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国家公務員3割「残業代が正しく払われず」。霞が関は『もうもたない……』進まぬ働き方改革

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民間のアンケート調査で、国家公務員の残業代の実態が浮かび上がった。

撮影:今村拓馬

「テレワークの日は残業をつけないように通知があった」(経済産業省の20代)、「超過勤務した分を申し出たが支払うことはできないと言われた」(農林水産省の40代) —— 。

約3割の国家公務員が、「残業代が正しく支払われていない」と回答したアンケート結果がまとまった。

アンケートは、民間企業や官公庁で働き方改革に関するコンサル事業を行う「ワーク・ライフバランス」が2021年3~4月に実施。現役の国家公務員316人が回答した。

官僚の働き方に関しては、長時間の残業が常態化していることなどが問題視され、そのイメージが志望者の減少にもつながっている。

人事局が2021年4月に発表した2021年度の国家公務員試験の総合職の申込者は、2020年度に比べて14.5%減の1万4310人。現状の総合職試験が始まった2012年度以降で最大の減り幅となり、「官僚離れ」が進んでいる。

こうした現状を受け、現役の官僚からは「このままでは霞が関がもたない」という声も聞かれた。

30代女性官僚「4時間睡眠で1週間」

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深夜も明かりが灯る霞が関。

撮影:今村拓馬

「国会で総理がカーボンニュートラル宣言をしてから、関係部署は毎日深夜まで霞が関と国会を往復している。その上、コロナ対応で新たな仕事が増えていて残業時間はどんどん伸びている」

約10年前に環境省に入省した30代前半の女性官僚Aさんは、Business Insider Japanの取材に対しそう話す。Aさんはカーボンニュートラルの部署ではないが、午前9時30分頃に登庁し、終電で帰る生活で、月の残業は100時間を超えている。

「国際会議の担当者がコロナで取られてしまった時は、私が代わりに対応しました。時差があるので午後10時から午前4時頃まで会議に出席し、仮眠して10時には登庁して、国会議員の問い合わせに対応。4時間睡眠で働き続ける生活が1週間続いたこともあります

Aさんの場合、残業代は満額支給されたというが、残業代が支払われてない場合も少なくない。

残業代未払いで「転職先探し始めた」

前出の国家公務員へのアンケート調査では、「2021年3月の残業代が正しく支払われたか」という質問に、61%が「支払われた」と答えたのに対して、28%が「支払われていない」と回答した。

アンケートは河野太郎・国家公務員制度担当大臣が「残業手当は厳密に支払う」と発言した2021年1月以降に実施されたが、依然として約3割の国家公務員が残業代が未払いだった。

「残業代が正しく支払われていない」と答えた人に、気持ちの変化を複数回答で質問すると、「結局は変わらないというあきらめの気持ちを感じた」が71%、「仕事へのモチベーションがより下がった」が42%、「転職先を探し始めた」が26%との回答があった。

4割がテレワークせず

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霞が関でもテレワーク普及が課題になっている。

出典:ワーク・ライフバランス「コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査」

霞が関で残業が常態化している原因の一つが、業務の効率化が進んでいないことだ。国は民間企業に対し、テレワーク推進を訴えているものの、足元の霞が関では十分にテレワークができていない現実がある。

アンケートでは「直近1カ月の全労働時間のうち、テレワーク・自宅勤務を何%しているか」を質問。

「テレワーク0%」が最も多く38%に上った。また35%が「テレワークを推奨しない、禁止されている」とした。

・テレワークを推奨されても、テレワークができない仕事が多い。(厚生労働省の20代)

管理職の中には、テレワークは仕事をしていないのと同じことだと声を大にして言うものもおり、テレワーク化がまったく進んでいない。(防衛省の20代)

テレワークが自分の希望で行うという建て付けのため、通信費や光熱費が自己負担になっている。特に電話代は多い月で1万円弱業務使用でかかったが、自己負担したことに憤りを感じている。(内閣官房の30代)

テレワーク勤務をした場合、残業代が支払われないという声もあった。

・テレワークにて勤務した場合、管理者が直接目視にて作業状況を確認できないので、超過勤務手当の支払いは困難である旨を、遠回しに指示された。(農林水産省の30代)

テレワークの日は残業をつけないように通知があった。業務が終わらない場合はサービス残業とすることを暗に指示された。(経済産業省の20代)

国会対応で長時間残業に

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国会対応によって国家公務員の残業が生まれている。

撮影:今村拓馬

官僚が長時間労働を強いられている大きな原因の一つが、国会対応だ。具体的には、国会での質問内容について、国会議員の通告が遅いために、答弁の準備をする官僚が長時間待機する必要があるためだ。

国会での質問内容は、2日前までに国会議員が通告するルールになっているものの、実際には(国会議員による)質問通告が前日になることも多い。

アンケートでは、質問通告が遅い政党についても質問。その結果、所属する国家公務員の質問通告が遅い政党は「立憲民主党」が70票で最も多く、「共産党」が61票、「自由民主党」が5票と続いた。

・通告を一度した後、何度も差し替え、時には前日午後10時や、休日など、非常識な時間に行うことも多い。(内閣官房)

・午後10時を超えても通告を出さず、全省庁が待機させられた。(文部科学省)

一方で、国会議員の質問通告が遅くなる背景には、国会の日程が直前まで決まらないことがある。野党は与党に対抗する手段として、与野党の協議で決める国会日程について、直前まで交渉を続けているためだ

「『日程闘争』のために、官僚の残業が生まれている。国会会期中の国家公務員の残業代は約102億円、タクシー代は約22億円と試算されている。多くの残業を生み出している現実を変える必要がある」(アンケートを実施したワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏)

「このままでは、もうもたない」

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撮影:今村拓馬

一方で、新型コロナを経て、霞が関の働き方改革が進んでいる面もある。コロナ前まではFAXだった国会議員とのやりとりがメールになったり、大臣や国会議員との会議がオンライン化されたりする変化もあった。

前出の環境省のAさんも、「テレワーク環境の整備や、慣例で続いてきた業務の効率化、庁内の希望のポストに手をあげられる人事制度ができるなどの変化も起きている」と話す。

こうした明るい変化もあるものの、Aさんの部下や年次の近い同僚の離職が続いている。

「官僚の働き方の問題点は、仕事の量とタイミングのコントロールがしにくく、また一部の省庁に負担が集中してしまうこと。

すぐに変えることは難しいですが、忙しい省庁に効率的に人材を配置していかないと、霞が関はもう、もたないと感じています

霞が関の働き方改革は、待ったなしの状況が続いている。

(文・横山耕太郎

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