炎上対策、課金新機能…ユーザー数1.8倍「note」がめざすクリエイター共栄圏とは何か

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noteは4月7日、7周年の事業説明会で会員登録者が前年比1.8倍増の380万人を突破したと発表した。

撮影:西山里緒

メディアプラットフォーム「note」は4月7日に開いた事業発表会で会員登録者数が前年比1.8倍増の約380万人に達したと発表した。コロナ禍でユーザー数が大きく飛躍し、サブスクリプション、ECサイトなど、事業の拡大を続けるnoteの次なる一手は?

BASE、文藝春秋、博報堂とも連携

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「7年前からクリエイターエコノミーに取り組んできた」と語るnote CEO 加藤貞顕氏。

「最近、様々なサービスがクリエイターを支援し始め『クリエイターエコノミー』という言葉が世界的にも盛り上がってきています。ただ、noteはサービス開始から一貫してその領域に取り組んできた会社です

投げ銭機能を発表した音声アプリ「クラブハウス」、ポッドキャスト配信者への課金機能を強化したSpotify、課金機能「スーパーフォロー」を発表したTwitter……。そうしたサービスを並べ挙げながら、note CEOの加藤貞顕氏は自信ありげにそう語った。

「クリエイターファースト」を掲げ、2020年5月には月間アクティブユーザー(MAU)は6300万を突破した。その成長にあわせて、noteは事業を拡大してきた。

そのうちの一つが、2021年1月に発表した、ネットショップ作成サービス「BASE」との資本業務提携だ。現在も「ストア機能」を通じてnoteからモノの購入はできるが、今後はさらに連携を強める。BASEのネットショップ管理画面から、noteへ記事が投稿できるようにもなるという。

企業向けのサービスも強化している。発表会同日の4月7日には、博報堂との業務提携を発表。同社と共催するクリエイターコンテストなどを通じて、企業のブランディングも手がけていくという。

加藤氏はnoteのイメージを「クリエイターが集う街」という言葉で表現する。

「noteというと課金の仕組みが注目されがちなんですが、コンテストで入賞したり(拡散して)友達に見てもらえたり。そうした様々なことが“継続”につながる。クリエイターのエコシステム、共栄圏を作りたい」(加藤氏)

noteのコメント欄が荒れない理由

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noteが実装を目指すDM機能。決済機能なども考えているという。

画像:note

コロナ禍でリアルイベントの実施が難しくなり、オンラインでファンから直接課金をしてもらえるnoteの存在感は飛躍的に高まった。

その一方で、人々がオンラインにいる時間が長くなったからこそ、オンライン上の誹謗中傷の問題もより大きくなった。こうした問題に対するプラットフォーマーの責任を追及する向きも強い。

例えば、誹謗中傷の温床だとして度々批判されている「Yahoo!ニュース コメント(通称ヤフコメ)」。2020年6月、ヤフーはヤフコメの健全化に向けた取り組みとして、人工知能を活用し、建設的度合いの高いコメントを優先して表示すると発表した。

質疑応答では、ヤフコメと比較してnoteでは誹謗中傷コメントにどう対処しているのかが問われた。加藤氏は「そもそもnoteのコメント欄は相対的に荒れないようになっている」と語り、その理由をこう続けた。

noteは、クリエイターの(宣伝ツールのひとつではなく)“本拠地”になっているからでは。匿名でネガティブなコメントを投げ捨てていっても、いいことが起こらない設計になっている」

発表会では、今後の実装を目指す新機能も一部、発表された。その中には、クリエイターに直接仕事の依頼ができるようになるDM機能も含まれている。

「最終的には、DM内で決済などもできるようにして、note内でイラストを発注したり何かの授業をしてもらったり、ということを目指す」(note CXO 深津貴之氏)

こうした「仕事のチャンス」を増やすことで、ユーザーの行動がポジティブになっていく動機づけともなる、と加藤氏は付け加える。

noteはメディアかプラットフォームか?

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noteが運営するメディア「cakes」は2020年、掲載された記事が不適切だとして批判が相次いだ。

画像:cakes公式サイト

誰もが自由に表現できる“場”として拡大を続けるnote。一方で、noteのプラットフォームとしての企業責任を問われる場面も増えてきている。

2020年には、noteが運営するメディア「cakes」で掲載された原稿が不適切だとして、批判が相次いだ。11月には、noteがcakesとコラボして開催したクリエイターコンテストで優秀賞を受賞した、ホームレスの生活をルポ風に描写した作品が「差別的だ」などと炎上

「メディア」「プラットフォーム」と2つのサービスを運営する企業として、差別や誹謗中傷に対する取り組みを軽視していたのではないか、とnoteは批判の矢面に立たされた。

こうした問題に対して企業としてどのように対応しているか? Business Insider Japanの質問に対して加藤氏は、cakesの編集部体制を抜本的に見直したと回答した。

特に、編集部内で記事掲載までのチェック回数を増やしたほか、特定のテーマの記事には専門家を入れてチェックをしているという。

その一方で、現在noteでコンテンツを掲載する、100を超えるメディアに対しては、横断したガイドラインは設定しないという。出版社などのメディアに対しても一般ユーザーと同様に、現状の「利用規約」と4月7日に新たに発表した「コミュニティガイドライン」で掲載基準の判断をしている、とした。

コミュニティガイドラインを読んでみると、特に「表現の多様性の尊重」に重点が置かれている。こうしたガイドラインも定期的に見直し、アップデートしていく予定だと加藤氏は補足した。

また、プラットフォーマーとしてデマやフェイクニュースの拡散防止も、今後は対策を強化していくという。

「主に3つ取り組みがあります。規約をベースにして(それに反する)コンテンツを機械的にパトロールする仕組みは、人工知能を使って作っています。それだけではなくて人でもチェックしていますし、通報でも対処しています」(加藤氏)

新型コロナウイルスを扱う記事については、記事上の「公的機関で発表されている一次情報にあたることをお勧めします」などとした注意書きを掲載している。

8年目に突入したnoteが目指す「クリエイター共栄圏」。その実現のためには、ユーザーが信頼・安心できる「情報」をどうプールしていくか?に焦点が当てられることは間違いないだろう。

(文・西山里緒)

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