政府は4月9日、新型コロナ特措法に基づく「まん延防止等重点措置」を東京都・京都府・沖縄県に適用することを決定しました。
撮影:吉川慧
政府は4月9日、新型コロナ特措法に基づく「まん延防止等重点措置」を東京都・京都府・沖縄県に適用することを決定しました。期間は4月12日から。京都と沖縄は5月5日まで、東京は5月11日まで。5月の大型連休であるゴールデンウィークも含まれることになりました。
これまでに宮城県・大阪府・兵庫県の3府県にも適用(〜5月5日)されていますが、適用地域では知事が法律に基づき時短要請や命令などを出せるようになります。
この「まん延防止等重点措置」とはどんな内容なのか。緊急事態宣言と何が違うのか、簡単に解説します。
1.「まん延防止等重点措置」とは?
東京都の新規陽性者・入院者数等の推移
出典:新型コロナウイルス感染症対策本部
「まん延防止等重点措置」(以下、まん延防止措置)とは、特定の地域で新型コロナ感染症が生活や経済に「甚大な影響」を及ぼすレベルで拡大(まん延)することを防ぐための措置とされています。
政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章及び次章において同じ。)が国内で発生し、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある当該区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要があるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、当該事態が発生した旨及び次に掲げる事項を公示するものとする。
平たく言えば「地域限定の緊急事態宣言」と言えるもの。「特定の区域が属する都道府県において感染が拡大するおそれ」「医療提供体制・公衆衛生体制に支障が生ずるおそれがある」時に適用されます。
専門家が定めた4段階の感染状況のうち2番目に深刻な「ステージ3」相当、または状況次第では「ステージ2」相当で適用されます。これがもし、最も感染状況が深刻な「ステージ4」相当になると「緊急事態宣言」の発出目安となります。
政府分科会の尾身茂会長は9日の衆院厚労委員会で、まん延防止措置の効果がなければ3度目の緊急事態宣言もあり得るとの見解を示しました。
2.国会報告の法的義務なし
これまで2度発出されている「緊急事態宣言」では、政府は国会に報告する義務が法律で定められています。
一方、まん延防止措置は緊急事態宣言に準ずる内容ですが、国会への報告義務は法律に定められていません。新型コロナ特措法の改正時の付帯決議で「国会に速やかに報告すること」が要請されましたが、法的拘束力はありません。
まん延防止措置の期間は最大で6カ月。適用する地域を変更したり、期間を延長する場合にはその都度「公示」することが定められています。ただ、この場合も国会への報告義務はありません。
延長は6カ月以内で可能ですが、延長回数に制限はありません。
3.いま、東京でなにが起こっているのか?
都内の変異株の発生割合(東京都健康安全研究センターによる調査)
東京都福祉保健局
現在、東京都内では人の流れの増加や新型コロナウイルスの変異株の影響で新規感染者が急激に増加しているとみられます。
国立国際医療研究センターの大曲貴夫・国際感染症センター長は8日の都モニタリング会議で「第3波を超えることが危惧される。直ちに対策を講じる必要がある」と危機感をつのらせました。
都内の新規感染者は9日までに3日連続で500人を超えました。都健康安全研究センターの調査によると、3月29日〜4月4日の期間で検査した検体のうち「N501Y変異株」が32.3%を占めることがわかりました。緊急事態宣言が解除された直後の3月22日〜28日の週と比べて約4倍にのぼります。
都はこのN501Y変異株について「感染力や病原性、免疫逃避能が従来の株よりも高いといわれています」と説明。警戒を強めています。
4.まん延防止措置の範囲は?
小池知事は9日午後の定例会見で適用範囲について、23区と多摩地域6市(立川・八王子・武蔵野・府中・調布・町田)で国と調整していると明かしました。
Business Insider Japan/白地図ぬりぬり
“都道府県”が単位の緊急事態宣言とは異なり、まん延防止措置の対象範囲は基本的には“市区町村”単位になります。
どこを対象地域とするかは各都道府県の知事が指定します。
小池知事は9日午後の定例会見で適用範囲について、23区と多摩地域6市(立川・八王子・武蔵野・府中・調布・町田)で国と調整していると明かしました。
5.お店の営業時間は? 制限や義務、ペナルティは?
適用地域の都道府県知事は、各事業者に対して営業時間の短縮要請(時短要請)ができます。
要請に従わなかった事業者に対して、知事は「命令」を出すことも可能。立ち入り検査や店名の公表もできます。
ただし、緊急事態宣言とは異なり、休業要請はできません。
住民に特定区域との行き来や特定の業態店舗への出入りの自粛要請、店舗への見回り、イベント開催の制限なども可能になります。大阪府ではマスク未着用者の入店禁止や飲食店のアクリル板設置の義務化などが実施されています。
もし、知事の「命令」に従わなかったり、立ち入り検査や報告徴収を拒否した事業者には20万円以下の過料が課されます。なお、緊急事態宣言下では30万円以下の過料となっています。
まん延防止措置が適用された場合、都は指定地域の飲食店に対して営業時間を午後8時までに短縮するよう要請する見通しです。
つまり、適用地域では緊急事態宣言下と同じような状況になると見られます。
東京都では緊急事態宣言の解除からわずか3週間——。3月に解除された2度目の緊急事態宣言下では、終盤に感染者数が下げ止まり、宣言の限界が見えたという指摘もありました。
まん延防止措置にどこまで効果があるのか。今後の感染状況の推移に注目が集まります。
(文・吉川慧)