クロアチアの首都ザグレブから16キロほどの距離に建設されるリマック・オートモビリ(Rimac Automobili)の新キャンパス。
Rimac Automobili
クロアチアの新興自動車メーカー、リマック・オートモビリ(Rimac Automobili)のビジネスは順風満帆のようだ。
しばしば「バルカン半島版イーロン・マスク」と呼ばれる創業者のメイト・リマックは現在33歳。2009年、弱冠21歳で同社を設立し、電気自動車(EV)スーパーカーの自社開発を進めつつ、他の完成車メーカーに電動コンポーネントの供給を手がけている。
リマック・オートモビリが開発中(2021年発売予定)の電気自動車(EV)スーパーカー「C_Two(シー・トゥー)」。
Rimac Automobili
グローバル規模でEVシフトが加速し、関連業界に否が応でも注目が集まるなか、リマック・オートモビリは4月12日(現地時間)、クロアチアの首都ザグレブ近郊に本社キャンパスを新設する計画を発表した。
「2013年から構想8年、ついに母国クロアチアに拠点を建設する日が来た」と創業者兼最高経営責任者(CEO)のリマックは語気を強める。
新キャンパスは現在の本社からわずか数キロ、敷地は20万平方メートル。完成後に敷地の大半を占めるのは六角形の工場。隣接するいんげん豆のような形の巨大オフィス棟には将来、2500人以上の従業員が勤務することになる。
現在、従業員は約1000人。工場と研究開発センターはこんな感じ。
Rimac Automobili
2013年に本社建設を構想。リマックCEO自身が設計事務所などと議論を重ねてきた。
右がメイト・リマック最高経営責任者(CEO)。
Rimac Automobili
そして、2023年完成を目指す新本社キャンパスのイメージが完成した。
奥の六角形が研究開発・生産棟。手前がオフィス棟。
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夜はおそらくこんな幻想的な光景に。
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オフィス棟の外観。キャンパス内の道路には紅白のゼブラマーク(試験走行に使用)。
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オフィス棟内のアトリウム。
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研究開発・生産棟の内部。VRスタジオなども完備し、1100人のエンジニアらが集う予定。
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キャンパス内の3割以上は牧草地や農地。動物たちが休憩室を覗く癒やしの風景。
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キャンパス内にはリラクゼーション、フィットネス、トレーニングなどの福利厚生施設が建設されるほか、牧草地を設けて家畜を放牧、有機野菜の栽培なども行う。レストラン、幼稚園、ホテルも付随する。
研究開発から試作、生産、事務など自動車メーカーとしてのあらゆる機能をこのキャンパスで完結させる計画。完成予定は2023年で、建設費として2億ユーロ(約260億円)を投じる。
設計は中国・広州の五つ星ホテル「LNガーデンホテル」を手がけたザグレブの設計事務所「3LHD」が担当する。
メイト・リマック(Mate Rimac)創業者兼最高経営責任者(CEO)自らが本社キャンパス建設予定地で計画を説明するムービー。
RimacAutomobili YouTube Official Channel
「リマック・オートモビリは、EVスーパーカーというニッチなジャンルのメーカーであるだけでなく、世界最大級の完成車メーカーに電動テクノロジーを提供するトップサプライヤーでもある。本社キャンパスの建設は今後10年あるいはその先の成長の基盤をつくる上で避けては通れない道だ」
リマックCEOがそう強調するように、同社はドイツのポルシェ、韓国のヒュンダイ(現代自動車)、イギリスのアストンマーチンに部品供給を行っている。ポルシェはリマック・オートモビリの筆頭株主で、同社の全部品の25%の製造委託を受ける深い関係にある(2021年3月、ポルシェは株式保有率を15%から24%に引き上げることで合意したと発表)。
リマック・オートモビリは現在の場所に製造拠点を移した2013年以降、8度の通期決算ですでに5度黒字を達成している。EVスタートアップでは常識的に考えられないことだ(例えば、テスラは2003年の創業から2020年に初の通期黒字を達成するまで実に17年かかっている)。
ブルームバーグによれば、2019年の売上高は2300万ユーロ(約30億円)、営業利益は140万ユーロ(約1億8000万円)という。
(翻訳・編集・スライドショー作成:川村力)