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マイナス36度! カメラマンが捉えた、雪と氷に覆われたロシアのゴーストタウン

凍った室内

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

  • 写真家のマリア・パッサー(Maria Passer)さんはロシアのボルクータ郊外のゴーストタウンで3週間を過ごした。
  • かつて炭鉱でにぎわったこの街に人けはなく、今は使われていない共同住宅が氷に覆われた状態で残されている。
  • こうした人けのない村の美しさと悲しみの両方を捉えることが自身の目標だったと、パッサーさんはInsiderに語った。

写真家のマリア・パッサーさんはかつてにぎわった、今は人けのない街の姿を捉えるために、ボルクータ郊外の氷に覆われた地域を訪れた。

建物

ロシア、ボルクータ郊外の人けのない建物。

Maria Passer

北極圏の北側に位置する炭鉱の街ボルクータの周辺には小さな町や村がある。

現実離れした景色を捉えるため、マリア・パッサーさんはモスクワにある自宅から鉄道で2日をかけて現地入りした。

パッサーさんは写真家で友人のラナ・セイター(Lana Sator)さんからこの街のことを聞いた。彼女の撮った写真を見て、パッサーさんは自分もこの場所を訪れてみたいと考えた。


ボルクータの美しさと悲しい歴史が自らの好奇心に火をつけ、こうした相反する感情を写真で捉えることを目指したのだと、パッサーさんはInsiderに語った。

アパート

炭鉱労働者やその家族がかつて暮らしていたアパート。

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

パッサーさんは、都会を見て回ることに深い興味があるという。ボルクータの美しさと悲しい歴史がパッサーさんの関心を引き、この村を撮りたいと思わせた。

「こうした見捨てられた場所は悲しくて、暗くて、憂鬱な場所かもしれませんが、それでも美しく、刺激をくれる場所かもしれません」とパッサーさんはInsiderに語った。

こうしてパッサーさんと2人の友人は、ドローンや写真機材などをかばんに積めて、ロシアの北極圏を目指した。


現地に到着し、パッサーさんはこの街の過去についてさらに学んだ。この人けのない街には、かつて高収入の仕事がたくさんあった。

部屋

アパートの多くの部屋には、今も元住民の持ち物が残っている。

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

この街は、グラグと呼ばれる強制労働収容所をもとに、1930年代に作られた。グラグではスターリン統治下で収容者が強制的に石炭を採掘させられていた。

その後、この地域には実入りの良い仕事がたくさんあったため、各地からボルクータに人々が移ってきた。

住民が増えたことで、炭鉱労働者とその家族が生活するための町や村が次々と生まれた。


ソ連が崩壊すると、炭鉱は閉鎖された。近くで仕事が得られる見込みはなく、人々は街を去って行った —— 人けのない建物を残して。

建物

雪と氷に覆われた建物。

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

1991年にソ連が崩壊すると、多くの炭鉱が閉鎖され、炭鉱労働者たちは職を失った。

ボルクータはロシアの中でも孤立した地域だったため、失業した炭鉱労働者たちは新天地で新しい仕事を見つけざるを得なかった。

ニュースサイト「The World」によると、これ以降、100万人がこの北極帯を去ったという。


ただ、村は完全に無人ではないと、パッサーさんは言う。今でも、わずかながら共同住宅で暮らしている人たちがいる。

住民

Maria Passer

街の大部分は人けがないものの、わずかながら残っている人たちもいる。The Worldによると、共同住宅の約100世帯が今も使われているという。

ボルクータ郊外の村に今も住んでいる人たちは、必要に迫られてというケースが多い。


パッサーさんは、多くの人々がここを去りたがっているものの、自宅が売れないため、引っ越しをするお金がないのだと言う。それで結果的にここにとどまっているのだ。

階段

中には、階段が雪で覆われ、手すりから氷柱が垂れている建物も。

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

多くの人々は、住宅補助プログラムで再定住できるのを待っている。自宅は売れず、引っ越しをするのに必要なお金もないからだ。

こうした村に引っ越して来たい人はいないため、家や共同住宅を売るのはほぼ不可能だとパッサーさんは指摘した。

「ロシアのどこへ行こうと、自分のアパートを売った値段で何かを買うことはできないのです」と言う。


一方、ここでしか暮らしたことがないので、引っ越したくないという人たちもいる。

階段

Maria Passer

ここが自分たちの家だから離れたくないという人たちもわずかながらいると、パッサーさんは言う。

こうした見捨てられた共同住宅で今も暮らしている人々は、生活必需品を買うためにボルクータまで車か公共交通機関を使って行かなければならない。

ボルクータには、一般的な都市にある食料品店やレストラン、薬局、劇場、ショッピング街がある。


この村を去った人々の多くは、家具や持ち物を置いて行った。

凍った室内

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

引っ越しにかかる費用が高過ぎて、人々は必要のなくなった家具や持ち物を置いて行った。

パッサーさんはこうした空き部屋を探索し、古い写真や本、家具、おもちゃなどを見つけた。


長い年月をかけて、氷の結晶が人けのない部屋をびっしりと覆っていった。

新聞

テーブルに置き去りにされた古い新聞を雪が覆っていた。

Maria Passer

パッサーさんが現地を訪れた時、この地域の気温は約マイナス36度だった。

凍えるような寒さは、建物の階段や廊下、部屋に薄い氷や雪をもたらした。


中には、水道管が破裂し、壁や床、階段が氷だらけになっている建物もある。

室内

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

こうした建物でメンテナンスが行われることはまれで、凍えるような寒さのせいで多くの水道管が破裂したとパッサーさんは言う。

その結果、階段や部屋、廊下には氷の山ができている。


凍えるような寒さの中での撮影は大変だったと、パッサーさんは語った。シャッターを切るのに手が冷たくなり過ぎていたことや、バッテリーがすぐに死んでしまったこともあったという。

村

ボルクータ郊外の人けのない村。

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

写真を撮りに行く前、パッサーさんは暖かく過ごすためにシャツ、プルオーバー、レギンス、パンツ、コートを重ね着した。

撮影は地上と上空の両方から行った。

携帯電話とカメラのバッテリーがすぐに切れてしまうので、写真は急いで撮らなければならなかったと、パッサーさんは話した。


放棄された建物の中を歩いていると、その美しさと悲しみに衝撃を受けたと、パッサーさんは語った。

郵便受け

郵便受けには、郵便物の代わりに氷が。

Maria Passer

「最初は『わー、これはひどい』という感じでした」と、パッサーさんは人けのない共同住宅や写真、本、服といった置き去りにされたものを見た時のことを振り返った。

「でも、同時にわたしは『わー、これは驚くほど美しい』と思ったのです」


パッサーさんは、この場所の憂鬱な美しさを捉え、シェアすることを自らの目標に定めた。

階段

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

都会を探索する写真への愛に気付いて以来、パッサーさんは地下鉱山や放棄された町、防空壕といったさまざまな人けのない場所を訪れてきた。

ただ、この場所がこれまで写真を撮ってきた中で一番印象的な場所だったと、パッサーさんは話している。


写真を公開してからは、ロシア内外から反響があったという。

入口

Maria Passer/Anadolu Agency/Getty Images

パッサーさんは、自身の写真にはさまざまな反応があったと話している。

ある女性は、パッサーさんの写真が自身とボルクータで生まれ育った義父との絆を築く助けになったとパッサーさんに打ち明けたという。しかし、ボルクータが注目を集めることを全ての人が喜んでいるわけではない。

「ボルクータに住んでいる人の中には、ボルクータを憂鬱な場所として示したわたしの写真やわたしの友人の写真に失望した人たちもいることをわたしは知っています」とパッサーさんは話し、写真は街の美しさを捉えることが目的だったと付け加えた。


パッサーさんは、写真を見る人たちがあらゆるものの中に"美"を見つけられるようになることを願っていると語った —— たとえそれが悲しそうに見えるとしても、だ。

村

Maria Passer

「わたしがこうした場所を見た時と同じように、人々がこうした写真を見てくれることを願っています」とパッサーさんは話している。

「『わー、これは美しい』と『わー、これはひどい』の両方です」

[原文:A photographer captured photos in sub-zero temperatures of Russia's ghost towns, and the gloomy images show there's beauty in sadness

(翻訳、編集:山口佳美)

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