無料のメールマガジンに登録

平日17時にBusiness Insider Japanのメルマガをお届け。利用規約を確認


減収減益でも「強靭さ」見せたセブン&アイ本決算。実態読み解くキーワードは「海外コンビニ」「ガソリン」「客単価」

kawamura_seven_2020FY_graph_top

セブン&アイ・ホールディングスがコロナ一色だった2021年2月期の通期決算を発表した。

撮影:今村拓馬

コンビニ大手セブン-イレブンを傘下に置くセブン&アイ・ホールディングスが2021年2月期(2020年3月1日〜2021年2月28日)の通期決算を発表した。

新型コロナの感染拡大以降、巣ごもり需要を受けてオンライン通販(EC)の好調が伝えられる一方、リアル店舗は売上減に苦しむ…という構図がほぼ1年続いたことから、セブン&アイのような多数のリアル店舗を抱える小売り企業の決算悪化は容易に想像がつく。問題はその「下落幅」だ。

結論から言えば、通期決算は2ケタ規模の減収減益。売上高に相当する営業収益は5兆7667億円(前期比13.2%減)、営業利益は3663億円(同13.7%減)、純利益が1792億円(同17.8%減)だった。

kawamura_seven_2020FY_graph_1

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算短信

セブン&アイは国内外のコンビニ、スーパーや百貨店、金融など多様な事業体をグループ内に抱え、トータルで減収減益の決算を「コロナで業績ガタ落ち」と見るのか、「強靭なグループ力で何とか持ちこたえた」と見るのか、非常に難しい。

いずれにしても、セグメント別に売上高と営業利益の増減(前期との比較、下のグラフ)を先に見ておくと、今回の「コロナ決算」の全体像を把握しやすい。

kawamura_seven_2020FY_graph_2

営業収益(売上高に相当)が左、営業利益が右のグラフ。前期比で増えたのはスーパー事業の営業利益のみ。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算説明資料

上のスライドからわかるように、売上高を大きく引き下げた主な要因は、5484億円減の海外コンビニ事業と、1524億円減の百貨店事業(=西武・そごうなど)。

また、営業利益については、223億円減の国内コンビニ事業と、182億円減の専門店事業(=赤ちゃん本舗やロフトなど)が足を引っ張った形だ。

海外コンビニ事業については、5500億円近い巨額の売上減を記録しているが、その理由は下の内訳を見ると明らかで、ほとんどをガソリン売上の減少額(5425億円)が占める

kawamura_seven_2020FY_graph_3

海外コンビニ事業の決算概要。1割以上減らした指標は、実は「ガソリン売上」のみ。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算補足資料

それほどの売上減にもかかわらず、営業利益の減少は前期比わずか39億円にとどまった。下のスライドに示された営業利益の内訳からわかるように、ガソリン販売量やコロナ対策を含めた販管費などによる利益の減少を、プラス582億円という(1ガロン当たりの)荒利の増加が補った

kawamura_seven_2020FY_graph_4

海外コンビニ事業の営業利益内訳。中央で目立つのがガソリン荒利の増加分。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算説明資料

2020年は、コロナによる行動制限の影響をまともに受け、「このままいけば世界中の貯蔵タンクから石油があふれ出す」(市場関係者)在庫過剰の状況のもとで歴史的な原油価格の下落が発生。それはセブン&アイにとってみれば、歴史的なガソリン仕入れ値の下落でもあり、結果として大きな利益捻出につながったわけだ。

kawamura_seven_2020FY_graph_5

左は原油価格(WTI=ウェスト・テキサス・インターミディエイト、代表的な原油先物価格)、右(緑の棒グラフ)は荒利の前年比推移。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算説明資料

ガソリン販売の荒利増加のインパクトがいかに大きいかは、以下の表を見ると鮮明になる。

kawamura_seven_2020FY_graph_gas

ガソリン販売額は前年比マイナス25.6%と大きく減ったが、荒利は歴史的原油安を背景にコロナ以前の1.4〜1.5倍まで増えた。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算補足資料

国内コンビニ事業は「客単価の下落を抑制できた」

一方、セブン&アイにとって看板事業とも言える、国内コンビニ事業の業績はどうだったか。

売上高は前出の内訳にあるように504億円減(前期比5.2%減)、営業利益も223億円減(同8.7%減)で見るべきところがなかった。国内コンビニ事業はセブン&アイにとって利益の稼ぎ頭だけに、悩ましい問題だ。

kawamura_seven_2020FY_graph_6

赤枠内が国内コンビニ事業の売上収益(売上高に相当)と営業利益。緑枠内はセブン&アイ各事業の営業利益。国内コンビニが突出しているだけに、その欠損は痛い。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算説明資料

下のスライドからわかるように、営業利益を引き下げた主因は売り上げの落ち込み(321億円減)だ。販管費の削減に取り組み、コストはここ5年で最もスリムな状態。それでも、売上減の半分(145億円)しかカバーできなかった。

kawamura_seven_2020FY_graph_7

国内コンビニ事業について、左は営業利益の内訳、右が直近5年間のコスト(販管費)内訳の推移。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算説明資料

店舗の売り上げはすでにコロナ以前の水準に戻りかけているし、おそらくは行動制限の影響で近場のコンビニで買い物を済ませる客がいるからだろう、客単価はコロナ以前より上がっている。が、俯瞰して見ると、根本的に客足が減ったダメージは隠せない。

kawamura_seven_2020FY_graph_8

左のグラフに注目。国内コンビニ全店舗の客単価(赤)、売り上げ(橙)、客数(緑)。断続的にくり返される行動制限の影響か、客足が回復しない。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算説明資料

セブン&アイと同じ4月8日、国内業界3位のローソンも通期決算を発表している。ローソンの国内コンビニ事業で目についたのは客単価の落ち込みで、平均日販は前年の53万5000円から48万6000円へと4万9000円も減っていた

その点、セブン&アイは65万6000円から64万2000円へと1万4000円の下落にとどまり、「持ちこたえた」と言える面もある。

kawamura_seven_2020FY_graph_9

セブン&アイの国内コンビニ事業の客単価推移。大きく減らすことなく持ちこたえている。

出所:セブン&アイ・ホールディングス 2021年2月期決算補足資料

「セブンもローソンも他の小売り事業者と比べて明暗が分かれた」との見方も出ているが、こうした細部を見ていくと、セブンの強靭な利益体質を他のコンビニと並べて考えるのは正しくないように思われる。

(文:川村力)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

Popular

あわせて読みたい

新着記事

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み