離婚を発表したビル・ゲイツは、米カリフォルニア州の高級ゴルフクラブに併設されたマンションの1室にいると報じられている。
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富裕層や権力者に愛され続けるスポーツ、ゴルフ。世界中のゴルフクラブが会員権の取得に際して高額な入会金を設定していることには何の驚きもない。
多くのコースでは、会員は招待制となっている。したがって、誰か既存の会員の知己を得て、その人に選ばれなければ、法外な会費を払う権利は得られない。
しかし、いかに会員権が高額で取り引きされても、世界の一流コースのレギュラーティータイム(プレー時間)を確保するためならいくらかかってもいいというセレブや政治家、一般富裕層はたくさんいる。
※アメリカのゴルフ会員権……数百万円の年会費を一括(または月額)で支払うのが普通で、会員はプレーの際に料金を支払う必要がない。会員以外がプレーするには既存会員からの紹介あるいは同伴が必須。コースごとの会員数は数百人程度に限定されることが多い。
以下では、地球上で最も会員権が高額で、なおかつ入会が難しいゴルフコースを紹介しよう。
ザ・ヴィンテージ・クラブ(カリフォルニア州インディアンウェルズ)
年会費3万2000ドル(約350万円)のほかに、25万ドル(約2750万円)の入会金が必要。法外な価格設定だが、それでもこのコースの会員権を欲しがる人はいくらでもいる。
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツは、妻メリンダとの離婚が報じられて以来、この「ザ・ヴィンテージ・クラブ」に併設されたマンションの部屋(米フォーブスによると1999年に1250万ドルでゲイツが購入)に蟄居しているという。
ナショナル・ゴルフ・リンクス・オブ・アメリカ(ニューヨーク州サウサンプトン)
Michael Cohen/Getty Images
ニューヨーク郊外に位置する、ウォール街の富裕層に人気のクラブ。
海沿いの自然や地形を活かした「リンクス」スタイルのコースには、ロイヤル・セント・ジョージやセント・アンドリュースなどイギリスを代表する名門コースに着想を得たホールがいくつかある。
米フォーブスの記事によれば、この招待制のリンクスの会員になるには、15万ドル(約1650万円)の入会金と1万ドル(約110万円)の年会費が必要となる。
オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ(ジョージア州オーガスタ)
2021年4月、松山英樹がアジア人として初めて「マスターズ」を制覇したのもオーガスタ・ナショナルだった。
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世界四大ゴルフトーナメントの1つ「マスターズ」が開催される週末、観戦チケットを手に入れるのは至難のわざだが、ここの会員権を手に入れることの難しさはそれどころではない。
オーガスタ・ナショナルは、世界最高とは言わないものの、少なくともアメリカでは最も高名なコースで、会員権はきわめて慎重に扱われる。もちろん招待制で、会員数はおよそ300人で維持されている。
ビル・ゲイツがかつて経験したように、入会希望の意図を大々的に公言するのはもちろん、関心があることを口にすることさえも、「グリーンジャケット・コミュニティ」(=オーガスタの会員を指す)においては礼を欠く行為と考えられている。ゲイツの場合はそれでも入会を果たしたが。
専門メディア「GOLF」の試算によれば、オーガスタ・ナショナルの年会費は約4万ドル(約440万円)。米フォーブスの調べによると、入会金は25万ドル(約2750万円)から50万ドル(約5500万円)とされる。
会員になるのに実際いくらかかるかはともかく、価格を気にするような人は、そもそも招待されもしないだろう。
パインバレー・ゴルフクラブ(ニュージャージー州パインバレー)
専門メディア「ゴルフダイジェスト」はパインバレーについて、オーガスタ・ナショナルを上回るアメリカ最高のゴルフコースと評価する。
入会金や年会費は明らかになっていないが、かなり高額であることは間違いない。
1913年の創設から108年間、会員を男性に限定してきたが、ついにポリシー変更に至った。
ジム・デービス会長は2021年、クラブの理事と会員による投票の結果、全会一致で会則から性別を特定する文言をすべて削除することを決めたと発表した。それまで、女性は日曜日の午後にゲストとしてプレーする以外の選択肢がなかった。
セミノール・ゴルフクラブ(フロリダ州ジュノビーチ)
Mike Ehrmann/Pool Photo via USA TODAY Network
セミノールの会員権は世界で最も敷居が高いと言われる。
専門メディア「GOLF」に掲載された記事(2020年5月)によれば、プロアメリカンフットボールリーグ(NFL)のスーパースター、トム・ブレイディやラリー・フィッツジェラルド、メジャーリーグ(MLB)コミッショナーのロブ・マンフレッド、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグらが会員に名を連ねる。
四大大会18勝のプロゴルファーで、日本では「帝王」と呼ばれるジャック・ニクラウスが入会を拒否されたとの噂もある。
シカゴ・ゴルフクラブ(イリノイ州ウィートン)
シカゴ・ゴルフクラブは、北米大陸で最も長い歴史を持つ18ホールコース。1894年の全米ゴルフ協会設立に参画した5クラブの一角。入会金は不明、会員は招待制。
ロサンゼルス・カントリークラブ(カリフォルニア州ロサンゼルス)
地元紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューンによると、ロサンゼルス・カントリークラブは、知名度のあるなしにかかわらず、入会をしばしば拒否することで知られる。
例えば、男性誌「プレイボーイ」創刊者のヒュー・ヘフナーは、同コースのすぐそばに豪邸「プレイボーイ・マンション」を有しながら(のちに売却)、会員にはなれなかった。
俳優でコメディアンのグルーチョ・マルクスは、入会を拒否されたとき、「私を会員にするようなクラブに、どうして私が入会したいと思うだろうか?」と独特の憎まれ口を叩いている。
ロサンゼルス・カントリークラブでは1940年以降、PGAツアー(アメリカ男子プロゴルフツアー)が開催されてこなかったが、2023年には全米オープン選手権の舞台となることが予定されている。
ナネア・ゴルフクラブ(ハワイ州カイルア・コナ)
(同名の米ネット証券大手の創業者)チャールズ・シュワブらの発案で2003年に創設され、まもなくハワイで最も高級なゴルフクラブとなった。
会員は招待制で、ハワイ島を訪ねてプレーするというわけにはいかない。入会金や年会費は明らかにされていない。
サイプレス・ポイント・クラブ(カリフォルニア州ペブルビーチ)
REUTERS/Michael Fiala
サイプレス・ポイント・クラブの会員数は約250人とされる。
米フォーブスによると、会費はコースの年間ランニングコストに応じて変動し、プレー頻度にかかわらず会員間で負担を分配する。幸運にも会員になれた人は、投資した分の元を取れますよう。
シネコック・ヒルズ・ゴルフクラブ(ニューヨーク州サウサンプトン)
2004年6月、シネコック・ヒルズの全米オープンに出場したフィル・ミケルソン。このときは南アフリカのレティーフ・グーセンに競り負けた。
REUTERS/Shaun Best HRA
会費と入会金について知られていることはあまりない。招待制だが、350ドル(約3万8000円)とされるグリーンフィーを支払った会員は、ゲストを同伴してプレーできる。
シネコック・ヒルズはウォーキング専用コースでカートが使えないため、プレーヤーはキャディを雇う必要がある。
過去に全米オープン選手権が5回開催されており、直近では2018年にブルックス・ケプカが優勝している。
ミュアフィールド(英スコットランド・ガレイン)
2013年、ミュアフィールドでの全英オープンを制したフィル・ミケルソン。手にしているのが優勝杯「クラレットジャグ」。
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「帝王」ジャック・ニクラウスは、ミュアフィールドを「イギリスで最高のゴルフコース」と評している。
全英オープン選手権が過去に16回開催され、直近では2013年にフィル・ミケルソンが「クラレットジャグ」(=同選手権の勝者が贈られる優勝杯)を手にしている。
(翻訳・編集・用語補足:川村力)