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- フィッチ・レーティングスは、中央銀行が発行するデジタル通貨が世界経済にもたらす利点についてレポートで詳細に説明した。
- その利点としては、社会のデジタル化、新たな利用法、犯罪の減少の3点が挙げられている。
中央銀行が発行するデジタル通貨が広く普及すれば、さまざまな面で世界経済に恩恵をもたらす可能性がある。フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)は5月17日に発表した調査レポートの中で、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency:CBDC)がもたらす3つの利点について詳しく述べている。
1. 社会のデジタル化が進む
リテール型(個人や企業など幅広い利用者を想定)のCBDCには、中央銀行が支援するキャッシュレス決済を強化する能力があるという。特に新興市場においては、取引コストの低いCBDCの導入により、銀行口座を持たないコミュニティを金融システムに取り込むことが可能になる。
2. 新たな利用法が開発しやすい
CBDCは、プログラミングが容易で柔軟性が高いことから、新たな利用法の道を開く可能性もある。例えば、災害支援や景気対策の一環としての支援金の送金を、デジタル通貨で行うということも考えられる。
3. 金融犯罪が減少する
CBDCが普及すると、民間の決済システムが縮小し、中央銀行が金融取引データをより詳細に追跡する能力が向上すると思われる。これは実質的に、金融犯罪の防止に役立つと考えられる。
上記のような利点があるものの、CBDCは現金に比べてプライバシーが守られないことや、サイバーセキュリティ上の脅威を高める可能性があるといったリスクがあり、金融機関はそれについても議論をしている。
ここ数年、多くの中央銀行が、暗号通貨市場の勢いに後押しされる形で、CBDCの導入を検討してきた。中国は、2014年からCBDCの開発を始め、2020年以降は実証実験を進めており、開発競争をリードしている。世界で最もキャッシュレスな国であるノルウェーも、2021年4月にCBDCのさまざまなソリューションのテストを開始すると発表した。
アメリカでは、5月にボストン連邦準備銀行のエリック・ローゼングレン(Eric Rosengren)総裁が、CBDCを導入する意義を検討しているところであり、開発研究を今後も続けると述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)