マイクロソフト(Microsoft)はリアルイベントの再開にはさほど関心がないようだ。
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アメリカで新型コロナウイルスの感染拡大が本格化したのは、マイクロソフト(Microsoft)の年次開発者会議「Build(ビルド)」開催のわずか数週間前だった。
同社はすぐにでも決断をくだす必要に迫られた。コーポレートバイスプレジデント(グローバルイベント担当)のボブ・ベジャンは当時の状況について、こう話す。
「経営トップからの指示は『ライブイベントはすべて中止にして、デジタルでやれることをみんなで考えるんだ。頼んだぞ』というものでした」
「Build 2020」のオンライン開催についてふり返るマイクロソフトのボブ・べジャン(Bob Bejan)。同社の公式ムービーより。
Microsoft YouTube Official Channel
オンラインに変更したものの、時期としては例年通り5月に「Build 2020」を開催。その後、マイクロソフトはイベントチームの再編と人員削減を経て、残ったスタッフに対してオンラインイベントにフォーカスした再教育を実施した。
べジャンはこのシフトを「誰にとってもつらく苦しい時期だった」とふり返る。
最も多くの人が注目する基調講演はもちろん、初回のライブ配信終了後も他のライブ配信経由でアーカイブを見てもらうためのダイジェスト動画まで含めて、デジタルコンテンツの制作により多くの時間と費用をかけたことが、(リアルイベントから移行する上での)最大の変化だった。
ほかに、ネットワーキングツールを活用して、オンラインイベントの参加者がセッションの合間にグループチャットできる仕組みを整えたりもした。
今日、多くのブランドがリアルイベントの再開に向けて準備を進めているが、マイクロソフトは今後もバーチャルにしぼってイベントを開催していく計画。オンラインイベントのアクセシビリティ向上のおかげで参加者が一気に増えたので、焦ってリアルイベントの復活を急ぐ必要がなくなったからだ。
毎年夏に世界各地で開かれてきたパートナーカンファレンスは今後もすべてオンラインで行われる。対面型のイベントが再開されたとしても、デジタルで実施する部分は少なからず残る。
「Build」の参加者数は、2019年に6200人と過去最多を記録していたが、オンラインで開催された2020年にはそれを大きく上回る17万9000人まで増え、最多記録を更新した。
また、ITプロフェッショナルが対象の技術カンファレンス「Ignite(イグナイト)」も、今年は3月にオンラインで開催。約25万人が参加し、うち半数以上がマイクロソフトのイベントに初めて参加した人たちだったという。
ベジャンによれば、オンラインイベントにシフトしたことで、参加者のアクセス元の国・地域も多様性を増したという。例えば、先述の「Build 2020」にはアフリカから6442人が参加。対面型で開催された前年の「Build 2019」にアフリカから参加したのは、たった28人だった。
マイクロソフトが「Build」「Ignite」を開催する最大の目的は、同社のクラウドスキルに関する資格認定を行うことだ。オンライン化によって学生やビギナーの資格受験者が増え、結果として過去12カ月間の認定者数はパンデミック前の数年間の合計を上回ったという。
また、自社オンラインイベントをいくつも成功させた実績が追い風となり、マイクロソフトは初めてのオンライン開催となったテクノロジーカンファレンス「CES 2021」(2021年1月)のプロデュース契約も獲得した。
「『いつになれば以前の状態を取り戻せるのか』と考えるより、『これからどんな世界になっていくのか』と考えるほうがずっと面白いと思いませんか。とりわけ、グローバルブランドで働いているなら」
[原文:Microsoft lays out how its hugely successful virtual events became a model for future gatherings]
(翻訳・編集:川村力)