世界最大級のローファームと挑む、企業のDX化への道のり

バイロン・フロスト氏と近藤 友紀氏。

あらゆる業界で進むデジタル・トランスフォーメーション(DX)。

日本では政府によるデジタル庁の新設、人工知能(AI)やビッグデータなど先端技術を活用したスマートシティ実現に向けた「スーパーシティ法」の成立、身近なところではビデオ会議やリモートワークの浸透、電子マネー決済の普及……など着々と取り組みが行われている。

いまや既存の枠を超えた新たなサービスやビジネスモデルを生み出す企業も増加している中、複合的な法的課題が多く表出している。例えば、プライバシー、デジタルセキュリティ、そして競争法を含む関連法の順守といった「法にまつわる問題」だ。

企業がDXに取り組む上で乗り越えるべき喫緊の課題とは何か。企業法務の分野で世界最大級の規模を誇る国際法律事務所、ベーカーマッケンジーの若手スペシャリスト2人に実例を交えながら解説してもらった。

DXと法律事務所、その関係は?

企業の「DX」に「法律事務所」が一体どう関わっているのか、イメージが湧かない人も多いだろう。

「当事務所では、企業の多岐に渡るDX関連の法的ニーズにお応えしています。壮大なスマートシティ構想に関わる法的基礎構築から、AIやビッグデータにまつわる情報の取り扱い、デジタル化に伴う労働や税務関連の留意点まで……山積する複雑な法的課題に対して、企業がいかにうまく乗り越えて長期での成功を収めることができるか。DX時代の発展に向けて寄り添っていくことを使命にしています」(フロスト氏)

バイロン・フロスト氏

ベーカーマッケンジー法律事務所 外国資格シニア・アソシエイトのバイロン・フロスト氏。M&A、ベンチャーキャピタル投資、合弁事業のほか、企業法務全般に関するリーガルサービスをサポート。最近はM&Aの文脈でDX関連の問題点にもフォーカスしている。

M&A領域を専門とするフロスト氏は、主に日本企業の海外進出や海外企業の日本展開にあたってのさまざまな交渉やサポートを行っているというが、近年は企業からのどんな相談が増えているのだろうか。

「最近は、日本企業が自らの事業範囲にはない部分を強化するために海外スタートアップのM&Aを行い、国を越えて提携するケースが増えています。またM&A対象国も、従来の欧米に留まらず東南アジアなど数年前と比べて非常に幅広くなっているのが特徴です」(フロスト氏)

一方、主に知的財産とテクノロジー分野を専門にしている近藤氏は、「DXが進むにつれて、法規制が世の中のスピードに追い付いていない部分もある」と話す。

「DXに欠かせないさまざまな情報のデータ化や商品・サービスのデジタル化を進める上で、個人情報保護法や通信に関連する法律、著作権法などが絡むご相談を多くいただいています。

特にデータプライバシーに関しては、国ごとに法律の内容や考え方が異なるため、世界中の個人情報のデータ化を進めるにあたっては国内のみならず海外法令に関する多くの知識と経験が必要となります。

また業界としては、パンデミックの影響から医療やヘルステック領域の企業からのご相談も増えています」(近藤氏)

近藤 友紀氏

ベーカー&マッケンジー法律事務所 アソシエイトの近藤 友紀(こんどう・ゆき)氏。知財・テクノロジーグループに所属し、国内外の大手企業との知的財産分野やテクノロジー分野に関連する案件を数多く取り扱う。DX関連事案としては、AI医療画像診断システムの開発・販売、コネクテッドカーサービスの日本展開、オンラインイベントストリーミングサービスの展開、消費者データの一元管理及びマーケティング活用等の案件で法的アドバイス提供の経験を持つ。

データプライバシー問題にどう向き合うか

DX推進を意識したグローバルでのビジネス展開で、昨今取り上げられている重要な問題がデータプライバシーへの対応だ。

「国内外を問わず、今あるデータをいかにビジネスに生かすかの視点は重要ですが、ことプライバシーに関する意識は、海外企業が一歩先を行っています。

日本企業も最近ではレピュテーションリスク(※)を踏まえ、データ保護に細心の注意を払うようになりつつありますが、海外では日本より重い罰則が課される国もあるため、よりこの問題に敏感なのです」(フロスト氏)

※企業に対するマイナスの評価・評判が広まることによる経営リスク

情報セキュリティイメージ

Shutterstock / metamorworks

「長らく製造業を中心に高度経済成長をしてきた日本は、どうしてもデータプライバシーに対する危機意識を高めにくい環境だったといえるかもしれません。しかしあらゆる産業でDXが進む今こそ、起こりうるリスクを先読みした対策が必要となっています」(フロスト氏)

こうした問題は、DXやAI技術の導入が進み、今後伸びる分野といわれているヘルステック領域も同様だ。

「図らずもこのパンデミックにより、各国でAIの活用や遠隔診療といった医療のデジタル化が推進されています。しかし、患者さんの個人情報というセンシティブな内容を扱う分野だけに、そこには医療分野の業規制のみならずデータプライバシーの観点からも国ごとに多くの規制が敷かれているのが実情です。

医療分野の企業の事業買収・売却などを行う際にも、これらのセンシティブデータの移行に関して、私たちとしては専門的な見地から適切な対応を提示しなければなりません」(近藤氏)

DXが進み、コンシューマーデータを扱う企業は急速に増えている。しかし、データプライバシーにおいて日本が取り残されないよう、常に更新される世界の最新情報をキャッチして対応し続けなければならないのだ。

DX時代でもM&Aで大事な要素は「文化の交換」

バイロン・フロスト氏と近藤 友紀氏2

フロスト氏は「グローバル化の波にのり、国をまたぐM&Aは複雑化を増している」と話す。

「最近、日本の某大手IT企業がアメリカとインドのスタートアップを買収する案件を担当しました。これはただ株式のやり取りをするだけでなく、細かな条件のすり合わせやそれに必要なデータ収集など、非常に煩雑な業務が発生します。そこには、適切に両社をつなぐ情報伝達や折衝が必要です」(フロスト氏)

国を越えた提携を進める上で、とくにキーになるのが「文化の交換」だとフロスト氏は続ける。

企業と企業の関係は、人と人の関係です。国ごとに異なる捉え方や考え方に対する理解を一つひとつ丁寧に行うことが、結果的に長期にわたるよい提携関係を生むのです。

たとえば、海外企業は日本企業の決定プロセスが理解できない。“なぜあんなに稟議に時間がかかるんだ?”など、法令や文化の違いによる衝突は頻繁に起きるものです。

そこで必要なのが、ローカルカルチャーを互いに理解し合う『文化の交換』です。DXに相反するように聞こえるかもしれないこの人的要素はとても重要です。またこれは契約前だけではなく、締結後も継続して深め合う必要があります」(フロスト氏)

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Getty Images / martin-dm

現在、ライフサイエンス関連企業の海外進出や日本進出をサポートしている近藤氏はこう続ける。

「医療はテクノロジーと密接につながる分野の一つになってきていますが、国ごとの法律の違いなどから国内の技術やサービスをそのまま海外に持っていったり、逆に海外から国内に持ってきたりすることが難しいケースが大半です。

進出先の国の関連規制を理解した上で技術やサービスの価値を発揮するにはどうすればよいのか、当法律事務所の現地ネットワークと連携しながら調整を図っています」(近藤氏)

法律事務所が進めるDXとは

法律事務所というとレガシーな業界のイメージもあるが、ベーカーマッケンジーは世界最大級のローファームが有するグローバルネットワークや知見を生かし、自らの業務のデジタル変革にも余念がない。

事務所内では、契約書など各種ドキュメントの精査を自動化するAIツールが導入されて数年が経つという。

「私たちは主に時間単位で報酬が発生する職業です。案件のレポーティングなどの事務作業に追われる時間を削減できれば、その分、クライアントとのコミュニケーションに時間を使うことができます。

私たちの仕事はただ取り引きやプロジェクトをまとめるだけでなく、クロージング後やプロジェクトの運用段階までクライアントに寄り添いながら、トータルにサポートすることです。スピード、正確性、そして効率性が求められる中、自らのDX推進は間違いなくクライアント側のメリットにも直結するものだと思っています」(近藤氏)

バイロン氏と近藤氏3

世相を見渡せば、コロナ禍による打撃で経済は少なからずダメージを受けている。だからこそ新たなビジネスチャンスの開拓は急務だが、日本経済の先行きを不安視する声も少なくはない。

しかし数々の案件を通して、「日本企業は底堅い勇敢さがある」とフロスト氏は力強く語る。

「日本の経営者は世界中の優れた技術や企業に目を光らせていて、将来的な協業やM&Aを念頭にプランを練っている印象を受けます。その意味ではコロナ禍は、方向転換を図るひとつの機会ととらえている日本企業も多い。

経営体力の低下により海外企業に買収される企業が散見されるのも事実ですが、その裏にはしっかり力を蓄え、チャンスを伺っている企業が多く存在しています。

実際に、従来型の製造業からデータサービスへと180度ビジネスモデルを転換した企業の事例もあります。今後も、日本企業の世界への挑戦を力強くサポートしていきます」(フロスト氏)

技術も情報も企業を取り巻く状況が目まぐるしく移り変わる現代だからこそ、スペシャリストの知見を巧みに取り入れる振る舞いが、この先のさらなる成長につながるはずだ。


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