アマゾンが5月にアメリカで発売する第2世代「エコーバッド(Echo Buds)」。製品の詳細や販売戦略を記載した内部文書が流出した。
Amazon
新規商品の投入が相次ぐワイヤレスヘッドセット市場でのシェア拡大を狙い、アマゾンは「エコーバッド(Echo Buds)」の低価格化を検討してきた。
Insiderが入手した内部文書によれば、アマゾンは新型エコーバッド(コードネームは「パウエル」)を、アップルやグーグル、サムスンら競合企業が販売する製品より手ごろな価格の選択肢と位置づけ、主要ターゲットを世帯年収が5万ドル(約540万円)以下の客層にしぼり込んだようだ。
そして4月14日(現地時間)、アマゾンは満を持して新型エコーバッドの発売日を公表した(なお、内部文書には、2020年末の発売予定が2021年春まで延期されたことが記されている)。
アメリカでは5月13日に発売され(※日本では発売未定)、限定キャンペーンとして特別価格99.99ドルで予約を受けつける(通常価格は119.99ドル)。2019年に登場した第1世代モデルと比較して20%小型化、ノイズキャンセル性能は倍増。オプションでワイヤレス充電可能なモデル(139.99ドル、予約販売時は119.99ドル)も選べるようになった。
冒頭の内部文書では、バッテリー駆動時間の延長やノイズキャンセリング機能の強化といった他の機能も強調されているものの、何より手ごろな価格帯の商品であることが前面に押し出されている。
そこからは、新たなアレクサ搭載ヘッドセットの販売拡大につなげるため、価格に見合った客層に訴求していこうという戦略が垣間見える。
同時に、価格競争力のある商品を打ち出していくというアマゾンの基本戦略をあらためて確認することもできる。人気のスマートスピーカー「エコー(Echo)」シリーズをはじめとするアマゾンのハードウェアデバイスは、できる限り広く普及させるために軒並み100ドルかそれ以下の価格設定で販売してきた。
内部文書によれば、アマゾンは新型エコーバッドを発売から2年間で合計521万台販売し、そこから生まれるライフタイムバリュー(LTV、固定費を除く)が3億4900万ドル(約377億円)、内部利益率(IRR)を129%と見積もっている。
「販売ターゲットとなるのは、ワイヤレスヘッドホンを本格的に使ったことのない方、あるいは既存のアレクサ搭載製品ユーザーで、外出先でも音声対話機能を使いたいとお考えの方。
こうしたお客さまはアップルのエアポッド(AirPods)の人気を知っているものの、(1)メリットをよく理解していない(2)製品デザインが気に入らない(3)ヘッドホンに150ドル以上使いたくない、のいずれかの理由で購入をためらっている」
内部文書に記された予測データの数々
新型エコーバッドをより深く理解するため、Insiderが入手した内部文書をさらに詳しく読んでみよう。
記載されている「差別化ポイントと購入者メリット」トップリストの最初にあげられているのは「プライスパフォーマンス(価格性能比)」だ。
アマゾンは「差別化された」価格戦略を追求しており、その背景には「今後数年間」ワイヤレスヘッドセット製品の平均販売価格は「100ドル以上で推移する」との予測がある。
内部文書では、競合する製品としてアップル「エアポッド(AirPods)」、グーグル「ピクセルバッド(Pixel Buds)」、サムスン「ギャラクシーバッド(Galaxy Buds)」を具体的にあげ、それらを高価格帯の選択肢と位置づけた上で、自らはより低価格帯を狙うことで差別化を実現するとしている。
ターゲット層の分析について、アマゾンは新型エコーバッドの購入者の61%が世帯年収5万ドル(約540万円)以下で、世帯年収20万ドル(約2180万円)以上の購入者は8%にすぎないと予測しており、圧倒的に大きな割合を占める低中所得世帯を主なターゲットとして想定していることが読みとれる。
また、ターゲットについてはほかにも、テクノロジーにあまり詳しくない客層を狙っている。
予想される購入者のうち、いわゆる「アーリーアダプター」はわずかに11%で、圧倒的多数の84%が「アーリーマジョリティ」あるいは「レイトマジョリティ」になると予測。
また、購入者の多くは(平均的な客より)テクノロジーに詳しい人たちが占めることになるものの、そのなかですら「アーリーアダプター」になるのは6%にすぎないと予測している。
最後に、内部文書の核心は次の記述に凝縮されている。
「外出先でもアレクサとの快適な対話が可能になることは、お客さまにとってもちろん素晴らしいこと。しかしそれだけではなく、控えめで使い心地を重視したデザイン、優れた音質を維持したまま機能するアクティブノイズキャンセル、そしてアレクサのスマートアシスタント。これらすべてが100ドル以下で提供されてはじめて、お客さまは最初の1台としてエコーバッドを選ぶ決断をする」
(翻訳・編集:川村力)