パキスタンのイムラン・カーン首相。
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- パキスタンのイムラン・カーン首相は、レイプは女性の服装のせいだと示唆した。
- 「下品な振る舞いが増えれば、結果を伴うだろう」とカーン首相は4月5日に述べた。
- カーン首相の発言は大きな批判を呼んでいる。
パキスタンのイムラン・カーン首相がレイプ事件の増加は女性の服装のせいだとし、"被害者叩き"ではないかと批判を呼んでいる。
ニューヨーク・タイムズによると、カーン首相は4月5日のテレビインタビューで「全ての男性が意志の力を持っているわけではない。下品な振る舞いが増えれば、結果を伴うだろう」と語り、激しい反発を招いている。カーン首相は、女性が「パルダ」 —— からだを隠すような控えめな服を着て、男性との生活空間を隔離する習慣 —— に従うべきだと主張した。
人権団体やカーン首相の元妻もこの発言を非難している。
ロイターによると、人権団体「パキスタン人権委員会」は、カーン首相のコメントは「レイプがどこで、なぜ、どのようにして起きるかについて困惑するほどの無知をさらしただけでなく、被害者に責任を負わせるものだ」と指摘した。
イギリスの資産家の娘でカーン首相の元妻ジェマイマ・ゴールドスミス(Jemima Goldsmith)さんも、ツイッターでカーン首相のコメントを非難した。
「昔、サウジアラビアでアバヤとニカブを着た年配の女性が、外出時に若い男性たちにあとをつけられ、嫌がらせされたと嘆いていたのを思い出しました。彼らを追い払う唯一の方法は、顔の覆いを取ることでした。問題は女性の服装ではありません!」とゴールドスミスさんはツイートした。
また、別のツイートでは「これが間違った引用もしくは間違った翻訳であることを願っています。わたしの知っていたイムランはかつて『女性ではなく、男性の目にベールをかけろ』と言っていたのです」とも述べた。
パキスタンの首相官邸は、首相のコメントは文脈から切り離され、誤って解釈されたものだとの声明文を公表した。「首相は、我々のレイプに対する厳しい法律だけでは性犯罪の増加を食い止めることはできないと話した。誘惑にさらされる機会を減らすことを含め、社会全体がともに戦わなければならない」と声明文にはある。
パキスタンでは2020年、さびれた高速道路でレイプの被害に遭った女性について、ラホールのある警察官が女性にも責任があると発言し、数千人が街頭を埋め尽くした。この抗議の声を受け、パキスタン政府はレイプを犯した男性に化学的去勢を科すことのできる法案を可決した。それでもパキスタンではレイプに対する有罪判決はまれだ。カラチに拠点を置く非政府組織「War Against Rape」によると、パキスタンで性的暴行またはレイプ事件で有罪判決が出るのは3%以下だ。
人権団体は、パキスタンではレイプは"過少報告されている犯罪"だと指摘している。被害を申し出た女性が追放されたり、犯罪者のように扱われることがその大きな理由だという。
国際NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチは、パキスタンでは「レイプやいわゆる名誉殺人、酸攻撃、家庭内暴力、強制結婚といった女性や少女に対する暴力が深刻な問題であり続けている」と言い、「パキスタンの活動家たちは、毎年約1000人が"名誉"のために殺されていると見ている」と付け加えた。
(翻訳、編集:山口佳美)