決算会見にのぞむ、永田副社長(左)と出雲代表(右)。
ユーグレナ決算説明会よりキャプチャー
微細藻類のユーグレナ(和名:ミドリムシ)を使ってバイオジェット燃料などを開発している、バイオベンチャーのユーグレナは5月20日、上期決算となる2021年9月期(2020年10月1日〜2021年9月30日)の第2四半期決算を発表した。
上半期の売上高は77億3000万円、営業利益は約5億円の赤字。調整後EBITDAは約2億円の黒字となった。
決算会見では、今期の業績見通しも上方修正した。
当初、売上高は過去最高となる152億円と見通していたが、連結子会社化した青汁大手のキューサイの売り上げ(決算への計上は第4Qから)が寄与して220億円に上方修正。
調整後EBITDAの見通しも、キューサイの利益によって全体で6億円の赤字から2億円の赤字へと改善された。
ユーグレナグループ全体で売上高は年間「400億円規模」
売上の進捗は51%と当初の予定どおり進んでいる。
出典:ユーグレナ2021年9月期第2四半期決算説明資料
決算では、2020年12月に発表した青汁大手のキューサイの買収に関する詳細が報告された。
ユーグレナは、2020年12月にアドバンテッジパートナー、東京センチュリーらとキューサイ買収のための特別目的会社(SPC)を設立。ユーグレナは約30億を出資して、株式の約13%を取得していた。
その後、約129億円を海外公募で調達し、5月14日にコールオプション(株式を追加で購入する権利)を行使することで、SPCの持ち株比率を約13%から49%に拡大。キューサイの連結子会社化を実現した。
なお、SPCの持ち株分を除いた、残り51%の株式の保有割合は、東京センチュリーが4%、アドバンテッジパートナーが47%となっている。
残り51%についても、2023年8月にコールオプションが発生することから、永田暁彦副社長は「この行使も含めて、今後キューサイへのコミットメントを深めていきたい」と語った。
なお、今回の連結子会社化によってユーグレナグループ全体の売り上げは年間で400億円規模になる見通しだ。
これまでのユーグレナの売上にキューサイの売上が積み上げられると、グループ全体の売上は400億円規模になる見通しだ。
出典:ユーグレナ2021年9月期第2四半期決算説明資料
永田副社長は、キューサイ買収のメリットとして、キューサイの機能性表示をもつシニア向け商品などが加わることで、グループ全体としてさらに幅広い年齢層・カテゴリの顧客層に対する製品のポートフォリオを拡充できることを挙げる。
「これによって、その時代において最もパフォーマンスが高いブランドに広告・宣伝費などの投資資金を回しやすい構造を作っていきたい」(永田副社長)
また、キューサイは長年の蓄積によって強靭なバリューチェーンの仕組みを保有していることから、ユーグレナ単独としても基礎的な仕組みが強化でき、安定した成長の基盤になっていくと考えているという。
キューサイのこれまでの売上推移。
出典:ユーグレナ2021年9月期第2四半期決算説明資料
キューサイの2020年12月期の売上高は246億円と、これまでのユーグレナグループの売り上げと比べても比重が大きい。ただし、一定の利益を確保しながらも、近年は売り上げが単調減少を続けていた。
永田副社長は、これまでキューサイで遅れてきたDXの知見をユーグレナから提供するなど、今回の買収は相互のメリットがあるものだと強調。
加えて、
「(キューサイの)再成長を徹底的に目指していく。プレシニア層へサービスを提供する日本におけるNo.1カンパニーに事業転換をしていきたい。2025年12月期までに(キューサイの)売り上げを300億円以上にすることを目指します」
とキューサイの今後の展望も語った。
バイオジェット燃料、製造コストは1万円から100円台へ
撮影:今村拓馬
また、同社では先端投資事業として、ユーグレナを由来としたバイオジェット・ディーゼル燃料の開発・製造を進めている。
2020年3月には次世代バイオディーゼル燃料(※)が完成し、これまで25社に導入を進めてきた。
※次世代バイオディーゼル燃料は、石油由来のディーゼル燃料と同等の性能をもち、100%代替することが可能とされている。
また、2021年3月には飛行機の燃料として使用できる、国際規格のASTM D7566 Annex6の規格を取得しているバイオジェット燃料も完成。
出雲充社長は
「2021年フライト実現を目指して、関係各所とどのように供給していくのかをロジ面で進めています」
と商業フライトの実現に向けた現状を語った。
ユーグレナの出雲充代表(2020年10月に撮影)。
撮影:今村拓馬
バイオジェット燃料をとりまく国内外の状況を見ると、ユーグレナにとって追い風が吹いている。
2020年10月、菅義偉首相が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す」と発言すると、同年12月に発表されたグリーン成長戦略でもバイオジェット燃料の利用は重要な成長産業として捉えられた。
「グリーン革命という意味では、非常に大きな変化が起こり得る。空のグリーン化が一番発展する領域だと思っています」(出雲社長)
ユーグレナは現在、横浜市鶴見区にある実証プラントでバイオディーゼル・ジェット燃料を製造している。これに加え、2025年までに商業プラントを建設し、年間約25万キロリットルの供給を目指すとしている。
バイオ燃料では、石油由来の燃料と比較してコストが高いことが課題だ。
出雲社長は、
「2025年に(商業プラントを稼働させて)規模の経済をはたらかせるために、商用プラントの建設候補地の選定作業を進めている。国内外のパートナーとディスカッションしており、場所についてはできるだけ早く、2021年中には発表できる」
とした上で、「既設の製油所、精製所を改修する方がはるかにビジネスの目処が立ちやすくなる」と商業プラントの候補に対する考え方を語った。
また、バイオジェット燃料の製造コストについて問われると、永田副社長から以下のような説明があった。
「現状(小型の実証プラントで製造されたものは)1リットルあたり1万円。
2025年には、商業プラントが建設されると製造量は年間25万キロリットル以上になります。この際の精製コストは最大でも1リットルあたり20円台。より規模が大きくなると10円台まで落ちてくることになります。
原油コストと合わせて(1リットルあたり)120円ほどの製造コストを見込んでいます」(永田副社長)
(文・三ツ村崇志)