アマゾンはショッピングモールに続いてレストランも苦しめている…その高い賃金が、飲食業界の人材不足の一因に

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Helen H. Richardson/MediaNews Group/The Denver Post via Getty Images

  • COVID-19のパンデミックが始まってから従業員を一時解雇した飲食店は、今度は彼らを呼び戻すことに苦心している。
  • 専門家によると、アマゾンは大量雇用の取り組みと高い賃金により、アメリカの飲食店から労働力を吸収しているという。
  • ファストフードのチェーン店は、インセンティブで労働者を呼び戻そうと努力しているが、それだけでは不十分のようだ。

飲食店が労働者の確保に苦労しているのはアマゾンのせいでもあると専門家は述べている。

アマゾンは長い間、アメリカの市場に破壊的な影響を与えてきた。2016年、同社はオンラインでの低価格販売によって、書籍チェーン店のボーダーズ(Borders)や家電量販店のサーキットシティ(Circuit City)といった小売チェーンやショッピングモールの消滅を招いたとして非難された。そして今、同社は飲食業界からの労働力を吸収しつつある。

求人口コミサイトのグラスドア(Glassdoor)でシニアエコノミストを務めるダニエル・ザオ(Daniel Zhao)は、「オンライン小売業者の高給は最低賃金の仕事を脅すもので、労働者は飲食産業からアマゾンの倉庫や他のオンライン小売業の仕事に流出している」とブルームバーグに語っている。

アメリカ政府のデータによると、COVID-19のパンデミックが発生してから、飲食業界は1060万人の労働者の半分以上にあたる590万人を一時解雇せざるを得なかった。その一方で、アマゾンは配送センターの人員を50%増加させるなど、積極的に採用活動を行っていた。2020年には1日平均1400人が新規で採用されたとニューヨーク・タイムズが報じている。同社は2021年5月13日、アメリカとカナダの配送センターや輸送部門で、さらに7万5000人の労働者を雇用すると発表した。

パンデミックをきっかけに、飲食業界の労働者はアマゾンなどの企業に群がるようになった。2020年の春、グラスドアのサイト上で、飲食業界の労働者が「アマゾン」と検索する回数が600%以上増加し、「倉庫」と検索する回数も200%以上増加した。

現在、飲食店では、従業員を呼び戻すためのインセンティブを用意している。同時に、アマゾンも自社の雇用特典を強化している。

飲食店での仕事はますます魅力がなくなってきている

アマゾンの時給は17ドル(約1860円)から始まるが、最低賃金レベルから始まるレストランでは7.25ドル(約790円)からとなっている。

フロリダ州マイアミのシェフ、フィル・ブライアント(Phil Bryant)がワシントンポストに語ったところによると、アマゾンが高給であるため、多くの飲食店従業員が自分のキャリアについて考え直さざるを得なくなったという。彼のかつての同僚の多くが「アマゾンの倉庫なら時給17ドル稼げるのに、コックの仕事は暑くてストレスが多く、激務である上に、時給はわずか14ドル。それでもコックをやるというのか?」と自問しているという。

労働者は、飲食業界の将来にも疑問を抱いている。ブライアントによると、労働者たちは「この業界全体が一夜にして崩壊し、全員が失業してしまうようなことがあるなら、そこにとどまるに値するほど安定した仕事と言えるだろうか」と問いかけているという。

ニュージャージー州ロビンスビルにあるアマゾンの配送センターの内部。2019年12月2日。

ニュージャージー州ロビンスビルにあるアマゾンの配送センターの内部。2019年12月2日撮影。

REUTERS/Lucas Jackson/File Photo

カリフォルニア大学バークレー校の「Center on Wage and Employment Dynamics」の共同議長であるシルビア・アレグレット(Sylvia Allegretto)は、この問題を労働力不足によるものとは見ていないとInsiderに語り、アメリカではまだ1000万人が失業していると指摘した。

多くの労働者は、リスクを冒してまで飲食店で働く価値はないと考えていると彼女は言う。より賃金の高い仕事をまだ見つけられていない者でさえ、飲食業の仕事に戻ることをためらっているという。なぜなら、COVID-19に感染する危険があることに加え、客が減っていることで、チップを含んだ全体的な収入が減少する可能性があるからだ。

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