話題の音声SNS「クラブハウス(Clubhouse)」が岐路に立っている。競合も続々あらわれている。
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この1年ほどで爆発的成長を遂げた音声SNS「クラブハウス(Clubhouse)」だが、そのロケットエンジンも止まりかけているようだ。
米調査会社センサータワー(Sensor Tower)の調べによると、クラブハウスアプリの月間ダウンロード数は2021年2月の960万回から、翌3月の270万回へと激減。4月はさらに急激な落ち込みが続き、18日までのダウンロード数は64万3000回にとどまっている。
この4月半ば過ぎまでの数字は、新規ダウンロード数がピークに達した2月に比べると圧倒的に少ない。
クラブハウス(Clubhouse)の月間ダウンロード数の推移。
出所:SensorTower資料よりInsider作成
米ウェドブッシュ・セキュリティーズのダン・アイブスは、Insiderの取材に対しこう語っている。
「花の命は短い。クラブハウスが生み出した音声特化型ソーシャルメディアという斬新なアプローチにめぐり合ったときの興奮が、早くも薄れてきているのではないか」
ただし、音声SNSの可能性を信じる投資家たちはさほど動じていないようだ。
クラブハウスは4月18日、新たな資金調達ラウンドをクローズし、創業わずか1年ながら評価額が40億ドル(約4300億円)に達したと発表した。
具体的な調達額は明らかにしていないが、米テクノロジー専門メディア「インフォメーション(The Information)」の報道によると、2020年3月のクラブハウス設立から今回のラウンドまで、調達額は少なくとも3億ドル(約320億円)を超えるという。
アーリーステージ投資に特化したベンチャーキャピタルNFX(クラブハウスには未出資)のジェームズ・カリアーは、Insiderの取材に対し次のように話す。
「クラブハウスのようなネットワークの力を活用するビジネスが急成長を遂げると、投資家たちはものすごく価値のある何かを手に入れることができる気になり、多少値が張る投資になっても元は取れると考える。そして普段からそういう成長株を探している。
資金調達の規模やタイミングを左右するのはたいてい、スタートアップ側のニーズではなく投資家たちの思惑だ。だから、起業家たちに僕はいつもアドバイスしている。クッキーをは出されたときに受け取ればいいんだ、と」
クラブハウスの広報担当にコメントを求めたが返答はなかった。
ワクチン接種が進み、リアルイベントが再開されたあとは…
前出の調査会社センサータワーのデータによると、クラブハウスアプリは直近13カ月間で1600万回以上ダウンロードされている。
クラブハウスが画期的な成功をおさめたことで、ツイッター(Twitter)やスラック(Slack)、音声チャットツールのディスコード(Discord)、ビジネス特化SNSのリンクトイン(LinkedIn)も同様の音声プロダクトをリリースし、さらには音楽配信のスポティファイ(Spotify)もクラブハウスの競合にあたるロッカールーム(Locker Room)を買収する動きに出ている。
また、フェイスブック(Facebook)は4月19日、クラブハウスのような音声チャット機能「ライブオーディオルームス(Live Audio Rooms)」や、短い音声クリップを作成・配信する機能「サウンドバイツ(Soundbites)」といった新たな音声関連サービスを発表した。
クラブハウスの登場は、コロナウイルス感染拡大による行動制限を背景に、離ればなれになった家族や友人たちがお互いにつながる手段を心から必要としたまさにその時期だった。
ウェドブッシュ・セキュリティーズのダン・アイブス(前出)は、世界中で徐々にワクチン接種が進み、イスラエルやアメリカをはじめ各地でリアルイベントが再開されていくなかで、クラブハウスがここまでの勢いを維持できるかは不透明だと指摘する。
「ダウンロード数の推移を見ると、素晴らしい流れだとは到底言えない。印象的なデビューを果たしながらも、まだ長期的なビジネスモデルとして成立するかどうかは見えていないこのライブ音声チャットをめぐり、2021年から22年にかけてフェイスブックをはじめとする複数の企業による競争が続くだろう」
クラブハウスアプリは現在のところiPhone(iOS)のみの対応で、ライブチャットに参加するには既存ユーザーによる招待が必要。ただし、クラブハウスは4月18日のブログで、アンドロイド(Android)版の早急なリリースに向けて準備が進んでいることを明らかにしている。
(翻訳・編集:川村力)