ユニクロ原宿点の店内風景(2020年撮影)。
撮影:小林優多郎
ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは4月8日、2021年8月期の第2四半期(2020年12月〜2021年2月)決算と最新の通期業績予想を公表した。
通期業績予想については上方修正。売上高はコロナ禍の影響を大きく受けた前期に比べて10%増の2兆2100億円、営業利益が同70%増の2550億円、最終利益が同82.6%増の1650億円と、大幅な増益になるとの見通しを示した。
ファーストリテイリング2021年8月期2Q決算説明資料より
コロナ影響のなかで上方修正したことそのものは、ユニクロやGUをはじめとするファーストリテイリングの事業の底力を感じさせる。とはいえ、比較対象はあくまでコロナが直撃した前期だ。
過去2年の通期実績と比較すると、2021年8月期はの業績予想は、コロナ以前の2019年度に比べて約800億円の減収、営業利益は微減、最終利益は25億円の増益というだ。まだ回復の途上であることがにじんだ通期予想といえる。
ユニクロ・GUなど国内好調、海外不調
上期の実績のなかで見るべき1枚は、セグメント別の状況だ。この資料をみると、コロナ直撃の2020年度からの売り上げ回復が、どの分野でどの程度進んだかが見て取れる。
端的に言って、国内は好調で、海外事業は総じて厳しいことがわかる。
ファーストリテイリング2021年8月期2Q決算説明資料より
コロナ前の2019年度に比べてどこまで回復したのか。過去2年の上期決算の数字を見ると、より詳細に状況がわかる。それが以下の表だ。
ファーストリテイリング決算資料を元に編集部加工
国内事業の売上高に関して、ユニクロは2019年水準を超える規模、またジーユーにおいては200億円以上の拡大をした一方、海外事業は下がり続けていることがわかる。
これは海外が感染拡大の影響が大きく、相対的にロックダウンの影響などを大きく受けてきたこともあるだろう。なかでも、グローバルブランド事業(セオリー、プラステ、コントワー・デ・コトニエなど)は、2019年から3割減にまで落ち込み、先行きが見通せない状況に見える。
回復という点で、海外ユニクロ事業については中国以外の国の動向がポイントになる。
すでに中国については、決算資料のなかで「通期で大幅な増収増益」予想を発表している。中国におけるユニクロの店舗数は、2月時点で国内のユニクロ直営店とほぼ同数の800店舗。実際のところ、海外事業の半数が中国なのだ。
しかし、裏を返せば残りの「半分は中国以外」ということでもある。不調が続く韓国と合わせて、ロックダウンの影響が大きいアメリカ、ヨーロッパの一部の国の回復が気になるが、ファーストリテイリングはアメリカ、ヨーロッパについては下期も「コロナ前の水準に戻るのは厳しい」との見方を質疑で回答している。
なお、国内のユニクロが売上高の回復規模に対して、営業利益が大きく成長している理由も決算資料で示されている。要因は大きく4点。
- 粗利改善として、値引販売を抑制
- 生産効率改善による原価率の改善
- 物流改善によるコストダウン。たとえばECは国内ユニクロが前年比4割増だったにもかかわらず物流コストは同水準に抑制
- 広告宣伝費の見直し
新疆綿を使っているかには「ノーコメント」と柳井氏
質疑に答える柳井正会長兼社長。
ファーストリテイリング2021年8月期2Q決算会見より
決算質疑のなかでは、中国新疆ウイグル自治区での強制労働の懸念報道に関する質問も複数投げかけられた。
世界三大高級綿とされる新疆綿を使用しているか、またファーストリテイリングとしての本件へのスタンスを問う質問に対して、柳井正会長兼社長はノーコメントという立場を繰り返した。
「当然、全部の工場に関して、あるいは綿花の生産に関して監視はしている。そういった(強制労働のような)問題があったら即座に取引停止している。これは人権問題というよりも政治問題なのでノーコメント」
「人権は非常に大事なことです。我々、やるべきことはすべてやっています。それ以上のことに関して、政治的に中立なので、これ以上発言すると政治的になりますので、ノーコメントとさせてもらいます」
なお、決算当日のファーストリテイリング株の終値は前日比で1490円高い、9万980円で取引を終えている。
(文・伊藤有)