シャープの最新機種「AQUOS R6」は、“一風変わった”カメラ重視のスマートフォンだ。
撮影:小林優多郎
シャープは5月17日、新型スマートフォン「AQUOS R6」を発表した。NTTドコモとソフトバンクから6月中旬以降に発売。価格は現状未定。
IDC Japanの調査によると、2020年における国内スマートフォンのメーカー別シェア(出荷台数ベース)は、1位がアップル(47.3%)、2位がシャープ(12.7%)。
これはミドルレンジ機である「AQUOS Sense」シリーズが好調である影響が大きいが、高性能なフラグシップである「AQUOS R」シリーズも、「AQUOSシリーズのブランドを体現する」というイメージ戦略に寄与している。
そんな立ち位置の最新端末・AQUOS R6は、カメラメーカー「ライカ」と撮影機能を共同開発して大幅に強化し、ブランド力を高めたモデルとして市場投入される。実機に触れたファーストインプレッションをお届けする。
AQUOS R6は約6.6インチの有機ELディスプレイを搭載。幅74ミリのやや大きめのスマートフォンだ。
撮影:小林優多郎
最大の特徴は、背面カメラ。レンズや画質を含めドイツの老舗カメラメーカー・Leica(ライカ)と共同開発している点。
撮影:小林優多郎
背面カメラには、“スマホでは最大級”となる1インチセンサーが使われている。現在国内で一般販売されているスマホには、採用されていない。
撮影:小林優多郎
AQUOS R6の試作機でスナップショットを撮ってみた。被写体であるスマホや手に対して、背景が“自然に”ボケているのがわかる。
センサーが大きい=得られる光の量も多く、暗所撮影時の明るさ、ノイズの低減にも寄与する。
昨今のスマホは複数のカメラを持つ“複眼化”が主流だが、AQUOS R6は単眼だ(厳密には被写体との距離を計測する3D ToFセンサーもある)。
撮影:小林優多郎
そのため、例えばズーム(望遠)撮影は、光学ズームではなく最大6倍の“デジタルズーム”になる。一応、デジタルズーム時もデジタル画像処理技術によって、輪郭が細かく表現されている。
ちなみに、動画は最大4K/60fpsでの撮影に対応。任意の4K動画を8K/30fpsの動画に変換するアップコンバート機能もある
試しに、AQUOS R6試作機で撮った10秒の4K/30fps動画を同機能でアップコンバートしたところ、ファイルサイズは49.4MBから119.9MBとなった。
撮影:小林優多郎
カメラ以外の特徴としては随所に“AQUOS”らしさが詰め込まれている。ディスプレイは初めて有機ELで“IGZO”を冠しており、表示コンテンツに応じて画面の駆動速度が代わり、省エネ性能に寄与する。
撮影:小林優多郎
スマホでは世界初となるクアルコム製の3D超音波指紋センサー「Qualcomm 3D Sonic Max」を採用。1タップで指紋を登録できるほどの高速で正確な指紋認証が可能。
弱点の1つだったカメラで勝負するシャープ
歴代のAQUOS Rシリーズを比べても、R6は“今までと違う”。
撮影:小林優多郎
AQUOS Rシリーズは、今まで「ProPix」という自社の画像処理エンジンを搭載し、前述の複眼カメラやAIによるシーン識別などに対応するカメラ機能を搭載するなどしてきたが、存在感を他社に比べてあまり発揮できていなかった。
そこにAQUOS R6では「ライカとの共同開発」「(スマホとして)最大級の1インチセンサー」(プレスリリースより)という、カメラにある程度知識がある人であれば非常に気になる要素を取り込んだ。
シャープで国内のスマホ市場を担当する小林繁氏は、R6での狙いについて「8、9割(のユーザー)は標準のカメラで撮っている。最も重要度の高いカメラにに突き詰めたものを載せた」と語る。
シャープとしては、国内Androidスマホではシェア1位となっているAQUOSのブランドを支持するユーザーに対して、ほぼ唯一と言える性能のカメラを提供することで、AQUOSブランド自体のイメージ向上などを狙う。
AQUOS R6をめぐる、気になる2つの“コスト”
AQUOS R6の分解モデル。
撮影:小林優多郎
ただし、コスト面で気になる点が2つある。1つは「ユーザーが購入する上での端末価格」だ
現時点では、販売元であるNTTドコモとソフトバンクから本体価格のアナウンスはないが、前述のカメラセンサーやディスプレイ、クアルコム製の最新チップセット「Snapdragon 888」、メモリー12GB、ストレージ128GBなどのスペックを考えると、一括購入で10万円超になる可能性は高い。
所有するスマホにこだわりを持つハイエンド層向けだと考えると、高速通信が可能な5Gの“ミリ波”に非対応であることは、ウィークポイントになるかもしれない(例えば、同価格帯の2021年夏モデルのフラグシップ機であるサムスンの「Galaxy S21 Ultra 5G」対応済み)。
もちろん、NTTドコモもソフトバンクもミリ波のエリアはまだ少ない。が、10万円を超えるレベルのスマホは数年間にわたって利用することを考えると、この点が気になる人はいるだろう。
ライカとの共同開発は、R6だけにとどまらない?
撮影:小林優多郎
もう1つは「ビジネス上のコストの問題」だ。ライカとの共同開発は「従来にないレベルの苦労」(小林氏)があり、国内だけで販売するフラグシップ機にかける開発コストとしては従来より高い水準になっていることが予想される。
例えば、同じくライカと共同開発のカメラを搭載してきたファーウェイは、米中摩擦の影響を受けて現在はシェアを落としているが、かつてはグローバルメーカーだからこそ“数”で、コストの問題を克服してきた。
しかし、AQUOS R6は現状では国内向けモデルだ。シャープは2022年度末でに5Gスマホ1000万台の出荷を目指しており、国外市場への展開も視野に入れているが、R6に関しては、現時点で海外販売の予定はない。
いまだ開発コスト面で課題は残る状況だが、小林氏は「ライカとは(R6に限らない)中長期的なパートナーシップを結んでいる」と話し、今後もシャープとライカがコラボした機能や新端末を意欲的に市場投入していく方向性を示した。
(文、撮影・小林優多郎)