最新のGDP成長率で日米欧に決定的格差。「漫然とした現状維持」日本に金融市場はもはや無関心

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ニューヨーク市内の公園に姿をあらわした「ワクチンバス」。英語を話せない人、コンピューターへのアクセスがない人を対象とした同市の接種促進プログラムの一環。

Spencer Platt/Getty Images

日本が連休中の為替市場で、はっきりと円安・ドル高が進んだ。

背景にあるのはもちろん、新型コロナウイルス感染拡大への対応の違いだ。ワクチン接種の進捗とそれによる感染抑制の状況を見ると、アメリカと日本の差は開くばかりと言うほかない。

日本では5月11日期限だった緊急事態宣言が月末まで延長されることが決まった一方、アメリカでは独立記念日(7月4日)までに成人の70%が少なくとも1回のワクチン接種を完了するという目標をバイデン大統領が打ち出した。

5月4日時点のワクチン接種率(1回でも接種した人の割合)はアメリカの44.2%に対し、日本は1.9%。欧州連合(EU)の平均はアメリカにおよばないものの25.6%に達し、うちドイツの接種率は29.3%と最近加速を見せている。

先進7カ国(G7)の枠組みで比較するのが憚(はばか)られるほど、日本の状況は厳しい。コロナショックを脱出する唯一の出口がワクチンである以上、今後もそれが金融市場ひいては世界経済を読み解く最重要ファクターになるのは間違いない。

その点を踏まえると、足もとで起きているアメリカの金利上昇、円安・ドル高という地合いは、必然の帰結と言わざるを得ない。

明暗分かれた欧米のGDP成長率

各国のワクチン戦略の巧拙(こうせつ)は(日本の連休中に公表された)2021年第1四半期(1~3月)のGDPにもさっそく反映され始めている【図表1】。

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【図表1】日米欧の実質GDP推移。前期比年率は振れが大きいので前期比としている。

出所:Macrobond資料より筆者作成

アメリカは前期比年率+6.4%と3四半期連続での増勢を維持。成長に対する寄与度を見ると、+7.0ポイントの個人消費がけん引した。

現金給付を主軸とする政府の支援策、ワクチン接種の円滑な進捗を背景に、感染者のピークアウトと経済活動制限の解除がからみ合い、これまで抑制されてきた需要が喚起されて経済を押し上げている。

制限解除は第2四半期(4~6月)も続き、第3四半期(7~9月)には完全なる正常化を果たすという政府の青写真を前提とすれば、成長率はさらに加速する可能性が高い。

かたやユーロ圏のGDP成長率は前期比-0.6%、2020年第4四半期(同-0.7%)に続くマイナス成長となり、景気後退と判断される局面に陥っている。

EU4大国のうちフランスだけは同+0.4%と増勢を維持したものの、それ以外のドイツ、イタリア、スペインはマイナス成長となった。ただし、フランスも4月初旬に行動制限を復活させた(月末に解除)影響で、第2四半期の数字に悪影響がおよぶのは必至だ。

需要項目別の変化は本稿執筆時点では発表されていないが、ドイツ統計局は感染拡大に伴う行動制限が個人消費に影響したと指摘しており、他のEU加盟国も似たような状況と推察される。

日本のGDP成長率はどうなる?

日本の第1四半期のGDPは5月18日に公表される。

マイナス成長は既定路線であり、例えば、日本経済研究センターの実施する「EPSフォーキャスト」(4月8日発表)では、前期比年率-6%程度になると予想されている。

すでに発表されている鉱工業生産などの基礎的経済指標を勘案して、-4%程度を予想する声も聞こえてくるが、いずれにしてもマイナス成長であることに変わりはない。

日本もユーロ圏も第2四半期はプラス成長に転じる見通しだが、おそらくアメリカはそのころ、もっと遠くに行ってしまっているだろう。

こうした構図はそのまま相場に反映されることになる。

ワクチン調達の遅れはごらんの通りで、接種にあたる医療関係者の確保や接種予約システムなどロジ(スティック)面でのもたつきも指摘される日本(円)と、2カ月後には成人の7割が接種完了すると大統領が宣言しているアメリカ(ドル)では、予測可能性に差があり過ぎる。

ロードマップが明示されている国の金利や通貨を評価したいと思うのは、市場参加者であれば当然のことだ。

また、アメリカに劣後するEUと日本の比較でも、予測可能性の視点から見ると大きな差が感じられる。

EUは日本に比べて、はるかにロードマップを描きやすい状況にある。例えば、欧州中央銀行(ECB)はワクチン接種による2021年下半期中の集団免疫獲得をシナリオの前提としている。

現在のワクチン接種ペースが続くとすれば(もっと早くなる可能性もある)、現実的な想定と言える。

したがって、GDP成長率の見通しは「アメリカ>EU>日本」。通貨の強弱については、EUの域内貿易黒字の大きさも踏まえ、「ドル>ユーロ>>円」という見通しが妥当と思われる。

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独立記念日(7月4日)までに成人の70%に最低1回のワクチン接種を行うとのロードマップを示したバイデン米大統領。5月4日、ホワイトハウスにて。

Alex Wong/Getty Images

日本の「漫然とした現状維持」に、金融市場は興味をもたない

日本は欧米諸国に比べると、経済活動の制限が緩慢に続いてきた。日本国内にいるとそれなりに波を感じるものの、世界的に見れば、過去1年間は従来の経済活動に近い「日常」が維持されたほうなのではないか。

グーグルが日次で更新する世界の移動情報「COVID-19 Community Mobility Reports」からも、その様子はうかがえる。

下の【図表2】は、食料品店やドラッグストアをめぐる移動の傾向を国別に比較したものだ。

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【図表2】各国の移動傾向。ベースライン(2020年1月3日~2月6日)をゼロとしている。

出所:Macrobond資料より筆者作成

過去1年間を通じて落ち込んでいたアメリカやイギリス、ユーロ圏(図表ではドイツを例示)で、2020年12月中旬からにわかに正常化に向かい始めたことが見てとれる。

ドイツでは先述のように2021年初頭から行動制限が復活し、とりわけ3月から4月にかけて厳しい状況に直面した。しかし、4月に入って行動制限が徐々に解除され、人出は復活してきている。

また、すでに人口の半数以上が2回目の接種を完了したイスラエルに至っては、2月中旬以降、ベースライン(すなわちコロナ前)を大幅に上回っている。同国では屋外でのマスク着用義務が解除されるところまで来ている。

一方、日本の人出はベースラインより若干弱い状態が続いてきた。

それなら良いではないか、という見方もあるかもしれない。しかし、そう単純な話でもない。

金融市場は従前からの変化を評価して動く。だから、いつまで経ってもワクチン接種が進まず、ベースライン前よりやや弱い状態が漫然と続く日本は、金融市場にとって良い悪い以前の話で、そもそも関心が高まりにくい

逆に、欧米諸国の感染者数や死者数は日本を数段上回るものの、悪い状態から改善に向かう変化がはっきりと認められるので、金融市場からの関心が高まりやすい。

要するに、金融市場はその時点の「水準感」より、先行きの「方向感」を評価しやすいので、「漫然とした現状維持」は材料視されにくいというわけだ。

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