この1年で組織はどう変わったか? Slackとコープさっぽろに聞く、生産性が高まるハイブリッドな働き方とは

この1年で、私たちが働く環境は大きく変化した。多くの企業がリモートワークを導入し、働く場所や働き方、同僚や上司・取引先とのコミュニケーションの方法も大きく変わってきている。

そんな中、2020年2月にビジネス向けメッセージプラットフォーム「Slack」を導入し組織のデジタル変革を行っているのが、北海道内でスーパーマーケット事業や宅配事業などを展開する「コープさっぽろ」だ。

新たな時代を迎えて、これからの働き方はどうなっていくのだろうか。

レガシー組織でもあるコープさっぽろでデジタル変革を進めるCIOの長谷川秀樹氏とSlackの 日本法人代表 佐々木聖治氏に、コミュニケーションインフラが支えるこれからの働き方の形を聞いた。

リモートの良さを実感した1年

── この1年、多くの企業で働き方は変わり、コミュニケーション方法も進化しました。企業のどんな変化を感じていますか。

長谷川:私はCIOとして「働きやすい、良い組織」を考えたときに、2つの側面が重要だと思っています。1つ目がセキュリティ対策やスムーズなアクセスの実現を含め、テクノロジーインフラが整っていること。そして2つ目はコミュニケーションインフラが整っていることです。

これまでCIOとして複数企業の現場を見てきましたが、多くの企業はコミュニケーションインフラを軽視しがちでした。でもそもそも「仕事って何だろう?」と考えると、社内外の人とコミュニケーションをとってプロジェクトや企画が始まり、何度もやりとりして意思決定しながら形にしていくものですよね。

コロナ禍でオフィスへの出社や対面コミュニケーションが当たり前ではなくなり、これまでのようなやり方ではうまく行かない部分が顕在化した。2020年は「コミュニケーションのあり方そのものに目を向ける1年」だったと感じています。

長谷川氏

生活協同組合コープさっぽろ CIO、ロケスタ 代表取締役社長の長谷川 秀樹(はせがわ・ひでき)氏。東急ハンズ、メルカリのCIO(最高情報責任者)を歴任し、2019年11月に独立。2020年2月にコープさっぽろ のCIOに就任。

佐々木:新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化する中で、企業の経営層の皆さまが働き方の環境整備を進めるにあたり、Slackのようなコミュニケーションインフラが「三種の神器」のように働く上で必須のものと認識いただく機会が増えたと実感しています。

特に、日本企業はコロナ禍の働き方の変化に応じてスピーディーに新たなツールの導入を進めたところも多かったように感じます。

実際にSlackの導入企業はこの1年で業種や規模に関わらず飛躍的に増加傾向にあり、働く場所や時間にとらわれないハイブリッドな働き方が徐々に浸透してきていると思います。

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『Future Forum』による「リモートでの従業員体験レポート」では、リモートになり生産性は向上し、帰属意識が高まったことが現れている

提供:Slack Japan

また、Slackが2020年に立ち上げたシンクタンクである『Future Forum』で行った「リモートでの従業員体験レポート」によると、過去1年のうち約5割の組織が、リモート環境下でチームの結束を強めるために投資を行っていることが明らかとなっています。

その結果として、会社の帰属意識も全体的にマイナスからプラスに転じてきています。

実際にリモートワークを行ってみて、
このフレキシブルな働き方は想像していたよりもずっと効率的で健全で、会社にとっても個人にとっても良いものだ」と実感を持てている方も多いのではないでしょうか。

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Slack Japan 日本法人代表の佐々木 聖治(ささき・せいじ)氏。2018年2月よりSlack Japanのカントリーマネジャーに就任。日本の事業責任者および代表としてSlackの拡大展開を指揮する。

開かれた会議室に、誰でも出入りできることが重要

── コープさっぽろでは2020年2月にSlackを導入したそうですが、どんな経緯だったのでしょうか。

長谷川:コープさっぽろは、1965年創立の非常に歴史がある生活協同組合です。職場ではメールが主流、会議は紙資料ベース、議事録はオフライン、内部間の連絡は電話という典型的な「デジタル化が進んでいない」組織でした。

また、北海道内に100以上の事業所があり、物理的距離が離れている場所も多く事業ごとに孤立しがちでした。そのため、どこでどんな問題が発生しているのかが見えていませんでした。

そんな中でSlackの導入が組織にとってよいと判断した一番のポイントは、誰でも出入りができる「オープンなチャンネル」が実現するところです。

テーマごとに分かれた会議室のような部屋をいくつも作ることができ、しかもそれが(職員全員に)開かれている。チャンネル=部屋に入るのは特定のメンバーだけではなく、内容やフェーズによっては他部署のAさんや関係者のBさんといったように、必要に応じて出入りがしやすい。また後から入ったとしてもログを検索して遡ることができ、とても効率的なんです。

── オープンで誰でも入れる、がキーポイントなのですね。

長谷川:そうですね、人はどうしてもクローズドな場所だと陰口やマイナスの意見も言いたくなりますが、オープンだと自然と自浄作用が働いて、健全で前向きなコミュニケーションがとれるんですよ。

また、企業内の仕事の多くは「横串」で行う必要がありますが、正式なプロジェクトでないと他部門に声をかけにくい面もあると思います。Slackなら関連がありそうな人を気軽にチャンネルに招待して横目で流れを眺めておいてもらい、必要なときだけ会話に入ってきてもらう、などもできるんです。例えば、これまでリアルなオフィスで離れたところにいるエンジニアの人にわざわざ話かけにいくのは気が引けたけど、Slack上でなら気軽に呼んで必要なことを聞ける、といったことも簡単にできます。

佐々木:Slackは、組織力を上げるための強いツールだと思っています。長谷川さんが仰ってくださったように、組織の枠を超えたチームづくりができる点も大きな強みです。

企業が成長を続けるには、既存のチームや組織の枠にとらわれず、関係するさまざまな分野のエキスパートとコラボレーションして新しい価値を創出しなければなりません。そのための「つながり」の柔軟さは私たちのサービスを訴求する上でもとても大切にしていることです。

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Getty Images / Oscar Wong

長谷川:コープさっぽろでは、Slack導入後、ある日突然「○○店長に学ぼう」というチャンネルができたんです。ある店舗のITに強い店長が「俺に何でも聞け」みたいな感じで立ち上げて。そこでは店舗の悩みを何でも聞くことができて、現場の人たち同士でやり取りが頻繁に行われています。

そうしているうちに、「今こういうのが足りてないよね、やってみようか」などと自然発生的にボトムアップでプロジェクトが立ち上がるんです。

リアルで打ち合わせをしようとなると、誰を呼ぶ?会議室どうする?など腰が重くなるけれど、チャンネルだとパッと始めて、適当なメンバーをサッと集めて、カジュアルかつスピーディに始めることができて仕事の進め方も変わったなと感じています。

時間や場所に縛られずに仕事をする

── コミュニケーションインフラを企業が整備することで、仕事の形が変わり始めていますね。

佐々木:ビデオ会議などの同期型コミュニケーションと、Slackのような非同期型のコミュニケーションを組み合わせて業務の効率化を向上していく企業が増えています。

我々がコミニュケーションツールのユーザーやITの意思決定者を対象にしたグローバルの調査結果によると、実にユーザーの79%がリモート下で業務を進めるにあたってSlackのようなコラボレーションプラットフォームが重要であると回答しています。また、Slackユーザーの95%が、チームとやり取りする際に時間で縛られるビデオ会議よりも、Slackで業務を進めたほうが効率的だと回答したという結果が出ています。

長谷川:物理的に離れた場所からチームで仕事をする際に重要なのは、各自が何をやっているかを把握・理解している状態を保つとことだと思っています。

それは決して監視するという意味ではなく、「あなたのことをチームでしっかり支えているよ」という意味です。

また、コロナ禍でSlackのようなコミュニケーションツールに注目が集まっていますが、そうでなくてもコミュニケーションインフラの整備はもともと必要だったのです。

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コープさっぽろでは、Slackの機能「ワークフロービルダー」を活用し業務の効率化も推進している。

提供:コープさっぽろ

対面が主流だったときの情報の伝達は実はコストがとても高く、伝言ゲームの中で意図が曲がったり、テキストで残っておらず二重のコミュニケーションが必要だったりと非効率な手段でした。

そこがデジタル化されると、一気にみんなに同じメッセージを拡散できて情報格差がなく、(意図的に)切り取られた言葉だけが伝えられることもありません。

佐々木:そうですよね。柔軟性が求められるこれからの組織に必須なのは「透明性」と「オープン性」だと思っています。情報やプロセスの透明性と世代や役職を超えたオープン性で公平さを担保して、情報流通のスピードをと質を上げることが重要だと考えています。

これからの働き方の未来とは

── では今後はどんな働き方やコミュニケーションを実現していきたいと考えていますか?

長谷川:Slackなどのツールの登場で、仕事の進め方やコミュニケーションが劇的に変わりました。これまでリアルな会議では口頭のコミュニケーションが全てでしたが、デジタルコミュニケーションでは、例えば会議中に議事録をとりながら全員で即時に共有する、資料を検索したらすぐに出てくるなど、雰囲気や記憶力に頼らなくても仕事ができるようになりました。

実際に私たちの組織でも決断のスピードが速くなり、手戻りもなくなっています。今後はSlackをAIアシスタントのように使えるようになったらいいなと思っています。例えば精算を促してくれたり、営業を支援してくれたり……。人とのコミュニケーションを深めることとテクノロジーを活用した効率化、その両極を追求していきたいですね。

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佐々木: Slack に AI を組み込む技術については我々のプロダクトチームでも既に議論している内容です。私たちは、Slackを「ビジネス向けメッセージプラットフォーム」と位置づけています。単なるコミュニケーションツールではなく、人やデータ、アプリケーションを集約した働く上でのプラットフォームを目指しているのです。

直近では、予め録画したものを都合にあわせて発信できる「非同期動画メッセージ」機能やリアルタイムで手軽に会話ができる「インスタント音声通話」機能を発表、そして社外組織とも安全な環境下でつながれる「Slack コネクト」機能を拡充しました。

これからの働き方は、組織はもちろん、外部ともより縦横無尽に連携しながら、各自の実現したいライフスタイルに合わせてハイブリッドに働くことが主になっていくと思います。そんな中で企業には働きやすい環境や制度の整備が求められています。Slackでは、新しい働き方にあわせて、2020年より4週間に一度金曜日を公休と定めて従業員の心身の充実をはかる「Friyay」制度や数時間単位の短い休みを家族や自分のために取ることができる「Emergency Time Off」制度を導入しました。

我々自身もよりインクルーシブな働き方を実現することにチャレンジし続け、働き方のアップデートを積極的に図っていきたいと考えています。

佐々木氏2


今こそ、働き方を見直そう──「Slack」について詳しくはこちら。

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