言うまでもなく、TikTokはアメリカのティーンの間でトレンドやバズ現象を生み出す震源地となっている。
TikTokから生まれたトレンドは、ダンスや歌に限らない。ティーンの好み——とりわけ、美容関連商品やスキンケアにも影響を及ぼしているのだ。
パイパー・サンドラーが年2回発行している報告書「Taking Stock with Teens(ティーンの実態調査)」の2021年春版によると、TikTokは「こうした嗜好にかなり影響している」という。
ロレアル傘下のスキンケア・ブランド、セラヴィ(CeraVe)を例にとって見てみよう。
アメリカのティーン7000人への調査をまとめた今回の報告書によると、セラヴィは現在、ティーンの間で一番人気のスキンケア・ブランドとなった。2019年には10位だったが、2020年にいきなりトップに躍り出た格好だ。
確かに、皮膚科専門医が開発したセラヴィは長い間、ドラッグストアの定番商品ではあった。ところが2020年になって、これが飛ぶように売れ始める。ティーンや20代が、香料が入っていたり、刺激が強かったりするスキンケア商品をやめ、もっと肌にやさしく、手の届く価格のものに乗り換えたのだ。その筆頭となったのがセラヴィという訳だ。
Insiderが2020年8月にセラヴィを取材した際、同社は売り上げが急増したと語っている。
その背景にはもちろん、TikTokが関係している。TikTok内で新世代のスキンケア・インフルエンサーが生まれ、680万人ものフォロワーを誇るハイラム・ヤーブロ(24)のようなクリエイターが披露する知識に、何百万という人が群がったのだ。中でもセラヴィは、ヤーブロがよく薦める商品の一つ。同社はヤーブロの元スポンサーでもある。
TikTok追い風にした4ブランド
とはいえ、TikTokがきっかけでブームになったブランドは、セラヴィだけではない。
ジ・オーディナリー(The Ordinary)は、2019年の時点では、アメリカのティーンが好きなスキンケア・ブランドのトップ10圏外だった。しかし今や4位にまで順位を上げ、2020年秋以降この順位を維持している。同ブランドはセラヴィ同様、ヤーブロやヤング・ユーのようなTikTokのスキンケア・インフルエンサーの間で、カルト的な人気を誇っている。
e.l.f.は2020年秋、ティーンが好きなコスメ・ブランドとして4位から2位に浮上した。2021年春の報告書では、1位とわずか8票差だった。TikTokのマーケティング力を一足先に活用し始めたブランドの一つで、2019年10月にはオリジナル曲『Eyes. Lips. Face. (e.l.f.)』と共に、ハッシュタグを使ってキャンペーンを展開し、広くティーンに拡散されていた。
e.l.f.のCMO(最高マーケティング責任者)であるコリー・マーチソットは2020年、Insiderに対し、「TikTokの爆発的な人気のおかげで、マーケティング担当者はこれまで想像できなかったような方法でZ世代にリーチできるようになりました」と語っていた。
モーフィー(Morphe、6位)とフェンティ・ビューティ(Fenty Beauty、9位)もまた、TikTokでかなりのフォロワーを抱える(2021年4月現在、モーフィーは100万人、フェンティ・ビューティ78万5000人)。モーフィーは2020年以降、TikTokのスター、ダミリオ姉妹(チャーリー・ダミリオとディクシー・ダミリオ)とコラボレーションを展開している。
Instagram以上の影響力
TikTokは他の面でもリードしている。パイパー・サンドラーの調査で、ティーンの好きなソーシャルメディアの2位に選ばれたのだ。1位のSnapchatには約1%ポイントという僅差で及ばなかったが、2020年秋の調査では、Instagramを追い抜き3位へと押しやっている。
パイパー・サンドラーの調査から、ティーン女性の約86%が、コスメブランドや美容トレンドを追うのにインフルエンサーを頼りにしていることが分かった。この割合はここ数年で堅調に増加しており、ティーンの購買意思決定に対する影響力は、友人からの口コミ(69%)、ブランドそのもの(35%)、雑誌(14%)よりも大きくなっている。
また報告書によると、アメリカのティーン女性のスキンケア支出額も増えている。
ティーン女性は、2020年春から2021年春までの1年間でスキンケア支出に107ドル(約1万2000円)を費やしており、前年同期比で6%増。コスメへの支出額は17%減となったが、ティーンの支出全体で見ると、2020年秋から1%増加する形となっている。
(翻訳・松丸さとみ、編集・野田翔)