- アメリカ、テキサス州ボカチカの住民たちは、スペースXが村の「全て」を所有しているかのように振舞っているとウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
- スペースXは、住民が不当だと考える値段で彼らの家を買おうとしてきたと、複数の住民が話している。
- スペースXのCEOイーロン・マスク氏は、この村を「スターベース(Starbase)」と呼ばれる都市の一部に組み込みたい考えだ。
メキシコとの国境に近いテキサス州ボカチカの住民たちは、イーロン・マスク氏率いるスペースXがこの地域の「全てをすでに所有しているかのように振舞っている」と話している。この地域には、スペースXがロケットの打ち上げやテストに使用している土地がある。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、ボカチカにはスペースXと無関係の住民が14人いる。スペースXはボカチカの土地の少なくとも112区画を買収してきたという。
同紙の取材に応じた7人の住民は、スペースXとマスク氏には自分たちの所有する不動産の売却について、彼らが提示した金額よりももっと多く払ってもらいたかったと話した。スペースXの財務担当のシニア・ダイレクターであるデビッド・フィンレイ(David Finlay)氏はある1組のカップルに対し、彼らが自宅を快く売却することを拒むなら同社は「別のルート」を模索すると話したと、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
同紙によると、フィンレイ氏は別のカップルにも、スペースXの提案を拒否するなら「別のアプローチを検討する」と話したという。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道について、InsiderはスペースXにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
マスク氏は3月、この地域をテキサス州スターベースに組み込みたいと考えていると話した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この村を1つの町として合併するには、スペースXは少なくとも200人の住民がいると示す必要があるという。
「テキサス州スターベースまたはブラウンズビル/サウスパドレ地域への引っ越しを検討し、友人にもそうするように勧めてくれ!」とマスク氏はあるツイートの中で述べた。その上で「あらゆるエンジニア、技術者、施行者、サポート業務にあたる人員に対するスペースXの採用ニーズは、急速に高まっている」とした。
上手くいけば、この町とその指導者たちは土地収用権を行使し、住民に自宅を売却するよう合法的に強制できるようになる。
「わたしたちやわたしたちの家を含め、彼らは全てをすでに所有しているかのように振舞っているんです」とシェリル・スティーブンスさんはウォール・ストリート・ジャーナルに語った。スティーブンスさんは、打ち上げ施設の近くでの暮らしに耐えられず、2020年10月に自宅をスペースXに売ったと話した。
打ち上げが計画通りに行かないと、自宅の窓ガラスが割れたり、破片が飛んで来たり、火事が起きることもあったと、村にとどまっている住民たちはウォール・ストリート・ジャーナルに話している。スペースXは住民に対し、近くのリゾートタウン、サウスパドレ島にあるホテルへの宿泊を提案しているものの、40マイル(約64キロメートル)の移動にかかるガソリン代は自分たちで払わなければならないと、住民たちは語った。
同紙によると、彼らはスペースXによる州の高速道路の通行止めにも不満を漏らしていて、通行止めは「事前の通知が分かりづらく、不十分で、直前の変更や撤回も多い」という。
テキサス州では2013年、スペースXの打ち上げのために、ボカチカを含むキャメロン郡の当局が公共のビーチを利用できなくすることができる法案が可決された。
道路が通行止めになることで、住民は8マイルに及ぶビーチ、国立野生生物保護区、州立公園が利用できなくなると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。同紙によると、この高速道路は村に続く唯一の道だという。
住民たちは、郡の当局がスペースXと協力して、彼らを追い出そうとしているように感じたとウォール・ストリート・ジャーナルに語った。
一方、同紙の取材に対し、キャメロン郡のエディー・トレビーニョ(Eddie Treviño)判事はこうした疑惑を否定し、「スペースXには成功してもらいたいですが、コミュニティーを犠牲にすべきではありません」と語った。
「彼らが高速道路やビーチを支配できるだろうと考えているなら、それは間違いです」
(翻訳、編集:山口佳美)