に難しい。
例えば筆者の場合、自宅にはUSB Type-C接続が可能でUSBハブ機能を持つ4Kディスプレイがあるため、Type-Cケーブルを1本挿すだけで、ThinkPad X1 Nanoへの充電と画面出力、ディスプレイにつないでいるプリンターやハードディスクへ接続できて非常に便利だ。
USB Type-Cのハブ。SDカード、HDMI出力、USB Standard-Aが同時接続できるのは魅力だが……。
撮影:小林優多郎
一方で、筆者は外に出て取材をし、そこで撮影した写真をPCに読み込み、外でそのまま記事にする……という作業をする。その際、SDカードを介して写真を移すが、ハブやアダプターを忘れるとその作業が滞る。
先日も東京から大阪に出張した際、自前のハブの調子が悪くなり、SDカードが一切読み込めなくなったときは肝を冷やした(現地で新しいSDカードリーダーを調達する結果となった)。
こういったトラブルは、同じようにUSB Type-C端子のみを採用するMacBook Air/Proシリーズでも起こりうる。自分の普段の仕事スタイルや周辺機器の状況も踏まえて、「USB Type-CのみのモバイルPC」を選択するべきか検討してみよう。
(文、撮影・小林優多郎)