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セブンイレブンで半年300万本のヒット商品「TOFU BAR」が生まれた理由

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2021年4月の段階で、TOFU BARにはだし味と柚子こしょう味の2種類のラインアップがある。

撮影:三ツ村崇志

セブン&アイHDが2020年11月に全国販売を開始したバータイプの「TOFU BAR(豆腐バー)」シリーズが人気だ。

開発したのは豆腐や油揚、豆腐加工品、豆乳などを製造販売する豆腐メーカーのアサヒコ。販売開始から5カ月たった2021年3月末には、300万本を突破するヒット商品となっている。

近年、タンパク源である肉の代わりとして植物性タンパク質を利用した「代替肉」や「大豆肉」などのプラントベースフードが話題になっている。考えてみれば、大豆加工食品である豆腐は「元祖プラントベースドフード」とも言える存在だ。

開発経緯や代替肉市場での立ち位置について、豆腐メーカーのアサヒコ、マーケティング部池田未央部長に聞いた。

「豆腐市場は毎年5%縮小」の危機感

アサヒコでは「TOFFU PROTEIN」というブランドを立ち上げ、大豆タンパク質を強化した「TOFU BAR」に加えて、2021年3月から肉に近い食感と味を提供する豆腐のお肉「MEATOFFU」シリーズ、さらにはごはんの代わりに食べられる「TOFFU RICE(豆腐のごはん)」シリーズをラインアップしている。

MEATOFFUシリーズは近年注目されている代替肉に近いアプローチだが、TOFU BARとTOFFU RICEは豆腐であることを全面に押し出している。

池田氏は「2018年夏に代替肉の市場が進んでいた米国を視察した際に、お肉を食べる人はもちろん、インポッシブルバーガーのような代替肉を食べる人もいて、食の選択肢が豊富にあることに驚きました」と開発の経緯を語る。

日本の豆腐市場は毎年売上が5%ほど低下していることもあり、豆腐メーカーとしての危機感もありました。豆腐の植物性タンパク質は体に良いものなので、このまま食べてもらう機会を失うのは惜しい。そこで、多くの人たちに食べてもらいたい、食卓に上りやすい形に進化させて提案したというのがTOFU BARです」(池田氏)

サラダチキンの代わりにお豆腐を

豆腐バー

TOFU BARを食べてみると、一般的な豆腐に比べて歯ごたえがあった。サラダチキンのような肉の繊維感はない。腹持ちは良さそうだ。

撮影:三ツ村崇志

TOFU BARはセブン-イレブンのサラダチキンバーを模した商品だ。

「豆腐の場合は皿に盛り付けてネギと生姜と醤油を……といったように、食べるにはちょっとした煩わしさがありました。バータイプだと皿も箸も薬味もいらず、いつでもどこでも豆腐を食べられます。それでいてタンパク質は絹ごし豆腐の2.7倍あります」(池田氏)

アサヒコはもともと、弁当や総菜の原料として豆腐や豆乳をセブンアイHDに納入していた。一般向け商品としてTOFU BARのプロトタイプををバイヤーに持ち込んだところ、担当者が興味を持ったという。

コンビニでは、サラダチキンが健康食としてヒットしている。セブンイレブンとしてもSDGsに配慮した商品を提案したいという狙いもあった。植物性タンパク質でできているTOFU BARの提案は、渡りに船だったのだろう。

ただし、そのままでは商品にならないとも指摘されていたという。

「豆腐は90%が水分なので、食べると水が垂れてしまいます。サラダチキンの購入者が買うだろうからもっと硬く、液だれしないようにしなければならないということで、開発に1年ほどかかりました」(池田氏)

結果、牛肉や豚肉、鶏肉と比べると少ないもののタンパク質量は100gあたり約14.7g含まれ、肉と違ってコレステロールがゼロとヘルシーな食べごたえもある健康食としてのTOFU BARが誕生した。

豆腐を食べない20〜40代男性にヒット

フレッシュネスバーガー

フレッシュネスバーガーの大豆肉を使ったハンバーガー。ハンバーガー業界では、代替肉の利用が目立つ。

撮影:三ツ村崇志

米国では、肉の味に寄せるために、代替肉に添加物などが加えられることが多い。また、油を搾り取った後の大豆「脱脂大豆」を原料にした場合、大豆特有の匂いなども課題とされている。

一方、TOFU BARはあくまでも豆腐だ。

「TOFU BARもMEATOFFUも、大豆から豆腐を作る工程でいったん豆腐にします。豆乳の濃度や、にがりを入れる量やタイミング、固めてから絞っていく工程での絞り方を変えることで、サラダチキンのような食感と効率的にタンパク質を摂取できるタンパク質量になっています」(池田氏)

基本的に豆腐そのものだ。

ただし、普通の豆腐の購買層は60代、70代のシニア女性が中心であるのに対して、TOFU BARシリーズの購入者は20代から40代の男性が多いという。

「普通の豆腐はシニアの方がメインで、若い人にあまり食べていただいていないということもあり市場がシュリンクしている状況です。しかしTOFU BARの購入者は35〜36歳の男性が中心で、男性が6割、女性が4割くらいです。

マラソンなどの運動の後に食べられていたり、朝ご飯の代わりにかじっている方、晩酌の時にヘルシーなおつまみとして食べられている方もいるようです」(池田氏)

サラダチキンなどを購入していた健康志向の消費者に受け入れられ、普通の豆腐とカニバリ(共食い)せず、売り上げを伸ばすことができていると見て良さそうだ。

大豆ミート流行の追い風、アメリカ市場では「豆腐人気」に

アメリカのスーパーの豆腐売り場

アメリカ・カリフォルニア州のスーパーマーケット。豆腐が所狭しと並べられている。

Shutterstock/Pictures_n_Photos

アサヒコは2014年に世界の豆腐市場シェア1位の韓国プルムウォンの傘下に入っており、グループとしてアメリカでも豆腐製品を販売している。

近年欧米を中心に代替肉市場が盛り上がりを見せていることもあり、豆腐そのものの売れ方も日本国内とアメリカでは異なる動きを示していると池田氏は語る。

「日本では普通の豆腐の需要が下がっているので、今の食生活に合わせた形で豆腐を進化させようとTOFU BARを作りましたが、米国は豆腐自体もすごく伸びている状況です」(池田氏)

プラントベースフードとしての注目の高まりはもちろん、2020年からのコロナ禍では、健康志向の高まりの追い風か豆腐の売上も伸びたという。

池田氏は、豆腐の魅力を“発見”する米国の人々の動きを見て、豆腐の可能性の広がりについてこう語った。

「日本では味噌汁や冷や奴くらいしか食べられていない状況で、日本人は豆腐の良さに気付いていないと思うんです。でも、逆に米国では『TOFUっていいよね』と豆腐の良さが知られています。米国では豆腐に対して何の先入観もないので、スムージーのようにジュースに入れて飲むなど、いろいろな食べ方をしていて衝撃的でした。


日本人の足元にあるものの良さに気付いていないと感じてTOFU BARの開発をスタートしたという経緯があるので、販売を拡大させながら、たまには白いお豆腐にも戻ってきて、『冷や奴ってやっぱりおいしいし体にいいよね』、『お味噌汁もほっとするね』など思っていただき、最終的には豆腐の市場の引き上げられたらと考えています」(池田氏)

アサヒコの2021年度の国内の売上高は約100億円になる想定で、そのうち約7%がTOFU BARやMEATOFFUなどの豆腐肉商品と見込んでいる。

「それを2025年までに全体の3割くらいまで伸ばすことを目指しています。TOFU BARは最初の突破口を開いた商品だとは思いますが、実はまだこの後にも新商品をいくつか考えています。味のバリエーションだけでなく、機能感、形態なども、2025年に向けたパイプラインを作っています」(池田氏)

(文・安蔵靖志 取材・三ツ村崇志

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