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- 日々運動を続けることが人生の目的意識を育む可能性があることを、研究結果が示唆している。
- 目的意識を持つ人には運動している人も多いことをデータは示している。
- 特に高齢者にとって、目的意識を持つことが「上昇スパイラル」を生み出すと研究者は述べた。
運動することで目的意識を高めることができ、特に人生の晩年に生活の質を向上させられる、と研究結果は示唆している。
2021年4月23日に「Journal of Behavioral Medicine(行動医学ジャーナル)」で発表された研究結果によると、定期的に運動をしている高齢者には人生に目的があると言う人が多いという。
ハーバード大学とウォーリック大学の研究者は、高齢で主に白人のアメリカ人1万4000人以上を対象に、日課や、身体的および精神的健康、人生の目的意識などについての調査を行った。
その結果、運動が目的意識の高さと関係していることが分かった。目的意識のある人には運動をすることが多いが、運動をすることが目的意識を維持し、さらに高めていくことに関係しているという。
目的意識は年齢とともに薄れていくが、運動が役に立つことがある
研究者が目的意識を評価した方法は、被験者に「自分の日常活動は、ささいで取るに足りない」や「人生の目的や進むべき方向を理解している」といった文章にどのくらい当てはまるかを尋ねることだった。
年齢を重ねても活動的だった被験者は、自分は目的意識が高いとする傾向が強く、年齢とともにそれが増すことが分かった。これは、多くの高齢者が加齢とともに目的意識が低下し、運動量も減少するのとは対照的だ。
「定期的な運動によって、楽しみを計画することや社会的なコミュニティに属することができ、生活が豊かになることを考えれば、この結果は理にかなっている」と、研究の筆頭著者でハーバード大学で幸福(well-being)について研究しているアイセ・イェミシジル(Ayse Yemiscigil)はInsiderに語った。「限られた貴重な時間を使って、価値のあることを成し遂げた気持ち(の効能)は言うまでもないだろう」
また今回の研究では、身体活動と目的意識に深い関連性があり、目的意識のある人は運動する傾向にあるとわかった。目的意識の高い人は、健康のために運動をすることなど、長期的に見て利益のあることに対するモチベーションが高いからだろう。
「人生の目的意識があるということは、楽しみがあるということなので、長生きしたい、健康でいたい、これらのことに感謝したいという気持ちを持つようになる」とイェミシジルは述べた。
こうした結果に基づき、運動を推奨することは、幸福度や目的意識を高めるための戦略の1つになると考えられる。だが、別の方法(社会的支援など)で目的意識を高めることで、継続的に運動するようになるかもしれない。そのようにして生活を改善する「上昇スパイラル」を生み出せるかもしれない、と研究者は結論付けた。
「次は、これを大規模に推進する方法を見つけ出さなければいけない。近い将来、誰もが人生により大きな意味と目的を持てるように組織や社会をデザインする方法が明確になると期待している」とイェミシジルは述べた。
運動には、身体的な健康以外にも利点がある
これまでの研究では、定期的に運動する人が精神疾患に苦しむ可能性が低く、より自己肯定感が高く、社会的つながりも強いことを示唆している。運動には、脳内でドーパミンやセロトニンといった気分を向上させる物質が増加し、うつ病や不安症を軽減するなど、精神衛生上のメリットもあるのだ。
また、身体活動が総合的な幸福度を高め、慢性疾患を防ぐことも証明されている。血圧を正常化することで心血管疾患のリスクを減らし、年齢を重ねても健康を維持することができる。また、炎症や(肉体的、精神的な)ストレスも軽減できる。
早歩きでも、ウェイトトレーニングでも、総じて運動をすることには大きな意味がある。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)