【国内初】電動キックボード、4月下旬にシェアリングサービス開始へ。それでもLuup代表が「実は最適ではない」と語る真意

機体

電動キックボード。

撮影:三ツ村崇志

いよいよ日本でも、電動キックボードのシェアリングサービスが始まる。

電動キックボードや小型電動自動車などの開発・シェアリング事業を行うLuupは4月15日に記者会見を開催。

同社が小型電動自転車のシェアリングサービスを実施している渋谷区、新宿区、品川区、世田谷区、港区、目黒区内で、4月下旬を目処に電動キックボードのシェアリング実証試験を開始することを発表した。

電動キックボード、国内初のシェアリングへ

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Luupの岡井大輝代表。

撮影:三ツ村崇志

電動キックボードは、欧米を中心にシェアリングサービスとして広く普及している小型モビリティの一種。

今回、Luupが実施する実証試験は、経済産業省の新事業特例制度を利用したもので、認可を受けた事業者の車両が「小型特殊自動車」として位置づけられる。4月下旬、政府から認可が降りたタイミングでサービスが開始される予定だ。

電動キックボードは従来、道路交通法上で原動機付自転車(以下、原付)に位置づけられている。公道を走行するには免許の携帯やヘルメットの着用はもちろんのこと、車体にナンバープレートやライト、サイドミラーの装着が義務付けられるなど、欧米のように気軽に利用しにくい状況が続いている。

そこで、Luupをはじめとしたマイクロモビリティ推進協議会は、電動キックボードを自転車と原付の間の乗り物と位置づけ、規制緩和や適切なルール作りのために実証試験に取り組んできた。

Luupの岡井大輝代表は、電動キックボードのモビリティとしての利用の幅が広がっている状況を語る。

「バイクではなく、諸外国と同じ形でのサービスは国内初の事例となります。Luupとして、これまで大学や自治体と実証実験を進めてきましたが、『シェア』という形でサービスをローンチするのも初めてです」

Luupは2020年10月〜2021年3月までの期間にも新事業特例制度の枠組みを利用して、電動キックボードの実証試験を実施していた。しかしこのときは、エリアが限られていた上、シェアリングではなく特定のユーザーにレンタルする形式。道路交通法における区分も「原付」のままだった。

電動キックボードの利用ルールは?

枠組みのちがい

これまでの実証試験との枠組みの違い。

提供:Luup

今回の実証試験でも、免許証の帯同、車両へのナンバープレートやサイドミラーの装着が必要になることに変わりはない。

変更された主な点は、

  • 走行可能な領域
  • ヘルメットの装着が「任意」になる点
  • 最高速度(前回の実証試験の時速20kmから時速15kmに)
  • 二段階右折も禁止(小型特殊自動車の枠組みとなるため)

原付相当として実施されていた前回の実証試験では、「車道」と「普通自転車専用走行帯」での走行が可能だった。今回の実証試験ではこれに加えて、「自転車道」と「一方通行だが自転車が走行可能な車道」が走行可能となる。

ただし、走行禁止区域として、次の2点には注意が必要だ。

  • 「歩道」や「公園内」は走行禁止。
  • 交通量の多い一部の幹線道路は走行禁止。

仮にユーザーが禁止されている場所を走行したことが確認された場合は、Luupからユーザーに直接連絡が来ることになる。

初乗り100円はキープ

岡井代表は、今回の実証試験の目的として「安全性の検証」「シェアリングによるキックボードのニーズの探索」「実証を通じた電動キックボードの正しいルールの訴求」の3点を上げている。

とくに、自転車道での走行が可能となった点や、ヘルメットを任意とした点など、新たな取り組みによる安全性への影響は、今後の規制緩和や法令化に向けた焦点となりそうだ。

なお、利用料金は電動自転車のシェアリングサービスと同じ初乗り100円(以降15円/分)。利用する際には、Luupの既存アプリ上で事前に免許証の登録と交通ルールに関するテストの受講が必要となる。

4月下旬、実証試験を開始する段階で、まずは既存のシェアサイクル用のポートに100台程度電動キックボードが追加で設置され、順次使用可能な台数を増やしていくこととなる。

最終的には、都内約300ポート中約200ポートに電動キックボードが設置される見込みだ。

「電動キックボードは最適なモビリティではない」

機体周り

加速する際には、地面を蹴って初速をつけた上でハンドルの手前に付いているアクセルを押す。安全のため、停止している状態でアクセルだけを押しても加速はしない仕様になっている。

撮影:三ツ村崇志

Luupは、2020年5月から「電動自転車」についてはすでに、シェアリング事業を開始している。これまで、渋谷区を中心に、狭いエリアに高密度にポートを設置することで、短距離の移動に対する根源的なニーズの掘り起こしを進めてきた。

岡井代表は、この1年の動きについて、

「感触としては非常に好調です。コロナの影響で鉄道やバスを使う方が(自転車に)移動し、押し上げられた分もあると思っています。機体の台数も増やしており、ポートの数も最初からだいたい6倍ぐらいになっています」

と、短距離の移動手段として一定のニーズは存在していると語る。

電動キックボードのシェアリングの開始は、こういった「ラスト1マイル」の移動手段として新たな選択肢を提示するものだ

一方で岡井代表は、「電動キックボードが将来の最適なモビリティではないと思っている」とも語る。

「(電動キックボードの利用は)健常者が限定となっているので、正直、高齢者に向いていない。


ただ、将来的に出てくる高齢者に向けた理想的なモビリティは、確実に電動走行しているはずです。電動キックボード(の実証)を通して、この後の理想的な電動モビリティの実現のために関係省庁と対話を続けていきたい」(岡井代表)

Luupは今後、2023年までに、短距離用のインフラの全国展開および、高齢者向け電動モビリティの導入を目指すとしている。

電動キックボードの公道走行は、電動モビリティの未来に向けた、一歩目に過ぎないのかもしれない。

(文・三ツ村崇志

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