20代前半以下とされるZ世代の投資家たちは、大企業で人気の職に就き、何億円もの株を管理し、シリコンバレーにおける自分たちの定位置をすぐに獲得した。
彼らはTikTok、TwitterなどのSNSを駆使し、従来にはなかった方法で有名人となり、その意見はベンチャーキャピタル市場に大きな変化をもたらしている。
そこで今回は、Z世代のベンチャー投資家14人に、ビジネス、生産性アップ、SNS、ゲームなどのツールで最近注目しているアプリやサービスについて教えてもらった。
もし知らない名前ばかりだとしても心配は無用。次の流行を見つけるのはZ世代に任せておけばいいのだから。
もちろん、今回名前が出たアプリやサービスについて、その投資家が出資していないことは確認済みだ。
Notion
Notionを使って組織のロードマップを策定している例
Notion
Notionはメモ、To Doリストなどの機能を備えた、生産性向上のためのオール・イン・ワン型ツールとして大ブームとなった。ファーストマーク・キャピタルのアソシエイトであるケイティ・チュウは「Notionを使って生活設計をしている」人もいる、と言う。
チュウによれば、必要なコードが少ないのでITに明るくない人でも使いやすいことがNotionの大きな利点のひとつだ。シンプルなデザインなので業務にも活用できるシーンがたくさんある、と言う。
「自分の目的に合わせて、好きなようにカスタマイズできるようになっています」
Mmhmm
Mmhmmの画面
Mmhmm
Mmhmmはバーチャル会議を少し楽しくしようとするアプリだ。ZoomやGoogle Meetと互換性があり、Mmhmmを間に挟むことで、ユーザーは好きな背景、アニメーション、視覚効果を選んで、自分のビデオ映像にアクセントをつけることができる。
「今後ハイブリッドな働き方やバーチャル会議が浸透していく中で、参加者全員がその体験をカスタマイズすることが重要になっていきます。今後ツールは個人向けも法人向けも、ストーリー性の高いものが広く定着していくでしょう」とシエラ・ベンチャーズのテジ・カナニは言う。
Mmhmmは2020年にセコイア(Sequoia)がリードしたシリーズAの投資ラウンドで、3100万ドル(約31億円)を調達している。
Yac
Yac
近頃、リモート勤務が主流になり、「この会議、メールで済んだよね……」ということが多くなったのではないだろうか。多くの人が「Zoom疲れ」を感じている今、Yacを使ってみてはどうだろう。
Pitchbookによれば、Yacは最近シードラウンドで750万ドル(約7億5000万円)を調達したアプリだ。音声・動画を自動的に文字起こしし、メッセージとして送ることで会議を代替しようというものだ。チームメンバーからの報告はスクロールして見ることができる。
「時間を有効に使いたいなら、Yacで簡単に解決しますよ」とレアブリード・ベンチャーズのアマニ・フィップスは言う。
Muze
言いたいことをうまく言い表せないとき、自由な形でユーザー同士コミュニケーションをとれるのが、メッセージングアプリのMuzeだ。従来のようなアイコンと吹き出しによるチャットとは違い、Muzeでは白いキャンバスを出し、そこに絵を描いたりGIFを送ったり、さまざまなフォントやカラーで文字を入力できる。
アニュージュアル・ベンチャーズのレイチェル・スターは、特にコロナ禍において、スレッド内で友人同士が少しずつ書き込んでいくことで「リアルタイムではないが、つながりを保つ」のにMuzeが役立ったと話す。
Upstream
コリン・ライリー
Corinne Riley
Insiderでは以前もZ世代の投資家数人にインタビューをしたことがあるが、その多くのホーム画面にUpstreamがあった。
UpstreamはLinkedInのようなビジネス向けSNSとして売り出しており、グレイロック・パートナーズのコリン・ライリーによると、すでに仕事のグループや専門家のトーク、バーチャル・ネットワーキングなど、活発なコミュニティができあがっているという。
ライリーはUpstreamのイベントにスピーカー・参加者両方で参加したことがあり、アプリを通して話の合う友人もできたという。
Eight Sleep
Eight Sleep
ソーシャル・インパクト・キャピタルのニック・シャーマは「デジタル睡眠コーチ」を謳うアプリ、Eight Sleepを使って自分の睡眠をトラッキングし、よりよい休息のためのアドバイスを得ている。眠りが浅いと、「部屋をなるべく涼しく、暗く、静かにしてください」などとアプリがアドバイスしてくれるのだ。
シャーマはこのアプリのおかげで自分の健康状態をより深く知ることができたと言う。自分の神経系の反応や睡眠時の心拍数などあらゆるものを記録してくれる。
Future Fit
リア・チャン
Lia Zhang
ペロトン(Peloton)やミラー(Mirror)といった話題のフィットネスツールよりも、Future Fitの方が好きだとリア・チャンは言う。このアプリではパーソナル・トレーナーとつながることができ、トレーニングのスケジュールを設定してくれたり、運動をしていくなかでコーチングを受けたりできる。
大きな特徴は、アプリ上ではあるがトレーナーと継続的にコミュニケーションがとれること。チャンはトレーナーに「ほぼ毎日」メッセージを送っていると言う。またFuture Fitのユーザーは、運動のトラッキング用に必要に応じてApple Watchを貸与してもらえる。
「他のどのデジタル・フィットネスアプリと比べても、運動へのモチベーションが一番上がります」
Aavia
スジュード・ダリエ
Sujude Dalieh
Aaviaはホルモンをトラッキングするアプリで、吹き出物や気分の浮き沈みなど、自分の身体にホルモンがどのような影響を及ぼしているかを教えてくれる。
ホームぺージには「私たちはホルモンを敵視するように社会から仕向けられています」と書かれている。ホルモンに抗うのではなく、ホルモンに合わせて生きることを提案したい、という。
Aaviaを使うことで「友人たちがみなバイオリズムをコントロールできるようになり、自分の身体のことがより分かるようになりました」と言うのは、ラックス・キャピタルのスジュード・ダリエだ。
Aaviaは避妊用ピルのケースも販売しており、服用のリマインダーをBlue-tooth経由で送ってくれる。
Goody
ミーガン・ロイスト
Meagan Loyst
Goodyは、エクササイズのレッスンからチョコレートまで、何百もの選択肢からギフトを贈ることができるアプリだ。プレゼントを選んだら、それを贈りたい友人の電話番号を入力する。するとGoodyから友人にメッセージが送られ、友人はそのリンクから住所を入力する。
レアラー・ヒポーのミーガン・ロイストはこのアプリの大ファンだ。
「プレゼントを贈ることが大好きなんです。あれこれ考えて選んだプレゼントで、友人をあっと言わせることができますから」
Goodyは最近シードラウンドでインデックス・ベンチャーズ(Index Ventures)やクワイエット・キャピタル(Quiet Capital)などから400万ドル(約4億円)を調達している。
Poolside FM
Poolside.fm
Poolside FMはラジオのようなアプリだ。ファーストマーク・キャピタルのコンテンツ・コミュニティ担当リーダーであるジャック・コーエンによれば、「多くのブランドが目指す、懐かしくなる感じ」を作り出すことに成功している。
レトロでファンキーなこのアプリには、「インディ・サマー」「ハングオーバー(二日酔い)クラブ」「フライデー・ナイト・ヒート」など、さまざまな雰囲気のラジオ局が複数入っている。
コーエンは言う。「生活に役立つものでありつつ、こんなに楽しい経験を作り出そうとしているアプリはあまりないでしょう。Poolsideのサイトに行くと、画素の粗いアイコン、昔懐かしいビデオ、80年代90年代の曲で、デジタル上の別世界をすぐ楽しめるんです」
Yaza
クリストファー・ガエタ
Christopher Gaeta
Yazaは、物件を探している人向けに位置情報と紐づけたビデオツアーを投稿することで、不動産エージェントをインフルエンサーにしようというアプリだ。
VUベンチャー・パートナーズのアソシエイトであるクリストファー・ガエタは、Yazaの将来が特に楽しみだ、という。
ガエタがYazaの創業者から聞いた話では、将来的には、ユーザーがある場所の動画撮影をリクエストし、撮ってくれた人に料金を払うことができるような機能を実装する予定だという。そうなれば、例えば豪雨災害の後に、Yazaを使って他のユーザーに自分の別宅の動画を撮ってもらって確認することができるようになる。
「この機能はまだ実装されていませんが、こうした機能追加があるなら今後長期的に注目していきます」
Radiant
ジボ・ガオ
Zibo Gao
音楽アプリRadiantに出てくる架空のDJであるラッドは、性格を好きなように設定でき、無限におすすめのプレイリストを出してくれる。またユーザーにニュースや天気、交通情報も知らせてくれる。Appストアのあるユーザーは「毎日ラッドが一日中一緒にいてくれる」というレビューを書いている。
他の音楽アプリに比べて、Radiantは自分に特化した体験を提供してくれる、とイントネーション・ベンチャーズのジボ・ガオは言う。
「オンラインで音楽を聴くという体験は『無機的に』感じてしまってあまり好きではなくて。今まで試した中でRadiantは自分に寄り添ってくれていると感じられる音楽アプリなんです」
Backbone
Backbone
「大のゲーマー」を自称するノーウェスト・ベンチャー・パートナーズのミシェル・ニーは、ゲームアプリはどこでもプレイできる点がとても気に入ってはいるものの、コンソールを使って遊ぶ感覚の方が本当は好きだという。
そこで、ゲーミング・コントローラーであるBackboneを使えば、Apple Arcadeやゲームアプリを自分のiPhoneでコンソールゲームのようにプレイすることができる。
Backboneのデザインは、Nintendo Switchに似ているとニーは言う。ディスプレイにコントローラーをセットするタイプだからだ。Backboneはまた、最近のマルチプラットフォーム、マルチプレイヤーに向かうゲームのトレンドにも合っている。
「Z世代が特に時間を使うのは、やはりこのソーシャル・ゲーミングの体験でしょうね」
Lolly
ジョン・スマザーズ
Acrew Capital
Tinderなどのマッチングアプリでスワイプし続けた結果、Z世代にとってはデートから人間味がなくなってしまった、とアクルー・キャピタルのジョン・スマザーズは言う。
そんな彼が好きなマッチングアプリは「TinderのTikTok版」と言われるLollyだ。
ユーザーはプロフィール情報ではなく短い動画をアップロードする。するとそれがTikTokのように他の人のフィードに流れる。ユーザーは、写真や文章では表現できない自分の特技や性格を見せることができるという。
「この最先端のマッチングアプリは最新のメカニズムを使っています。Lollyは、人と人とのやりとりであるデートに、人間らしさを取り戻してくれた気がします」
※この記事は2021年5月14日初出です。