Skye Gould/Insider
- 新型コロナウイルスのパンデミックの中、アメリカでは大手不動産会社や不動産エージェントが、販売でも賃貸でも、TikTokを活用するようになっている。
- 不動産エージェントにTikTokが彼らのビジネスをどのように変えたのかを聞いた。
パンデミックの影響でビジネスのオンライン化を強いられる中、不動産エージェントは意外なプラットフォームを活用し始めた。TikTokだ。
ニューヨークを拠点とする不動産エージェントのキャッシュ・ジョーダン(Cash Jordan)は、TikTokで60万人以上のフォロワーと1420万の「いいね!」を獲得している。彼はこの1年間で、100万ドル(約1億円)のタウンハウスや家賃月2500ドル(約27万円)のアパートなどを紹介してきた。彼がTikTokに関してただ1つ後悔しているのは、なぜもっと早くこのプラットフォームを使わなかったのかということだと言う。
パンデミックの影響で、デジタル空間に進出せざるを得なくなった不動産エージェントの中には、ショートムービーを特徴とするTikTokのフォーマットに適応する者が現れた。ジョーダンは彼が「恐竜のような業界」と呼ぶ不動産業界はオンライン化に適応しなくてはならなかったのだと言う。そして、TikTokはティーンエイジャー向けのアプリという評判とは裏腹に、ビジネスに恩恵を与えてくれているという。
ニューヨーク市のロックダウン後、ジョーダンはTikTok、YouTube、インスタグラム(Instagram)などのプラットフォームに動画を投稿し始め、大きな反響を得た。
「物件の価格が2000ドルでも60万ドルでも関係ない。TikTokやYouTubeの利用者は非常に多いので、誰かしら興味を持ってくれる人がいる」とジョーダンは言う。
TikTokを始めたことでクライアントの数が2倍になったと彼は見積もっている。
同様に、マディソン・サットン(Madison Sutton、@thenycagent)もTikTokに動画を投稿し、フォロワー数9万5700人、合計150万回の「いいね!」を獲得している。ハイライン(Highline)社に所属するサットンは、対面で物件を案内することの安全性や効率性に不安を感じていたことから、2020年10月にTikTokでの案内に切り替えた。「ニューヨークで10件のアパートを10分で見て回るなんて、現実的にはできないこと」と彼女は言う。
サットンは、ジョーダンと同様、主に賃貸物件を扱っており、2020年の同時期と比べて2021年は「5、6倍の売り上げ」だと言う。
ジョーダンは動画の撮影と編集を自ら行い、サットンはPOVショット(主観ショット)を使ったり、母親に撮影を手伝ってもらったりしている。彼らの動画は、物件の紹介とその説明コメントで構成されている。サットンやジョーダンなどのエージェントは、意図的にそうして、視聴者とのつながりを築こうとしている。
ジョーダンがInsiderに語ったところによると、彼が紹介したあるアパートは、他の競合する業者も仲介をしており、クライアントはどちらの業者を通して契約するか迷っていたが、結局クライアントが選んだのはジョーダンだった。彼の動画を見て、彼のことを以前から知っているような気がしたのが理由だと述べたという。
サットンもその考え方に同意する。彼女の戦略のひとつは、「ニューヨークの一般的な情報」、つまり服装のヒントや近隣地域の情報などを提供することだ。「そうすることで、ここへ移り住むことへの不安をかなり軽減することができる」と彼女は言う。
フォロワーを増やしているのは、個々のエージェントだけではない。大手不動産会社コーコラン(Corcoran )は、TikTokと提携し、エージェントが自宅や販売中の物件で撮影して流行りの音楽をのせた動画を投稿するというプロモーションを2021年2月から行っている。コーコランのアカウントには、これらの動画の一部が再投稿され、現時点でフォロワー数2万人、「いいね!」の総数が20万を突破している。コーコランのデジタルコンテンツ担当責任者であるシドニー・ペリー(Sydney Perry)によると、同社は「TikTokのコンテンツでグローバル展開を図ろうと、懸命に取り組んでいるところだ」とInsiderに語っている。
ペリーによると、TikTokはコンテンツが多くの人々に届き、大きな話題になる可能性が高いという点で、ソーシャルメディアプラットフォームの中でもユニークな存在だという。TikTokにはアルゴリズムによる「おすすめ(For You Page)」の欄があり、それによって「多くのフォロワーがいなくても、投稿した動画が話題になって何十万人もの人々に見てもらえることがある」とペリーは説明した。新しいアカウントのコンテンツでも、ユーザーのこれまでの閲覧履歴に基づいて、自動的に彼らのフィードに表示されるからだ。
サットンは、TikTokのユニークなインターフェイスも成功の一因だと考えている。TikTokの動画は、インスタグラム(Instagram)などと違ってアプリをダウンロードしなくても、他のソーシャルメディアへ投稿したり、ウェブブラウザでの閲覧したりできる。一日中スクリーンに張り付いているような人でなくても、TikTokのコンテンツはシェアしやすいようになっている。
とはいえ、エージェントたちがTikTokに多くの時間を費やす理由の一つは、楽しんでいるからだとサットンとジョーダンは言う。
「多くの人がこれらの動画を見たいと思ってくれるのはいいことだ」とジョーダンはInsiderに語った。
「なぜなら、私は動画を作るのに夢中になっているから」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)