クロエ・ジャオ。2021年4月25日、カリフォルニア州ロサンゼルスのユニオン・ステーションで開催された第93回アカデミー賞授賞式で。
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- 中国のSNSユーザーは、政府が検閲しているにもかかわらず、クロエ・ジャオのオスカー受賞を祝福している。
- 中国政府は、彼女が以前、同国に対する批判を行ったことから、関連した投稿を削除している。
- ジャオは2013年にFilmmaker誌に対して、中国は「至るところに嘘がある場所」と述べた。
中国政府がソーシャルメディア上で黙殺しているにも関わらず、中国の人々は2021年のアカデミー賞でのクロエ・ジャオ(Chloé Zhao)の歴史な受賞を祝う方法を見つけている。
北京で生まれ、14歳まで北京に住んでいたジャオは、4月25日に開催されたアカデミー賞の授賞式で、有色人種の女性としては初、女性としては史上2人目となる監督賞を受賞し、彼女の映画「ノマドランド(Nomadland)」が作品賞を獲得した。
しかし、この栄冠は中国のソーシャルメディアサイト「Weibo」や「Douban」などはほぼ沈黙していたとニューヨーク・タイムズは報じている。これは彼女の過去の中国に対する批判的な発言が理由だと考えられている。
Varietyの報道によると、ある映画ブロガーは「私はスクリーンショットを撮り、それを裏返したり、翻訳したりした。受賞者リストを投稿するだけでも音を変えなければならなかった。人々は午前中ずっと投稿していたのに表示されなかった」と書いているという。
「賞を取らなくても恥ずかしくない。賞をもらっても祝福できないのが恥ずかしいだけだ」
「世界中が祝っているが、我々だけが映画の名前を隠している」とDoubanのあるユーザーは書いているとVarietyは報じている。
同誌によると、ジャオや彼女の映画に関連するハッシュタグを検索すると、「関連する法律、規制、およびポリシーによって、そのページは見つかりません」というメッセージが表示されるという。AP通信によると、ジャオが2021年3月にゴールデングローブ賞を受賞した後、同じメッセージが検索結果に表示されるようになったという。
中国ではジャオの受賞が黙殺されているにもかかわらず、ソーシャルメディアのユーザーは彼女の別名を使い、「雲の娘」あるいは単に「あの娘」と呼んで検閲を迂回したという。NBCニュースによると、ソーシャルメディアのユーザーの中には、この映画を「頼もしい空」と呼ぶ人もいた。「ノマドランド」とは、中国語で「頼りない土地」という意味だ。
2013年のFilmmaker誌のインタビューで、彼女は中国を「至るところにうそがある場所」と表現している。この言葉は現在はインタビュー記事から削除されているが、アーカイブには残っている。
ジャオは2020年12月、オーストラリアのニュースサイト、news.com.auに対し、「アメリカは今や私の国だ」と語っていたが、同サイトは2021年3月3日に「彼女は、(アメリカは)自分の国ではない、と述べた」と訂正記事を出した。
ニューヨーク・タイムズ・アジアの技術系コラムニストであるリ・ユアン(Li Yuan)は、「クロエ・ジャオのオスカー受賞を祝い、中国国民が誇りに思う一方で北京は検閲に忙殺されている。すべては彼女が2013年に行った批判のためだ」とツイートした。
「中国の検閲やプロパガンダについて書いてきたが、未だに理解できない」
あるWeiboユーザーは、ジャオがスピーチで中国の古典「三字経」の中の、人は生まれながらにして善良であるという一節に言及したことを賞賛した。
また、あるユーザーはNBCニュースの報道を引用して「スニーカーでレッドカーペットを歩き、『三字経』の一節を引用したクロエ・ジャオはすばらしい」と書いている。
「文学の知恵だ。消せる言葉もあるが、これは消せない」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)