ウォールストリートの経営者たちは、若手社員の燃え尽き症候群のため、こぞって改善策を模索している。燃え尽き症候群により、業界からの早期退職者が増えるのを恐れているからだ。
対策には、特別ボーナス、基本報酬の引き上げやその他の贅沢な特典などさまざまなものがある。しかし、ゴールドマン・サックスでは、若手アナリストが過去1年間におよぶ非人道的な労働環境に対する苦情や問題点をプレゼン資料にまとめ、それが外部にリークされた。そのため、問題の解決には、独自の対策があるという。
4月26日にZoomで行われたライブ対話で、ゴールドマン・サックス社長兼最高執行責任者(COO)であるジョン・ウォルドロンは、若手社員をサポートするために、作業の自動化などを含む3つの対策に言及した。
ニューヨーク経済クラブ主催のイベントで、アクセンチュアのジュリー・スウィートCEOと対談したウォルドロン氏は、優秀な人材を獲得し、維持するために必要なことに加え、最近、人材、文化、メンタルヘルス、健康について、これまでにないほど多くの議論をしているという。
「会社を経営していると、誰もがそのようなことを気にすると思いますが、今はそれが劇的に増幅されていると思います。人材争奪戦はおそらく、かつてないほど顕著になっており、パンデミック後の人材確保に関しては、より複雑なものになっています」
採用強化へ
ゴールドマン・サックスのジョン・ウォルドロンCOO。
ゴールドマン・サックス提供
このライブイベント中、スウィート氏はウォルドロン氏に、最近ニュースで報じられた若手銀行員たちがコロナ禍で直面した問題について質問した。
過去1年間、直接指導を受けたり学習したりする機会が減ったことで、若手社員は上司との貴重な時間を持てずにいる一方で、ゴールドマン・サックスのような銀行は膨大な取引量によって第1四半期に記録的な収益を上げている。
「第1四半期に達成したような好調なビジネスや資金の流れとは裏腹に、我々のリソースと人材は負担を強いられています。会社のトップとしてこのことを非常に真剣に受け止めています」とウォルドロン氏は語る。
「2020年後半から2021年の第1四半期にかけて、多くの人はビジネス活動がこれほど飛躍的に伸びるとは予想していなかったでしょう。特に、先ほど申し上げたように、資本市場の活動がほぼ放物線を描いて急上昇したような投資銀行業務では、人材が不足していました」
まず第1に、取引量の増加に対応するため、現在、人員を増やすべく採用を進めているという。しかしウォルドロン氏は、いつ、どこに何人を雇用するかは明らかにしなかった。
「もっと早く対応していればよかった。少し遅れてしまいましたが、今、採用に取り組んでいます」
ゴールドマン・サックスは、2021年の第1四半期に177億ドルという記録的な純収益を計上した。これは、2020年第1四半期の金額の倍以上であると、4月の決算発表で発表した。
ゴールドマン・サックスの投資銀行部門だけでも、第1四半期に37億7000万ドルの純収益を上げており、これは前四半期の実績を44%上回る。
サタデー・ルールの徹底
第2に、若手銀行員のワーク・ライフ・バランスが損なわれるのを防ぐための対策を強化するという。
具体的には、ゴールドマン・サックスのCEOであるデビッド・ソロモン氏が、投資銀行部門を率いていたときに作った「サタデー・ルール」の徹底だ。このルールは、長時間労働を避けるため、金曜日の午後9時から日曜日の午前9時までは、若手社員がオフィスにいることを期待してはいけないというものだ。
「忙しさが増すにつれ、この例外的措置はあまり厳格に実行されなくなってきていましたが、今はとても積極的に推進しています」とウォルドロン氏は語る。
また今後、メンター制度と若手人材の育成にも力を入れていくという。
「長年にわたり、私たちは本当に忙しかった。そのため、この分野(若手育成)が必ずしも得意なわけではないのです。これからは、もっと注力していきます」
多くの作業を自動化へ
第3に、ウォルドロン氏は、自動化による効率化を取り入れることが、燃え尽き症候群を克服するための柱になると述べた。
「若い銀行員、マーケットの専門家、資産運用専門家、オペレーション担当者が担当する仕事をもっと自動化しなければなりません。多くの作業は自動化可能です。そうすれば、若い世代は、自分たちが成長でき、仕事をより面白く、より付加価値をつけられることにもっと集中することができます」
ウォルドロン氏は、このような自動化がどのようなもので、どのような作業に役立つのかについては明らかにしなかったが、今後、数週間、数カ月間は、同社にとってこのようなインフラの整備を進めていくことが焦点になるだろうという。
「結局のところ、私たちは可能な限り最高の人材を確保したいと考えています。多様な人材を確保したいのです」
「私たちは、社員に長くこの会社にとどまり、自分のキャリアの機会について本当に良いものだと感じてほしい。それを実現するために、まだ多くのことをしなければなりません」
(翻訳、編集・大門小百合)