米バイオ医薬品モデルナ(Moderna)のウェブサイトより。
Screenshot of Moderna website
米ファイザー(Pfizer)/独バイオンテック(BioNTech)、英アストラゼネカ(AstraZeneca)に次いで、日本で3社目となる新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認申請を行っている米モデルナが、抗体の持続期間に対する追加分析結果を発表した。
2回目接種のおよそ6カ月後について、90%以上の高い有効性を確認し、さらに重症化の予防に限っては95%以上の有効性が示された。同データは世界的な医学雑誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」でも公表された。
最新分析結果の公表とともに、非常に興味深い1枚の資料を提供している。そこから読みとれる情報は、大まかに以下の3点だ。
米バイオ医薬品モデルナ(Moderna)が4月13日(現地時間)に公開した現状を示す資料。資料タイトルに「今日までに1億3200万回分」とあるので、4月中(12日まで)に1600万回分を販売した計算になる。
Moderna
まず、モデルナはワクチンの供給を開始した2020年12月以降、2021年3月末までの4カ月間に、累計1億1600万億回分を出荷している(販売収益を計上したものに限るため、米生物医学先端研究開発局[BARDA]向けに提供した400万回分は含まれない)。
うち、アメリカ国内向けに供給されたのが1億200万回分で、国外向けは1400万回分。国外向けは2021年2月までわずか300万回分に限られていたが、翌3月には国内向けの約4分の1までに増えている。
次に、資料ではモデルナ製ワクチンの供給価格が(すでにさまざまな形で報道はされているが)明示された。アメリカ国内向けに販売された8800万回分(資料ママ)の平均価格は「1回分で15.4ドル(1650円前後)」。
競合するファイザー/バイオンテックがアメリカ政府と結んだ販売契約は「2回分で39ドル」(ロイターなど)、モデルナ製ワクチンについて販売価格を「2回分で32ドル」(フォーブス)といった報道があるが、今回の資料で、少なくとも2021年第1四半期(1〜3月)のアメリカ国内向け平均価格は「2回分で30.8ドル」とわかった。
また、国外向けに販売された1400万回分については、1回分の平均価格が22ドル(約2350円)から37ドル(約3950円)と契約数量に応じてかなりの幅があることも読みとれる。
欧州連合(EU)向けの販売価格については、ベルギーのメディアが(誤ってツイッターに投稿された)契約数量や金額のリストの中身を報じている(12月17日時点)。それによれば、モデルナ製ワクチンの契約価格は「1回分で18ドル」であり、資料で示された平均価格に比べても妥当な価格水準と思われる。
資料から読みとれる最後の点は、モデルナ製ワクチンの供給先だ。すでに指摘したように、まだまだアメリカ国内向けの供給が圧倒的な割合を占めるなかでも、真っ先に販売契約の締結に動いた国々がそれぞれの国旗で記されている。
資料右の上から順番に、EU、カナダ、スイス、イスラエル、カタール、イギリス、シンガポールだ。
世界的に見ても高い接種率を誇るイスラエルのほか、スイスやカタール、シンガポールといった1人あたりGDPランキングで世界トップクラスの小規模国家が、迅速なワクチン確保に動いていたことがわかり印象的だ。
先に紹介した海外向け販売価格の高額側(37ドル)はこうした小規模富裕国家の小ロット購入に相当するとみられる。
なお、日本向けのモデルナ製ワクチンについては、武田薬品工業が輸入元となって2021年3月に製造販売承認申請を行っている。
4月中にも欧州の製造拠点から日本に到着する予定で、厚生労働省は5月中にも薬事承認を出す方向で検討している模様だ(田村憲久厚労相、NHK日曜討論での発言)。
(文:川村力)