2021年5月17日、パレスチナ自治区ガザのジャバリア難民キャンプ。
Mustafa Hassona/Anadolu Agency via Getty Images
- イスラエルの空爆によって、パレスチナ自治区ガザでは200人以上が死亡、数千人が住む場所を失った。
- パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルにロケット弾で攻撃してから、空爆は1週間続いている。
- エルサレムでのイスラエル警察とパレスチナ人の衝突をきっかけに、ハマスはロケット弾を発射し始めた。
先週から続いているイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの空爆によって、これまでに200人以上のパレスチナ人が死亡し、数千人が住む場所を失った。
イスラエルによる空爆を受け、消火活動にあたる消防士たち(2021年5月17日、ガザ)。
Ali Jadallah/Anadolu Agency via Getty Images
空爆によって、ガザではこれまでに少なくとも212人 —— 少なくとも61人の子どもを含む —— が死亡したと、ニューヨーク・タイムズは報じている。
ガーディアンは、これまでに少なくとも1230人が負傷したと伝えた。
5月16日だけで、ガザではイスラエルの空爆によってパレスチナ人42人が死亡した。
イスラエルの空爆によって、家を失ったパレスチナ人の子ども(2021年5月17日、ガザ)。
Ali Jadallah/Anadolu Agency via Getty Images
このうち10人は子どもだと、ロイターは報じた。
空爆の前、パレスチナ自治区とイスラエルの緊張状態は数週間にわたって続いていた。
イスラエル警察が放った音響閃光弾(スタングレネード)から逃げるパレスチナ人(2021年5月10日、エルサレム)。
REUTERS/Ammar Awad
ハマスは5月10日、イスラエルに対してロケット弾を発射し始めた。イスラム教にとって神聖な場所である「アルアクサ・モスク」付近で、イスラエル警察がパレスチナ人を攻撃したのがきっかけだった。
この日、イスラエル警察は抗議の声を上げるパレスチナ人に対し、音響閃光弾(スタングレネード)などを使用し、300人以上のパレスチナ人が負傷した。
アルアクサ・モスク付近での衝突は、イスラエルが占領した東エルサレムのシェイク・ジャラ地区からパレスチナ人を立ち退かせようとしていることに対する抗議活動が発端だった。
抗議の声を上げるパレスチナ人と小競り合いになるイスラエル国境警備隊(2021年5月15日、東エルサレム)。
REUTERS/Ammar Awad
シェイク・ジャラ地区のパレスチナ人たちは、複数のパレスチナ人家族の強制退去をめぐる裁判所の判断を前に、抗議の声を上げていた。
一部の家族は早ければ5月6日にも自宅から退去させられる恐れがあったが、イスラエルの裁判所は判断を延期した。
ハマスが発射したロケット弾で、イスラエルでは少なくとも10人が死亡した。
ガザから発射されたロケット弾によって被害を受けた建物を確認するイスラエルの兵士たち(2021年5月11日、アシュドド)。
REUTERS/Avi Roccah
これには、5歳の男の子や兵士も含まれるとガーディアンは報じた。
イスラエルによる空爆で、ガザでは報道機関が入居しているビルなど、複数の建物が倒壊した。
イスラエルに空爆された建物のがれきの中を歩く男性(2021年5月16日、ガザ)。
AP Photo/Adel Hana
AP通信やアルジャジーラといった報道機関が入居していたアルジャラー・タワーもイスラエルの空爆を受けた。これらの報道機関は、ビルが倒壊する数時間前に避難勧告を受けていた。
イスラエル政府は、ハマスがこのビルで活動していたと主張したが、AP通信は武装組織がこのビルで活動していた「兆候」はないとして、これに反論した。
ガザではこれまでに132ものビルが破壊された。
イスラエルによる空爆で破壊された高層ビル(2021年5月12日、ガザ)。
Satellite image ©2021 Maxar Technologies.
パレスチナ当局は2500人が住む家を失ったと述べていると、ニューヨーク・タイムズは報じた。
パレスチナ人約3万8000人が、自宅から追い出されている。
イスラエルによる空爆を受け、消火活動にあたる消防士(2021年5月17日、ガザ)。
Ali Jadallah/Anadolu Agency via Getty Images
ステファン・ドゥジャリク国連事務総長報道官は、こうした住む場所を失った人々の多くは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する16の学校に避難していると語ったと、CNNは報じた。
世界最大の「野外刑務所」とも言われるガザで暮らす人々にとって、復興は難しい。
イスラエルによる空爆の後、被害を受けた車を調べる人々(2021年5月17日、ガザ)。
Ali Jadallah/Anadolu Agency via Getty Images
2010年、ガザを訪れたジョン・ホームズ人道問題担当国連事務次長は「彼らは野外刑務所のようなところで生活している。未だにこうした集団処罰に苦しめられている。もう3年も、だ」とアルジャジーラに語った。
これは、イスラエルが2007年以来、ガザに対して行っている軍事封鎖について語ったものだ。
国連の2012年の報告書は、封鎖が緩和されなければ、2020年までにガザは「住めない状態になる」だろうと指摘した。
イスラエルの空爆によって破壊されたビルのがれきの中で、生存者の救助を待ちながら祈るパレスチナ人男性(2021年5月16日、ガザ)。
AP Photo/Khalil Hamra
ノルウェー難民評議会によると、ガザでは200万人以上の住民が、1平方キロメートルあたり5000人以上が住んでいる地域で暮らしているという。
ガザの人口の70%が難民で、84%が人道支援を必要としている。地下水の98%は飲用に適さず、40%以上の人々がすでに十分な食べ物がない。
封鎖されているということは、この地域の輸入と輸出をイスラエルがコントロールしているということだ。医療用品も不足している。医療を受けるためには、人々はガザの外に出る許可を申請しなければならず、45%が認められない。
診療所といった必要不可欠なインフラが攻撃、破壊されている。
イスラエルによる空爆を受けた場所で見つかったもの(2021年5月17日、ガザ)。
Momen Faiz/NurPhoto via Getty Images
CNNは、ガザの診療所がその近くの標的を狙った空爆によって被害を受けたと報じている。
空爆で狙われた建物には、カタール赤新月社の事務所が入居していて、そちらも被害を報告している。
被害を受けた診療所は、地域の中心的な新型コロナウイルスの検査センターだったと、ガザの保健省は述べている。
関係者は、新型コロナウイルスの感染者が増加するのではないかと懸念している。
衝突はヨルダン川西岸地区にも広がっている。
イスラエルの空爆で破壊されたビルのがれきの下から救助されるパレスチナ人(2021年5月16日、ガザ)。
AP Photo/Khalil Hamra
ニューヨーク・タイムズは、ヨルダン川西岸地区でも20人のパレスチナ人がイスラエルの治安部隊や入植者と衝突、死亡したと報じている。
(翻訳、編集:山口佳美)