JAXA/NASA
JAXAの野口聡一宇宙飛行士が宇宙へ旅立ってから5カ月が経った。
地球への帰路につく4月29日まで、あとわずかだ。
スペースXが開発した有人宇宙船「クルードラゴン」の記念すべき本格運用1号機(Crew-1)で宇宙へと旅立った野口宇宙飛行士。
国際宇宙ステーション(ISS)では、NASATVによる船外活動のLIVE中継をはじめ、自身も日本の実験棟「きぼう」での実験の様子やISSからの景色をTwitterに投稿するなど、積極的な情報発信の姿勢も目立つ。
その様子からは、400km上空での宇宙ライフを満喫していることがよくわかる。
野口宇宙飛行士に「余裕」が感じられるのは、宇宙飛行が今回で3回目だからだろうか。国際宇宙ステーション(ISS)への滞在も2度目であり、地上との中継では「ISSに帰ってきた」とも語っていた。
今回のISSへの滞在では、再生医療に関する実験や、アジア太平洋各地から集められたハーブの種子の生育実験、7時間弱にもわたる船外活動など、重要なミッションを数多く行っている。
野口宇宙飛行士が宇宙で進めてきたミッションの数々を画像とともに紹介しよう。
2020年11月15日午後7時27分(フロリダ現地時間)、野口宇宙飛行士ら4名の宇宙飛行士はアメリカ フロリダ州のケネディ宇宙センターから、スペースX社のファルコン9ロケットで飛び立った。
JAXA/NASA
野口宇宙飛行士らが乗った宇宙船クルードラゴンは、打ち上げから27時間後に、ISSにスムーズにドッキング成功。スペースX社の管制室では拍手が起こった。約2時間後にはハッチが開かれ、野口宇宙飛行士らはISSに無事に乗り込んだ。
ドッキングの様子。
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野口宇宙飛行士は2021年の年明けも宇宙で迎えた。ISSの窓、キューポラから撮影された初日の出が美しい。なお、ISSの時刻は世界の時刻の基準であるグリニッジ標準時をベースにしている。
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ISSには定期的に食料や衣服、実験機材などが搭載された補給船が届く。補給船はISSのロボットアームでキャッチされたあとで、連結される。野口宇宙飛行士はISSのロボットアームを操作して補給船をキャッチした。
2021年2月22日に実施。
3月5日には日本人最多となる4回目の船外活動を行った。宇宙空間での作業は約7時間にも及んだ。宇宙服を着ると、水は飲めてもご飯は食べられないので、事前に高カロリーの食事をとるそうだ。
野口宇宙飛行士とキャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士は、新型太陽電池アレイ設置に向けた架台取り付け作業を完了した。
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この船外活動の様子は、臨場感あふれる映像でも見ることができる。野口宇宙飛行士は、自身のチャンネルや「KIBO宇宙放送局」での動画配信を積極的に行っている。
JAXA野口宇宙飛行士YouTubeより引用
「きぼう」日本実験棟のエアロックから超小型衛星を放出。この日は4回に分け、合計8機の超小型衛星を放出した。
ISSでは様々な実験が行われている。そのひとつは、ヒトiPS細胞から作製した肝芽(肝臓の基となる細胞)の培養実験だ。ISSの微小重力下では、細胞が地上よりも立体的に成長しやすいと考えられている。地上で培養された細胞と比較し、再生医療研究に役立てる。
無重力環境でハーブを種子から育てるプロジェクトも実施。バジルが日々育っていく様子はTwitterでも紹介されていた。30日目までに大きく成長したバジルは、この後冷凍されて地球に持ち帰られ、細胞の様子などが研究される。
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30日目のバジル。
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将来、月や火星を目指すならば、ISSよりもずっと長距離・長期間の宇宙飛行・滞在が必要となる。宇宙で自給自足できるようになることはとても重要だ。
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ISSに滞在する6名の仲間たちとの食事はリフレッシュにもなっている。おにぎりやカレー、サバの味噌煮など40種類以上のメニューが「宇宙日本食」として認定されており、他国の宇宙飛行士にもおいしいと好評だそうだ。
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野口宇宙飛行士はISSから見えるさまざまな光景を毎日Twitterで紹介している。起床から就寝まで宇宙飛行士は分刻みのスケジュールで活動しているので、Twitterでの発信には就寝前の自由時間を使っている。
関東の街の明かりがはっきりと見える 。
昼間の地球も美しい。ISSからは地球がすぐ近くに見えるので、不安や寂しさはあまり感じないと語る宇宙飛行士もいる。
黄砂のように、サハラ砂漠から大西洋に向かって砂が運ばれている。
4月22日には、星出彰彦宇宙飛行士がクルードラゴン運用2号機でISSへと出発する。野口宇宙飛行士が帰路につく4月29日までの1週間近く、ISSに日本人宇宙飛行士が2人いることとなる。なお、星出宇宙飛行士は、若田光一宇宙飛行士に次いで日本人2人目のISSのコマンダー(船長)を務める。
船外活動訓練中の星出宇宙飛行士。
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(文・小熊みどり)