パーソルキャリアなどは、業種ごとの給与水準が分かる新サービスを開始した。
撮影:今村拓馬
パーソルキャリアとパーソル総合研究所は5月14日、約100万人分の給与データなどを使い、職種ごとの報酬水準が分かる法人向けの新サービスを発表した。
業界や企業規模、職種、役職などのグレードに応じて、人材の市場価値を可視化することで、採用や待遇の制度設定にいかせるという。
転職サイト「doda」で蓄積した給与データを活用
「ジョブ型雇用の時代になると、『このジョブはマーケットでいくらなのか』という情報は必須になる。個人と企業がフェアであることは、キャリアを作る上で必要不可欠なこと。人材の流動化が進んでおり、公益性の高いプロダクトだと思っている」
パーソル総合研究所の渋谷和久社長は、新サービス「Salaries(サラリーズ)」の意義についてそう語った。
サラリーズは、パーソルキャリアが運営する転職サイト「doda」が蓄積している給与などのデータを活用。職種や役職に応じた給与水準を確認できるサービスだ。
社員データをサラリーズに入力すると、課長や部長などの役職をグレード1からグレード8まで、AIが分類。役職グレードに加えて90以上の業種、70以上の職種を組み合わせて、それぞれに応じたマーケットの給与水準が分かる。
入力された個人のデータは統計化した形でのみ利用し、個人情報を第三者に提供することはないという。
価格は企業やサービス内容に応じて、年間30万円から150万円までの3コースがある。
採用時の条件提示など有利に
社員の役職に応じてグレードに振り分け、マーケットと自社の給与水準を比較できる。
提供:パーソルキャリア
サラリーズの利用目的は、採用や離職対策、人事制度の検討を想定しているという。
採用での利用については、例えば営業企画のマネージャーを中途採用する場合、自社の給与レンジと、マーケットの給与水準をグラフで比較表示。マーケットよりも給与水準が低かった場合、入社一時金や株式報酬などを提示するなどの対策につなげられるという。
横軸を社内評価AからEに設定。縦軸はマーケットの中央値で、社員の分布から自社とマーケットを比較できる。
提供:パーソルキャリア
また、離職対策で利用する場合には、社内での評価とマーケットの給与水準の中央値をグラフに表示。社内での評価が高いにもかかわらず、マーケットの給与水準よりも給与が低い社員は、転職を考える可能性があることから、その社員の昇進や昇給を検討することで離職防止につなげられるという。
さらに、入社年数に応じたマーケットの給与水準を自社と比較することで、例えば「入社11~15年目の待遇がマーケット水準を下回っている」などの課題も把握できる。
横軸に勤続年数を設定。自社の人事制度の市場水準とのズレを把握するのに役立つ。
提供:パーソルキャリア
ソフトバンク人事「待遇の指標に」
サラリーズはパイロット版をリリースしており、すでに80社からの応募があったそうだ。
パイロット版を利用した企業はこれまでに計13万件の社員データを登録。サービス利用が増えるほどデータが増えるため、より現実に即したマーケットの給与水準を示せるようになるという。
サービス発表の記者会見には、パイロット版を使用しているというソフトバンクの人事担当部長も登場した。
「当社では人材の確保・育成が課題になっている。ネットワークエンジニアやシステムエンジニアだけなく、新規事業のためにはAIやIoTのエンジニア採用も必要になる。こうした職種に見合った報酬はどの程度なのか、採用や待遇の指標になる。今後、人事制度の変更にも役立てていきたい」(ソフトバンクコーポレート統括人事本部・源田泰之本部長)
またサラリーズを使った感想について、「AIやUI・UXデザイナーは私が想定していた以上の給与水準だった」(源田氏)と話した。
またパーソルホールディングスは2021年5月14日、2021年3月期の連結決算を発表した。新型コロナの影響で転職サービスが振るわず、売上高は前期比2%減の9507億円、営業利益は前年比32%減の264億円で、減収減益決算だった。
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(文・横山耕太郎)
※ 編集部より:決算内容について追記しました。(2021年5月14日午後7時10分)