今回発表されたデータは、何十万人への調査をもとにしている。
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- 在宅勤務は未来の働き方として支持されているが、最新のデータは、そのネガティブな側面を浮き彫りにした。
- 例えば、在宅勤務を行っている人は残業が多く、ボーナスが少ない傾向がある。
- Insiderでは、この報告書から4つのポイントをまとめた。
新型コロナウイルスのパンデミックで、多くの人が1年以上、オフィス外での仕事を余儀なくされたが、リモートでも勤務できることが分かり、在宅勤務が未来の働き方になるという大胆な予測がなされた。
だが先日、イギリス国家統計局(ONS)はこれに関する重要な報告書を発表した。この報告書は、約10年間にわたって何十万人もの人々を対象に行った年次国勢調査のデータに基づいており、いくつかの驚くべき結果が示されている。
報告書によると、在宅勤務を行っている人は、オフィスで働く人に比べて、労働時間が長く、報酬が少なくなると分かった。
この報告書の4つのポイントは以下の通りだ。
1. 在宅勤務者は、ボーナスをもらう機会が少ない
2013年から2020年の回答を分析したところ、主に自宅で仕事を行っている人は、同じ期間に在宅勤務しなかった人に比べて、ボーナスを受け取る割合が38%低いと分かった。
ONSは、この差が生じた要因として2つのことを挙げている。1つは「主に在宅勤務をしている人は職場で目立たないため、昇進やボーナスの対象から外されるという傾向」を示しているということ。もう1つは、在宅勤務者が、労働時間の柔軟性や通勤時間削減などの利点と引き換えにボーナスを放棄している可能性を指摘している。
元精神科医で現在は専門職の女性へのアドバイザーをしているルーシー・デイビー(Lucy Davey )博士は、この傾向は自宅で働くという選択する可能性の高い女性に多くの影響を及ぼしていると語った。
多くの企業が従業員に、パンデミック後も在宅勤務とオフィス勤務の選択肢を与えているが、デイビー博士は「かなりの割合の女性が、育児のために在宅勤務を選ぶだろう」とInsiderに述べた。
「結局、在宅勤務者はオフィスでの滞在時間が減り、オフィスで働く人(主に男性)に比べて働く姿が見えなくなり、昇進候補になりにくい」
2. 在宅勤務者の病欠は半分以下
2020年の在宅勤務者の病欠率は平均0.9%だったが、主にオフィスで働く人は2.2%だったことが、ONSの報告書でわかった。
在宅勤務する人が病気になりにくいという可能性もあるが、報告書では、多くの在宅勤務者が病気やケガをおして仕事をしているのではないかと指摘している。
「在宅勤務者は病気のとき、職場まで行くことはできないが、自宅で働くことはできたということだ」
ヴァージン・メディア(Virgin Media)やブーパ(Bupa)などの大手企業での15年間の最高人事責任者の経験を含め、30年以上の経験を持つ人事の専門家、エリザ・ナルディ(Elisa Nardi)は、専用のホームオフィスを持っている従業員が少ない以上、在宅勤務では「多くの企業が、従業員の健康と幸福の問題に関して、多くの不満に直面することになるだろう」と述べた。
3. 在宅勤務者はサービス残業が多い
2020年、「主に」「時々」あるいは「最近になって」在宅勤務をした人は、1週間に平均6時間前後のサービス残業を行った。在宅勤務していない人は3.6時間で、その約2倍になる。
2011年から2019年の間、「最近になって」在宅勤務を行った人は、サービス残業の時間が最も長かったが、2020年の結果では「主に」「時々」「最近になって」の3つの属性でほぼ同じ時間だったと報告書は指摘している。在宅勤務していない人の3.6時間という数字は、その前の年でも同じ結果だった。
4. 在宅勤務者は夜間に働く傾向がある
パンデミックは、勤務時間帯の変化ももたらしたようだ。
ONSの報告書によると、2020年9月、在宅勤務者は在宅勤務経験のない人に比べて、午後6時から午後11時に多く働いていることがわかった。
これは、パンデミックが始まった当初の2020年4月のデータとは対照的だ。「多くの在宅勤務者にとってリモートワークが初めてだったため、従来のオフィスでの勤務時間を維持しようとした」と見られている。
だが、現在の在宅勤務者は、終業時間の後の以前なら家路に就いていた時間も働き続けている可能性があると、報告書は述べている。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)