「死んでもいいけど死んじゃダメ」子どもたちにかける言葉【あなたのいばしょ・大空幸星4】

大空幸星

撮影:伊藤圭

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星(22)は「自殺は悪いことだ」「死んではいけない」という言葉が必ずしも、子どもたちを救うことにはならないと考えている。

「僕自身は『自殺は悪いことだ』と言ったことは一度もありません」

死にたい思いを抱えるほど深く悩む人にとって、自殺は最後の選択肢であり救いに見えることもある。その選択肢を無理やり奪うのは、彼らをもっとつらい場所へと追い詰めるだけだという。

どん底で得た「悟り」

「死にたい」という子どもに出会った時、大空がかけるのは「死んでもいいけど死んじゃダメ」という言葉だ。

「普通の人が聞いたらお叱りを受けるかもしれませんが、死を思った経験のある人は、たいてい共感してくれます」

大空自身も高校時代、「どうして自分だけ、こんなに苦しいのか」と思い続けた。しかし、もうこれ以上は苦しめない、というほどの「どん底」にたどり着いた時、突然、母への憎しみや自分の人生の理不尽さなど、苦しみにつながることを何も考えないで済むようになった。それは大空にとって、自分を超高空から客観的に見つめるような「悟り」とも言える瞬間だったという。

その時から大空は、苦しみには上限があり、そこにたどりついたらその後の人生で、それよりも深く苦しむことはなくなるのだと考えるようになった。

「死なないで」という言葉を掛けることで、その人に苦しんでほしくはない。しかし大空は自らの経験から「今はつらくても、生きていれば必ず苦しまなくてすむ時が来る」と信じている。

だから、死んでもいいけど、生きてほしい―。

「苦しかった当時の自分にも、言ってあげたい言葉です」

と、大空は語った。

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