2018年10月2日、ニューヨークにあるブロンクス動物園のアジア園内を歩くゾウのハッピー。
AP Photo/Bebeto Matthews, File
- 動物愛護団体が、アジアゾウのための「人身保護」請求訴訟を起こした。
- 同団体は、ブロンクス動物園のハッピーは何十年も「投獄」されており、動物保護区に移されるべきだと主張している。
- この訴訟は下級裁判所で何度も棄却されてきたが、今回、ニューヨーク州上訴裁判所は審理を行うと述べた。
ニューヨーク州上訴裁判所は5月4日、ゾウの「ハッピー」は40年以上ブロンクス動物園に監禁されているという動物保護活動家らの訴えを審理すると発表した。
ノンヒューマン・ライツ・プロジェクト(Nonhuman Rights Project:NhRP)は発表を受けて「英語圏の最高裁判所が人間以外の人身保護訴訟を審理するのは、歴史上初めてのことだ」と述べた。
アメリカでは人身保護令状(不当に自由が奪われている者の身柄を裁判所に提出することを求める令状)のことをラテン語で「死体を見せろ」という意味の「ヘイビアス・コーパス(Habeas Corpus)」と呼び、通常は人間の不法監禁事件に適用される。
2018年に初めてハッピーを「クライアント」に迎えたNhRPは「身体的自由に対する彼女の基本的な権利の認定を求める」と述べ、ハッピーは人身保護令状によってゾウの保護区に移されるべきだと主張した。また、彼女の解放を求める嘆願書には100万人以上が署名している。
ニューヨーク・タイムズによると、ハッピーはメスのアジアゾウで、1970年代にもう1頭のゾウ「グランピー」とともに動物園に連れてこられ、25年間一緒に暮らしていた。2002年に長年の連れ合いが亡くなって以降のほとんどの期間を、ハッピーは単独で飼育されてきた。2006年、ハッピーは鏡に映った自分の姿を認識できるという研究結果が発表され、人間やチンパンジー、イルカに続き、自己認識能力を持つ初めてのゾウになったと公共放送のNPRが報じている。
ハッピーの訴訟はニューヨーク州上訴裁判所で審理されることになったが、これまで下級裁判所で20人以上の裁判官によって棄却されてきた、とブロンクス動物園が声明で述べている。
2020年12月には、州の高位裁判所控訴部が満場一致でハッピーを「人」と見なすことを否定し、訴えを棄却していた。その際の判決文には次のように記載されている。
「ホモ・サピエンス以外の種を、何らかの法的目的のために『人』と見なし、それゆえに特定の権利を持っていると司法が判断すると、コモン・ローでは答えられない迷宮に入り込んでしまう」
さらに、この決定は「立法のプロセスに適合している」と付け加えた。
ブロンクス動物園は、これまでの判決を賞賛し、NhRPが「誤った主張」を行って虚偽の情報を広め、ハッピーを自分たちの活動に利用していると非難している。
「ハッピーは隔離されていないし、苦しい生活を送っているわけでもなく、1年の半分を屋内に閉じ込められたりしていない」と同動物園は声明で述べている。
「要するに、この訴訟はハッピーにとって何がベストなのか考えられているわけではなく、NhRPがその信条に基づいた目的を果たすための資金を生み出す手段として使われているのだ」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)