動画共有サービス「YouTube」では、コロナ禍でどのような変化があったのか。
世界経済フォーラムによるオンライン開催の「グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット」の2日目(4月7日)で、YouTubeのスーザン・ウォシッキー(Susan Wojcicki)CEOは「何千億というインプレッションがコロナ禍で発生した」と語った。
ウォシッキー氏が語ったYouTubeのプラットフォーマーとしての責任や現在重視していることをまとめてみた。
コロナ禍でYouTubeが取り組んだこと
Googleが公開しているYouTubeの透明性レポート。
出典:Google
ウォシッキー氏が、コロナ禍で取り組んだこととしてまず挙げたのは、医療情報やニュースについてだ。
具体的には専門家の正しい情報をユーザーに届けるために、各国の医療機関や専門家と連携。それに伴い、不適切な情報を含むコンテンツへの対応も強化した。
例えば、YouTubeが公開している「コミュニティ ガイドラインの適用に関するレポート」(透明性レポート)によると、2020年10〜12月に削除されたチャンネル数は205万5515件で、うち77.3%は「スパム、誤解を招く表現、詐欺」についてだった。
また、同期間に削除された動画本数は932万1948件で、うち880万82件は自動システムによる報告によって検出された。
YouTubeは4月7日に「違反コンテンツ視聴の割合(VVR : Violative View Rate)」を公開しており、最新のVVRは0.16〜0.18%。これは再生1万回につき16〜18回が違反コンテンツであることを示している。同社によると「2017年の同時期と比較すると70%以上の減少が見られる」という。
YouTubeが考える“適切な規制”の考え方は?
YouTubeのスーザン・ウォシッキーCEO。
出典:世界経済フォーラム
適切なコンテンツを適切に配信する取り組みを紹介、強調したYouTube。ウォシッキー氏は、ユーザーのあげる多様なコンテンツを担保する姿勢、またそれらを発見しやすいようにレコメンドする方針についても触れた。
ウォシッキー氏によると、COVID-19関連情報に代表されるような厳しい基準を設けているのは、おもに特定のカテゴリーだと話す。
「(違反検出やレコメンドの)アルゴリズムは長い道のりを歩んできた。ニュース、医療、サイエンスに関しては信頼できるものをレコメンドする。(信頼できるかどうかの)ボーダーライン上にあるコンテンツはレコメンドしない。それぞれの(カテゴリーで)アルゴリズムを組んでいる」(ウォシッキー氏)
その真意についてウォシッキー氏は「(初期のYouTubeのように)新しい小さな音楽家を見つけることと、ガンの情報を探すことは違う」と語り、言論の自由は担保しつつも、センシティブな内容への対応方法を述べた。
登壇の終盤、ウォシッキー氏はアメリカで活発に議論されているプラットフォーマーの責任、コンテンツの法的規制について質問を受けた。
ウォシッキー氏は「政府の根拠も考え方もわかっている」と理解を示しつつも「ユーザーのメリットにならない規制は望まれない」と、より規制のラインが明確になる議論を求めた。
「全体のアプローチはおおむね『そうだな』と思っている。
政府は子どもを、暴力、ヘイトスピーチから守りたい。私たちも(その点については)ものすごく取り組んでいる。問題が難しくなるのが規制についてで、この網が広く、定義があいまいだと、有害になる。
課題としては、あまりにも広い規制が導入されると、多くのコンテンツを削除しなければいけなくなる。ユーザーのメリットにならない規制は望まれない」(ウォシッキー氏)
(文・小林優多郎)