デジタル人民元が表示されたスマートフォン。
Reuters
- 中国は、デジタル通貨を普及させる主要経済国で初めての国になった。
- デジタル人民元は、世界の金融システムを迂回することになるだろう。
- 長期的には米ドルの地位が脅かされる危険性があると警告する専門家もいる。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、中国が主要国初となる中央銀行が管理するブロックチェーンを使ったデジタル通貨の導入を開始した。このプロジェクトは2014年に研究が始まり、7年の歳月をかけて完成された。
デジタル人民元は政府主導の仮想通貨で、通貨のすべての動きを追跡できるように設計されている。例えば、誰がどこで何を購入したのか、その詳細を国が完全に把握できるようになるとFXStreetが報じている。
これは、第二次世界大戦以来、アメリカドルが支配してきた国際金融システムとは関連付けられていない通貨だ。デジタル人民元が目指しているのは、より中央集権的な管理を行い、流通している現金の一部を置き換えることだとCNBCは報じている。また、国内外での取引をより早く、低コストで行うことも可能にする。
WSJによると、抽選方式で選ばれた75万人が、アプリを使ってオフラインとオンラインの両方でデジタル人民元を使えるようになったという。スターバックスやマクドナルドといった飲食大手も、この新通貨をいち早く受け入れたと報じられている。
中国は、デジタル通貨を導入した2番目の国であり、主要経済国の中では初めての国となっている。ブルームバーグによると、最初に導入したのはバハマだった。
CNBCによると、デジタル人民元の流通は2層構造のシステムで行われる。まず中央銀行である中国人民銀行(PBOC)からデジタル人民元が商業銀行に配布され、商業銀行はそれを消費者に届ける責任を負うことになる。
2層構造にすることで中央銀行と商業銀行が競合することがなく「金融部門における『銀行離れ』を回避」できるとPBOCが述べたとCNBCは報じている。
この仮想通貨はサイバースペースに保管される。利用できるスマートフォンの画面や対応するカードには、人民元紙幣を模した毛沢東の肖像が描かれている。また、支払いはインターネットに接続していなくてもできる。
デジタル人民元は、すべての人に支持されているわけではなく、アメリカドルの将来を脅かす可能性があると考える人もいると、MarketWatchが指摘している。
WSJでは、デジタル人民元を「アメリカの権力の柱を揺るがしかねない新たな通貨の誕生」とする特集記事を組んだ。その中で、国際通貨基金(IMF)の筆頭副専務理事だったジョン・リプスキー(John Lipsky)は「ドルを脅かすものはすべて、国家安全保障上の問題であり、デジタル人民元は長期的に見ればドルを脅かす存在だ」と述べた。
デジタル・ドルが登場するということになるのだろうか。
それに対し、連邦準備制度理事会(FRB)の議長であるジェローム・パウエル(Jerome Powell)は連邦議会で、デジタル・ドルの発行を検討しているところだと明らかにし、「我々にとって優先度の高いプロジェクト」であると述べた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)