WOTAが開発したポータブル手洗いスタンド「WOSH」。2020年9月、銀座で撮影。
撮影:横山耕太郎
20リットルの水を循環させ、500回の手洗いができる「超・節水」のポータブル手洗い機などを開発した東大発のベンチャー、WOTA(ウォータ)とソフトバンクは5月10日、資本・業務提携を結んだと発表。同社の水循環型ポータブル手洗機「WOSH」(ウォッシュ)を同日から販売開始した。
WOTAはボックス型の浄水システムなども販売。今回の業務提携により、ソフトバンクが代理店となり全国の自治体や企業に手洗い機や浄水システムを販売するほか、ソフトバンクの通信技術の基盤を、商品のサポートにも生かすという。資本提携によるソフトバンクの出資額は非公開。
被災地で活躍する浄水技術
内部のフィルターで水を浄化するWOTA BOXについて説明する前田瑶介社長。
撮影:横山耕太郎
WOTAは2014年に設立されたベンチャー企業。2019年11月、センサーとAI、フィルターを駆使して水質を自動的に判断し、浄水する持ち運び可能な浄水システム「WOTA BOX」を販売した。
WOTA BOXは2020年7月の熊本豪雨の際、避難所のシャワー施設で活用された。1人用の浴槽の約半分にすぎない100リットルの水で、100人分のシャワーが浴びられたという。WOTA BOXはこれまでに13自治体20避難所で導入実績がある。
また新型コロナの感染拡大を受け、2020年7月には水循環型ポータブル手洗機「WOSH」を開発。銀座のデパートなどに設置され、一部報道によると2020年12月末時点で4000台以上の予約があったという。
「水道に替わる分散型水循環社会に」
WOTAが目指しているのは、従来のように全国一律の「水道」を整備するのではなく、より小さい単位で、水を循環させられる社会の実現だ。
WOTAの前田瑶介社長は2020年9月、Business Insider Japanの取材に対し、次のように話している。
「水道から自由になれば、お風呂を家の好きな位置に置いて、家具のように移動できるようになる。日本の財政状況を考えても、人口が少ない地域では上水道を整備・管理するより、浄水機能を分散配置するやり方は効率的だ。2030年までに『水道』に替わる自律分散型水循環社会を作りたい」
今回のソフトバンクとの資本・業務提携の狙いについて、WOTAは次のように説明する。
「ソフトバンクは通信インフラを実装、運用してきた実績がある。一方でWOTAの水循環システムもAIやIoT技術を活用している。ソフトバンクの販売網だけでなく、全国でサービスの社会実装を加速するため、ソフトバンクの持つ通信技術の基盤を、サポート体制に生かしたい」
(文・横山耕太郎)