太陽の数百万倍の質量を持つ2つのブラックホール。青色で表されたブラックホールの方が質量が小さい。
NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell
- NASAが公開した動画では、2つのブラックホールがお互いに周回している様子が描かれている。
- それぞれのブラックホールの周りには、降着円盤と呼ばれる光るリングがある。
- 2つのブラックホールが交錯すると、一方の重力によってもう一方のブラックホールの周囲の光が曲げられる。
すべての銀河の中心にはブラックホールがあり、その強力な重力によって、何者もそこから逃れることはできない。2つの銀河が衝突したとき、それぞれのブラックホールが互いに歩調を合わせて、タンゴを踊るかのように回り続けることがある。
NASAが公開した動画では、超大質量ブラックホールのペアを撮影すると、どのように見えるかを明らかにしている。
動画ではわかりやすいように、2つのブラックホールが異なる色で表示されている。オレンジ色のブラックホールは、太陽の2億倍の質量があり、青色のブラックホールはその約半分だ。一方のブラックホールがもう一方のブラックホールの前に移動すると、その強い重力によって、相手の降着円盤からの光が歪んでしまう。そして通り過ぎてしまうと、歪んだ形は元通りになる。
ブラックホールは見え方が変わる
この動画を作成したNASAの天体物理学者ジェレミー・シュニットマン(Jeremy Schnittman)は、複数のスーパーコンピューターを連結して、2つのブラックホールが互いの周りを回るときに、両方の降着円盤からの光がどのように曲がるかを計算した。この計算はデスクトップ・コンピューターでは10年かかるが、今回はおよそ1日で完了した。
シュニットマンは、ブラックホールが見る角度によって姿を変えることを視覚化した。
上または下から見ると、それぞれのブラックホールの降着円盤はほぼ完全な円に見え、その中心付近にはもう一方の小さな像が映っている。
「それぞれのブラックホールにズームインすると、もう一つのブラックホールの像が複数になり、しかもだんだんと歪んで見えてくる」とシュニットマンは述べている。
ブラックホールを真上あるいは真下から見たときの様子。
NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman and Brian P. Powell
しかし、横から見ると、降着円盤はブラックホールの中心に虹のような炎がそそり立っているように見える。そしてこの虹は、ブラックホール同士がすれ違うときにゆがんで見える。
また、この視点からは、降着円盤の一方の側がもう一方の側よりも明るく見える。それは我々の目に向かってくる物質は、遠ざかっていく物質よりも明るく見えるからだ。
ブラックホールを横から見た様子。降着円盤の左側の方が明るく見える。
NASA’s Goddard Space Flight Center/Jeremy Schnittman
シュニットマンによると、今回の動画で描かれているような2つのブラックホールは、最終的に1つの巨大なブラックホールに合体するが、それまでは長い間、お互いの周りを踊るように回り続けるという。
「このような2つのブラックホール系では、互いに降着円盤を数百万年にもわたって維持することができると考えられている」と彼は述べている。
[原文:Watch 2 supermassive black holes dance around each other in a mesmerizing NASA animation]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)